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増補版 敗北を抱きしめて (上)

第二次大戦後の日本人(全2冊)

敗戦後日本人を描いて感動を巻き起こした名著の写真増補版.2.5倍以上に増補された写真は,読者をさらに深い感動へと誘うだろう.

増補版 敗北を抱きしめて (上)
著者 ジョン・ダワー , 三浦 陽一 , 高杉 忠明
ジャンル 書籍 > 単行本 > 歴史
刊行日 2004/01/30
ISBN 9784000244206
Cコード 0021
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 412頁
在庫 在庫あり
敗戦後日本人の苦難の歩みを描いて,日本中に感動を巻き起こした名著の写真増補版.旧版の2.5倍以上に増補された貴重な写真は,著者みずからによって本文といっそう緊密に組み合わされ,敗北を抱きしめて立ち上がった民衆の類まれな経験を語り尽くす.ヴィジュアル史料と文字史料が織り成す陰影深い戦後史像の誕生.

増補版への序文

この本の原本は1999年に出版され,それから2年後に日本語訳が出版された.
それ以降,世界は新しい暴力のサイクルに入った.2001年の「9.11」事件は,国家ではない主体によるテロリズムの新たな段階を開き,アメリカは「先制攻撃戦争」を宣言して,異論高まるなか,イラク侵略を開始した.この『増補版 敗北を抱きしめて』が世に出ようとしている今,イラクでは無秩序が支配し,世界には恐怖が広がっている.21世紀もまた,終わったばかりの前世紀に劣らぬ,憎悪と破壊の世紀になろうとしている.
アメリカが,きちんとした計画もなく,戦闘が終わったあと何が起こるかも考えず,イラク戦争を開始したことは,今や明らかである.戦闘開始の前,アメリカの高官たちは,第二次世界大戦後の日本やドイツでの軍事占領の「成功」を引用した.今でも彼らはそれを口にしているが,これは自分たちの願望を表明しているにすぎない.軍事力に頼ろうとするアメリカの「現実主義者」たちにとって,歴史とは,酔った男がしがみつく街灯の柱のようなものである.彼らにとって,歴史は闇を照らす明かりではなく,自分を支えてくれる支柱にすぎない.しかし,今日のイラクは1945年の日本ではないし,ブッシュ大統領のアメリカは,第二次世界大戦に勝利した当時のアメリカではない.
とはいえ,今日のイラクの状況は,戦後の日本を理解するうえで新しい光を投げかけてもいる.イラク占領は,日本占領と根本的に違っている.だからこそ,敗戦後の日本について,われわれはひとつの切実な問いを抱くのである.あれだけの悲惨と混乱の最中にありながら,なぜ,日本は無秩序と無縁であったのか? あれだけの激しい戦闘のあとに,なぜ,占領者に対する暴力がまったく発生しなかったのか? どのような事情によって,日本人はあの苦難を乗り越え,多様な創造性を発揮して「やり直す」ことができたのか? 戦後日本では,いったいどんな心理的,制度的,法的な変革,それも重要かつ永続的な変革が起こったのか? 戦後初期の「アメリカ」は,今やイラク占領に苦しみながら,グローバルな「自由市場」の帝国を築こうとしている今のアメリカと,どこがどう違っているのか?
われわれの歴史への問いは,われわれが置かれた状況の変化に応じて変化する.私自身,『敗北を抱きしめて』の内容を,新たな目で見直そうとしている.しかし同時に,戦後の日本人の体験は,今だからこそいっそう私を引きつけ,勇気づけてくれる.日本占領は,非の打ち所のない成功であったわけではない.日本占領は,多くの問題を残した.しかし,あの時代は,今のわれわれが大部分失ってしまった,素晴らしいものに満ちていたようにも思われる.よりよい世界を作りたいという心底からの願い,「民主主義」は実現できるのだという本気の理想主義,かつての敵同士が急速に善意と信頼をとりもどしていった姿.そして私がもっとも感銘を受けるのは,あれほど多くの日本人が,社会のあらゆるレベルで粘り強さと明るさを発揮したことであった.たんに以前よりも自由な社会を作ろうとしただけではなく,日本人は暴力の愚かさをよく理解し,軍事に頼らない平和という理想を,大切に胸に抱いたのであった.これらすべてが,もはや過ぎさった歴史なのであろうか?
この日本語訳の増補版は,英語版の倍以上の数の写真を収載した.占領下の複雑で活発な世相をより生き生きと伝えることができれば幸いである.以前から,私にとって視覚的な資料は,言葉では伝えることができない物語を語ってくれる「テキスト」であった.しかし旧版では載せることができなかった写真が多数あり,残念な思いが残っていたのである.今回,写真の多くはテーマごとにまとめ,各章に見開きのかたちで収録した.旧版の写真の中,他の写真と差し替えたものが数枚ある.記述上および編集上の小さな不備を改めたほかは,本文自体に変更は加えていない.
2003年11月19日

  増補版への序文
  日本の読者へ
  凡例
  謝辞
  地図・日本帝国の拡大と崩壊
  上巻 写真・図版出典一覧
  序

第1部 勝者と敗者
 第1章 破壊された人生
 第2章 天降る贈り物

第2部 絶望を超えて
 第3章 虚脱――疲労と絶望
 第4章 敗北の文化
 第5章 言葉の架け橋

第3部 さまざまな革命
 第6章 新植民地主義的革命
 第7章 革命を抱きしめる
 第8章 革命を実現する

  上巻注
ジョン・ダワー(John W. Dower)は1938年生まれ.アマースト大学卒業後,ハーヴァード大学で博士号取得.現在マサチューセッツ工科大学教授.著書に,Empire and Aftermath : Yoshida Shigeru and the Japanese Experience, 1878-1954, 1979〔吉田茂とその時代〕; War Without Mercy Race and Power in the Pacific War, 1986〔容赦なき戦争――太平洋戦争における人種差別〕; Japan in War and Peace : Selected Essays, 1993 ほか多数ある.

書評情報

日本経済新聞(朝刊) 2015年9月19日
朝日新聞(朝刊) 2015年8月31日
AERA 2015年2月16日号
日本経済新聞(朝刊) 2013年12月29日
朝日新聞(be) 2013年11月2日
日本経済新聞(朝刊) 2013年8月18日
朝日新聞(夕刊) 2013年8月5日
朝日新聞(朝刊) 2012年10月27日
日本経済新聞(朝刊) 2012年3月11日
朝日新聞(朝刊) 2011年4月29日
東京新聞(朝刊) 2010年9月5日
朝日新聞(朝刊) 2010年7月25日
朝日新聞(朝刊) 2010年5月31日
朝日新聞(朝刊) 2010年4月4日〔ゼロ年代の50冊〕
ADDICTAM 2004年4月号
日経マスターズ 2004年4月号

受賞情報

第1回大佛次郎論壇賞・特別賞(2001年)

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