民族の創出

まつろわぬ人々,隠された多様性

出雲,エミシ,クマソからみた日本のネイションビルディング,同質社会幻想からの脱却と多元国家観の構築を目指して

民族の創出
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著者 岡本 雅享
ジャンル 書籍 > 単行本 > 歴史
刊行日 2014/07/25
ISBN 9784000248723
Cコード 0021
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 422頁
定価 本体4,200円+税
在庫 在庫あり
近代以降の日本で,民族がいかに創り出されたか.混合民族論が主流だった日本で,戦後単一民族論が拡がったのはなぜか.大和中心のNation Building(民族意識や国民の形成)を出雲,エミシ,クマソなどの視点から捉え直し,同質社会論で覆い隠された日本人内部の多様性を解き明かしながら,多元国家観に基づく民族意識の再構築を説く.

■著者からのメッセージ

筆者は前作『日本の民族差別』執筆中,閣僚や政治家らの単一民族発言を調べていて,それを行う側も批判する側も,ほとんどが単一だという民族が何民族なのか語っていないという奇妙な現象に気づいた.大学で学生たちに民族的出自を尋ねても,多くは,自分がどの民族に属するかなど,考えたことも意識したこともなかったという.自分が何民族か言えない人々が,なぜ日本は単一民族だといえるのか.日本人の多くは,実は実態のない同質社会幻想に浸っているのではないか.日本では1990年代以降,多文化共生社会という言葉が広がったが,その対象は往々にして「外国人」であり,日本国籍者自体が多様な民族(nation or ethnic group)の集合体であることを認識できないでいる.だが,この列島はもともと,本州,九州,四国に限定しても,実に多様な社会だったのである.これが本書の主旨である.(中略)
 高度経済成長が「歴史」の域に入った現代日本において,20世紀型の中央集権国家体制が,社会構造としても,人々をつなぐ精神的紐帯としても,ミスマッチなものであることに,多くの人々が気づいている.日本社会の同質化がピークに達した1980年代後半以降,地域語の復権運動が興り,エミシやクマソ(ハヤト)その他様々な人の間でも,固有の歴史や文化の掘り起こしが行われてきたのは,人々が同質化の中で失ったものの大切さに気づき始めたからに他なるまい.本書が,多様な郷土の歴史・社会に根ざした,多元社会観に基づくネイション再構築の一助となれば,幸いである.
――本書「はじめに」より

はじめに
第一章 出雲からみた民族の創出
第二章 言語不通の列島から単一言語発言への軌跡
第三章 二人の現津神――出雲からみた天皇制
第四章 創られた建国神話と民族意識――記紀と出雲神話の矛盾
第五章 島国観再考――内なる多文化社会論構築のために
第六章 アテルイ復権の軌跡とエミシ意識の覚醒
第七章 クマソ復権運動と南九州人のアイデンティティ
第八章 新たな民族の誕生――池間民族に関する考察
終章 同質社会幻想からの脱却と多元社会観の構築
あとがき


岡本雅享(おかもと まさたか)
1967年,出雲市生まれ.島根県出雲高等学校,明治学院大学国際学部卒業.北京師範学院,中央民族学院留学.横浜市立大学大学院国際文化研究科修士課程,一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了.国際学修士.社会学博士.現在,福岡県立大学人間社会学部准教授.2008年度,サンフランシスコ州立大学(San Francisco State University)民族学部(College of Ethnic Studies)に客員研究者(Visiting Scholar)として在籍.著書に『中国の少数民族教育と言語政策』(社会評論社,2008年増補改訂版),『日本の民族差別』(編著監修,明石書店,2005年),『マイノリティの権利とは――日本における多文化共生社会の実現にむけて』(共著,解放出版社,2004年)など.

書評情報

週刊読書人 2014年10月17日号
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