ウーゴ・チャベス

ベネズエラ革命の内幕

志半ばで死去したカリスマ政治家,その権力者としての生き方を立体的かつ生々しく記録する.待望の邦訳.

ウーゴ・チャベス
著者 ローリー・キャロル , 伊高 浩昭
ジャンル 書籍 > 単行本 > 伝記
刊行日 2014/04/24
ISBN 9784000222280
Cコード 0023
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 318頁
在庫 品切れ
カストロに代わる国際社会のカリスマ政治家は,四選を果たした直後,志半ばで世を去った.その政権下一四年弱のベネズエラ情勢の流れを追いながら,権力者としての生き方を,立体的かつ生々しく記録する.欧米では刊行後すぐに評判となり,「英語で書かれた最良のチャべス本」と評価されたルポルタージュの傑作,待望の邦訳.

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 「当時そのことに気づいていなかったが,本書は私が2006年9月,ベネズエラに到着したときに始まっていた.私はガーディアン紙の通信員であり,カラカス市内にアパルタミエント(アパート)を確保していた.それは,10年間に亘ってアフリカ,イラク,地中海で取材した後の,新しい住み処だった.カラカスはラテンアメリカ取材の基地だったが,最も素晴らしい題材はまさに足下にあった.(中略)
 この国では,誰もが好き勝手な話をしながら,何らかの形でウーゴ=ラファエル・チャベス=フリーアス大統領の影で生きていた.大統領はどこにいても,自分の声,顔,名前に人々の関心を集中させ,巨人のように社会にまたがっていた. 彼を軽蔑しようが崇拝しようが問題ではない.彼はそこにいたのだ.ベネズエラ取材は,大統領官邸ミラフローレス政庁を演劇の舞台に変えてしまったこの巨人に対峙しつつ,その巨人を野次ったり喝采を浴びせたりする騒がしい大観衆のなかで彷徨うようなものだった.(中略)
 チャベスは国外では,党派的忠誠心に依存した専横者,もしくは救世主かという神秘性存在となっていた.戯画的なイメージである.実際はもっと複雑,かつ不思議で,魅惑的だった.そこから,この本を書こうという発想が生まれた」
(本書「謝意」より)
謝意
プロローグ

第一部 王座

第一章 「ハロー大統領!」
ボリバール広場/歴史の接収/衰退した都/幻の黄金郷/黒い黄金/カラカス赴任/テレビショー政治/楽園のそよ風/孫も登場

第二章 ミラフローレス政庁の内側
司令官の日常/陳情の洪水/大統領執務室/「剃刀の刃」/チャベス政権発足/天変地異/放置された被災者/OPECで手腕発揮/再婚と離婚/司令官の女性関係

第三章 離反者
農場主の期待/農業労働者の敵/盆地と丘陵/対立煽動戦略/二人のグアイカイープロ/狂い始めた財政/孤立した忠臣/「原油と国庫の均衡」/三人の主人公/包囲された政庁/虐殺の罠/フィデルからの電話/移植された臓器/茶番演じた原罪/米国は知っていた

第四章 若い中尉
ロサ母さん/士官候補生/再会と決裂/対決志向/げっぷの効果/情報収集室/先見の明/貧困層支援計画/タスコーン名簿

第二部 王宮

第五章 最適任者の生存
対立候補を粉砕/アルテルムンディズモ/RCTV閉鎖/厳しい質問/曖昧な回答/閣僚乱造/運転手マドゥーロ/修道士ジョルダーニ/蛸ディオスダード/生存競争/したたかな禁欲主義者/監視制度/大繁盛の占い師/三つの技術/思いつき政治

第六章 戦の技術
穏健支持派の離反/四士官の陰謀/永遠のスローガン/写真の罠/獄中の述懐/軍部懐柔策/野党締め付け/再選制限を撤廃

第七章 悪魔の排泄物
石油会社の王子/政治的社会主義/「資源の呪い」/ブラックホール/虚栄の服飾/囮捜査/麻薬事件/告発者の失脚

第八章 物語作家
電力非常事態/@チャベスカンダンガ/電波締め付け/話法の魔術/読書代理人/歴史書き換え/テレスール/ベネズエラの恋人

第三部 王国

第九章 衰退
地方の状況/最前尽くす常民/グアヤナの衰退/ゴミの中の住民/電力不足の犠牲/労働者の苦悩/膨大な食糧輸入/福島の教訓/綻びた医療計画/修道士の師

第十章 大いなる啓発の旅
スラムのギャング/聖なる殺し屋/組長の夢/倫理と啓蒙/刑法制度の失敗/熱意ない大統領/尊厳ある計画/アレパの口枷/正義の零落/深い暗黒郷/刑務所生活/精神的腐敗/知的擁護者の叱責

第十一章 抗議
高貴な警備員/尊敬される評議員/コミューン評議会/万能の幹/直接民主主義/精霊の贈り物/市当局との対立/見せかけの進歩/分断統治/魔術的発想/敬遠されたモデル/第三の勢力

第十二章 夢想家
深淵の涙/雑種の専制君主/朽ちる肉体/英雄主義/中国の警戒/大盤振る舞い/ポチョムキン村/豪雨の中で/最大最後の幻想/後継者指名/司令官の死/縁の砦に廟/薄氷踏む勝利/空っぽの革命

訳者あとがき

年表(ベネズエラ略史)

人名索引
Rory Carroll(ローリー・キャロル)
 1972年アイルランド首都ダブリン生まれ.ダブリン市立大学卒業.95~97年英北アイルランド首都ベルファストのアイリッシュニュース社で記者活動.97年同地で「若年ジャーナリスト賞」受賞.同年ロンドンのガーディアン紙入社.99年イエメンおよび旧ユーゴスラヴィア特派員.99~2002年ローマ通信員.02~05年ヨハネスブルク通信員.05年バグダッド通信員.フセイン政権の犠牲者とインタビューしたため拉致され翌日解放さる.06年4月カラカス通信員.12年ロサンジェルス通信員.米国西海岸一帯を取材して現在に至る.13年本書出版.ジョージ・オーウェル賞候補.
伊高 浩昭(いだか・ひろあき)
 1943年東京生まれ.ジャーナリスト.元共同通信記者.67年からラテンアメリカ(ラ米)全域およびイベリア半島,沖縄,南部アフリカなどを取材.2005~14年3月立教大学ラ米研究所「現代ラ米情勢」担当講師.月刊LATINA誌に06年から「ラ米乱反射」を連載中.著書に『ラ米取材帖』(10年LATINA),『ボスニアからスペインへ――戦の傷跡をたどる』(04年論創社),『キューバ変貌』(99年三省堂)など.訳書に『フィデル・カストロ――みずから語る革命家人生』(11年岩波書店),『チャベス――ラテンアメリカは世界を変える!』(06年作品社),『ベネズエラ革命―-ウーゴ・チャベス大統領の戦い』(04年VIENT)など.
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