聞き書 宮澤喜一回顧録

保守本流の政治家として,戦後政治の転換点に幾度も立ち会ってきた元総理の貴重な証言記録.

聞き書 宮澤喜一回顧録
著者 御厨 貴 , 中村 隆英
ジャンル 書籍 > 単行本 > 政治
刊行日 2005/03/04
ISBN 9784000022095
Cコード 0031
体裁 四六 ・ 上製 ・ 372頁
在庫 品切れ
保守本流の政治家として,戦後政治の転換点に幾度も立ち会ってきた元総理の貴重な証言.参謀役として活躍した池田内閣の舞台裏,総理大臣時代,小渕内閣の大蔵大臣として経済問題と格闘した時期のことなどをふり返りつつ,将来の日本がめざすべき理念を語る.

■編者からのメッセージ

宮澤喜一さんのオーラル・ヒストリーをようやく世に送り出すことができて,今はホッと安堵の気持ちだ.首相級のオーラル・ヒストリーとして,宮澤さんには色々な意味で難攻不落の思いがあったからだ.進んで自らの足跡を語る方ではないと,なんとなく思っていたし,事前の下調べが大変そう,というイメージもあった.
(中略)
本書を御覧いただければわかる通り宮澤さんの証言は,生いたちから池田内閣までに集中しており,それ以後は,通産大臣(佐藤内閣),大蔵大臣(中曾根・竹下内閣),総理大臣の時期について,政策マターに絞って話をされた.これは宮澤さんの主体的選択によるものに他ならない.現段階で宮澤さんが自らの文脈の中で語れるもののすべてということなのだ.
 数々の対談,講演,インタヴューをこなしてこられた論客・宮澤さんのイメージとは,少し異なる姿を浮かび上がらせることができたか否か.その点の評価は「読み手」にゆだねることとなろう.ただし「聞き手」と「話し手」とのインタラクションの中から,戦前の青少年期のエピソード,戦中戦後の大蔵省でのなりわい,自民党結成と宏池会の活動,そして吉田茂,池田勇人,緒方竹虎,重光葵,前尾繁三郎ら各氏の人物月旦などに,思わず知らず宮澤さんのモノの見方が浮き彫りにされていることは間違いない.その意味で“人間”宮澤喜一のホンネの部分に,いささかなりとも迫ることができたなら,私としては本望である.さらにオーラル・ヒストリーをクリティークする立場から付言するならば,宮澤さんの証言には,歴史の現場に立ち会ったものだけにしかわからないコクのあるもの言いがあるのだ.

(御厨 貴「インタビューを終えて」より)
はしがき ……………………………………… 中村隆英


第1章 生いたち
小学生のころ/武蔵高等学校へ入学/登山,能に親しむ/日米学生会議に出席/東京帝国大学のころ/大蔵省に入る


第2章 戦前・戦中の体験――日米学生会議,税務署長時代のことなど
学生時代に渡米・当時の日米関係/開戦直前の思い出/戦時中,大蔵省事務官として占領地を視察/沼津税務署での経験/芝税務署時代/本省へ戻る


第3章 敗戦直後の大蔵省
敗戦直後/渋沢敬三大蔵大臣のこと/新円発行と戦時補償の打ち切り/主税局へ,終戦連絡部を兼務/栗栖赳夫・北村徳太郎氏らの印象/泉山三六氏について/大蔵大臣秘書官に就任/ドッジ来日


第4章 GHQとの交渉――ドッジ・ラインとシャウプ税制
ドッジ・ライン/シャウプ来日/池田蔵相渡米の目的/蔵相の随行者


第5章 講和会議に随行する
「占領」の捉え方と安保条約の是非/マッカーサーと講和について/朝鮮戦争の勃発とダレス/マッカーサーの解任,条約締結へ/講和後,50年の回顧/講和会議と関係者たち


第6章 宏池会の誕生と安保騒動
再軍備に関する国内での協議/池田・ロバートソン会談/吉田から鳩山へ/石橋・池田・岸の関係/宏池会について/安保騒動,岸から池田へ/伊藤昌哉氏のこと/吉田・池田・佐藤の関係/前尾繁三郎氏について


第7章 池田内閣時代
池田首相の訪米・ケネディとの会談/参議院議院運営委員長として/池田三選・引退へ/第2次池田内閣で経企庁長官となる/全国総合開発計画について/GATTについて


第8章 日米繊維交渉
通産大臣に就任/通産大臣就任以前の日米繊維交渉/渡米,スタンズと会談/日本側の自主規制/政府間協定へ/関与した人々/喬冠華のこと/グロムイコについて


第9章 プラザ合意,そしてバブル崩壊へ
プラザ合意/宮澤・ベーカー第1次会談/ブラックマンデー/総理大臣のころ・バブル崩壊に対応/住専問題の処理・銀行への公的資金投入について/暴漢に襲われる


第10章 総理大臣時代
PKOについて/PKOの犠牲者/宮澤内閣と金丸・後藤田氏/天皇訪中/ブッシュ(父)大統領について/クリントン大統領について/エリツィン大統領について


終章 21世紀の日本を考えるために
小泉政治をどう見るか/憲法九条への思い/カンボジアとイラク/戦後日本のターニングポイントは/戦後デモクラシーをどう考えるか/政治家の資質/日本外交の課題/21世紀の日本がめざすもの


 インタヴューを終えて ……………………………… 御厨 貴
 宮澤喜一関係年譜
御厨 貴(みくりや たかし)
1951年,東京に生まれる.東京大学法学部卒業.ハーバード大学客員研究員,東京都立大学教授,政策研究大学院大学教授を経て,現在,東京大学先端科学技術研究センター教授.
著書に,『政策の総合と権力』(東京大学出版会),『馬場恒吾の面目』『日本の近代3 明治国家の完成』(中央公論新社),『オーラル・ヒストリー』(中公新書),『「保守」の終わり』(毎日新聞社)など.

中村隆英(なかむら たかふさ)
1925年,東京に生まれる.東京大学経済学部卒業.東京大学教授,お茶の水女子大学教授,東洋英和女学院大学教授を歴任.東京大学名誉教授.
著書に,『現代の日本経済』『日本経済――その成長と構造』(東京大学出版会),『戦前期日本経済成長の分析』『昭和経済史』(岩波書店),『昭和恐慌と経済政策』(講談社学術文庫),『昭和史I,II』(東洋経済新報社)など.

書評情報

週刊エコノミスト 2012年9月11日号
週刊エコノミスト 2005年4月19日号
日本経済新聞(朝刊) 2005年4月10日
週刊エコノミスト 2005年4月5日号
毎日新聞(朝刊) 2005年4月3日
毎日新聞(朝刊) 2005年4月2日
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