地球環境史からの問い

ヒトと自然の共生とは何か

ヒトと自然=地球の生態との歴史的な関わりを学際的に明らかにし,「ヒトと自然の共生」とは何かを問う.

地球環境史からの問い
著者 池谷 和信 編著
ジャンル 書籍 > 単行本 > 歴史
刊行日 2009/10/28
ISBN 9784000238564
Cコード 0020
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 374頁
在庫 品切れ
いま環境問題が人類への急務の課題となっている.その一方で一面的なエコポリティクス(自然保護政策)のため,古くから自然と共生してきた人々が排除され,各地で論争や紛争まで引き起こしている.地球環境史はヒトと自然=地球の生態との歴史的な関わりを学際的に明らかにし,「ヒトと自然の共生」とは何かを問いなおす.

■編著者からのメッセージ

 読者は,本書を一読することで,さまざまな空間スケール・時間スケールで地球と人類とのかかわりを把握することがいかに重要であり,いかにヒトは自然とのあいだに密接な関係を保ち現在の自然景観をつくりあげてきたのかを理解するであろう.そして現在,地球上に進んでいる自然と人間とを二分する思想が,将来の自然のあり方を考えるうえでいかに問題をかかえていることがわかるであろう.さらには,さまざまな自然をめぐって自然と人の新たな共生の道を考えるヒントを見出すことができるにちがいない.

――本文より

■編集部からのメッセージ

 いま地球温暖化をはじめとして環境問題が人類への急務の課題と突きつけられている.だがその一方で,ヒトがその一部の存在として自然=地球の生態に関ってきたにもかかわらず,ヒトと自然との「共生」から,一面的な「ヒト排除」の自然「保護」政策へとエコ・ポリティクスが変化しつつあり,各地で論争や紛争まで引き起こしている.
 地球環境史はヒトと自然=地球の生態との歴史的な関わりを明らかにしてゆこうとする研究である.欧米などでは環境史学会が成立し,学際的な研究が進められている.しかし,わが国の環境史研究は各分野でばらばらに行われ,共通のテーマのもとで議論することは少なかった.
 本書では,人類学,地理学,考古学,歴史学,社会学,地域研究,環境学などの精鋭によって,地球環境史の視点を明らかにし,「ヒトと自然の共生とは何か」という大きな問いを投げかける.



■お詫びと訂正

◆お詫びと訂正
本書第一刷の一部に、182頁の図2「凡例」およびキャプションに訂正を要するものがあります。該当する本をお買い求めになった読者の皆様には深くお詫び申し上げるとともに、下記のようにご訂正くださるようお願い申し上げます。(岩波書店編集部)
序 地球環境史研究の現状と課題 池谷和信

第1章 地球環境史は何を明らかにしようとしているか
1 気候変動と現代文明――年縞と文明史 安田喜憲
2 世界の狩猟活動をめぐる人類史 池谷和信
3 ヒトの生業は生と死にどう関わってきたか
  ――森林焼畑民のライフコースと人口史 佐藤廉也
4 一九世紀のコレラ・パンデミックと南アジア世界
  ――環境史としての疫病史 脇村孝平
5 絵図からみた日本の植生史 小椋純一

第2章 文明はいかに生まれたか
1 砂漠が育んだ文明――アフロ・ユーラシアの乾燥地 嶋田義仁
2 海の文明――オーストロネシアン 秋道智彌
3 タカラガイと文明――東ユーラシア 上田 信

第3章 ヒトは自然をいかに育ててきたか――森林や草原に刻まれた歴史
1 環境史からみた日本の森林
  ――森林言説を検証する 小林 茂・宗 健郎
2 東南アジア大陸部における山地民の移住史と環境利用 増野高司
3 ヒマラヤにおける放牧地利用の生態史
  ――草地・森林への牧畜の影響 渡辺和之
4 ギニア南部森林地域における村落林の生態史
  ――ドーナツ状森林の機能と成因 山越 言

第4章 自然はヒトをどう変えてきたか――動物や植物からみた歴史
1 熱帯雨林と文化――沈香はどこから来てどこへ行くのか 金沢謙太郎
2 ゴースト・ネイチャー
  ――北米における毛皮フロンティアの展開とエコクライシス 下山 晃
3 ナマコをめぐるエコ・ポリティクス
  ――ナマコ戦争とワシントン条約 赤嶺 淳
4 アラビア半島のビャクシン林の利用と保全 縄田浩志

第5章 ヒトと自然との共生とは何か――保全思想の歴史と未来
1 森林と農地の境界をめぐる自然資源とコモンズ
  ――現代の環境政策と地域住民 田中耕司
2 イギリス帝国における保全思想 水野祥子
3 環境思想の形成史 海上知明
4 地球環境問題と環境史の将来 石 弘之

 巻末資料 地球環境史を知るための文献案内 池谷和信
池谷和信(いけや かずのぶ)
1958年静岡県生まれ.国立民族学博物館民族社会研究部・総合研究大学院大学文化科学研究科教授.博士(理学).環境人類学・文化地理学専攻.東北大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学.北海道大学助手などをへて,2007年から現職.著書に『山菜採りの社会誌』(東北大学出版会),『現代の牧畜民』(古今書院),編著に『ヒトと動物の関係学 第4巻 野生と環境』(岩波書店),『地球環境問題の人類学』(世界思想社)など多数.
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