アメリカン・ジハード

連鎖するテロのルーツ

ベトナム戦争から9.11へ.アメリカが放った対ソ・ジハードの先兵が,反米の極北へとねじれていった.

アメリカン・ジハード
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著者 マフムード・マムダーニ , 越智 道雄
ジャンル 書籍 > 単行本 > 政治
刊行日 2005/07/06
ISBN 9784000220309
Cコード 0031
体裁 四六 ・ 上製 ・ 376頁
定価 本体3,400円+税
在庫 在庫あり
アメリカが放った対ソ・ジハードの先兵が,反米の極北へとねじれていった.ベトナム戦争から9.11を経てイラク戦争へ.インド系アフリカ人のムスリムである著者は,アメリカの「闇の奥」から,反米テロのルーツをたどる.抹殺すべき敵を作る冷戦ゲームは終わっていない.植民地主義の暴力がはらまれた近代の病理も.

■訳者からのメッセージ

冷戦とは米ソの激突を回避,第三世界を代理戦場とする代理戦争の時代だった.という ことは,第三世界にとっては冷戦とは熱戦の時代だった.
代理戦争の多くは,敵正規軍より,弱い民間人を標的にするテロだった.
例えば,アフガニスタンに侵攻したソ連をいびり出すために,アメリカは世界のムスリムにジハードを呼びかけた.世界中から集まってきた彼らにCIAがテロの手口を伝授,ムジャヒディーンに鍛え上げた.従ってアフガン・ジハードは事実上アメリカン・ジハードだった.
ソ連の崩壊で冷戦が終わり,冷戦以後の新世界秩序の柱としてアメリカが中東統治を策 すと(パレスチナ問題,イラン=イラク戦争,湾岸戦争,アフガニスタン戦争,イラク侵攻),ムジャヒディーンらは育ての親アメリカに反旗を翻した.その典型がウサマ・ビン・ラディンである.
従って,テロとは冷戦時代はアメリカ始発,冷戦以後そのテロが大きく輪を描いて元凶のアメリカへ跳ね返ってきたブーメラン現象だった.その最大のものが「9/11」である.
しかし,米英はこのテロの因果関係が宗教としてのイスラームに内在することにすり替えた.ハンティントンの『文明の衝突』論はすり替えの急先鋒だった.日本の世論もほぼこのすり替えに洗脳されている.
本書は,この閉塞的な世界観の呪縛から私たちを解放してくれる座標軸を提示する.チョムスキーらによるアメリカ告発に,冷戦時代に熱戦の戦場にされてきたアフリカ,アジア,中南米側の視点を補強,その辛酸を冷徹に武器に変え,米英側の新世界秩序を相対化しようとする.
相対化の武器は,カルチャー・トーク批判である.アメリカン・ジハードで明らかなように,アメリカはイスラームを政治的に利用したにすぎない.ムジャヒディーンらはCIAから対ソ戦の代理兵士としてテロを教えこまれた.ところが,アメリカはイスラームを本質的に邪悪な文化へとすり替えた(「悪の枢軸」).「文明を衝突させた」のは,イスラームではなくアメリカなのだ.これがカルチャー・トークである.マムダーニはこれを批判することで反撃の契機を掴んだ.
インド系ムスリムのマムダーニがアフリカとアメリカにまたがって共存することで,世界に対して辿るべき新航路を提示できているように,大半のムスリムは中道派で濃厚な共存の文化を保持している.本書は,「9/11」以後の米英側の新世界秩序による洗脳からの壮大なデプログラミングだと言える.
越智道雄
謝辞

序文 モダニティと暴力
近代国家と政治的暴力 / 先住民側の暴力 / 「9/11」 / いいムスリムと悪いムスリム
第一章 カルチャー・トーク,もしくはイスラームと政治を語らない方法
カルチャー・トーク二説 / モダニティと文化の政治化 / モダニティ,原理主義,そして政治的イスラーム / キリスト教原理主義と政治的キリスト教 /イスラーム改革と政治的イスラーム
第二章 インドシナ以後の冷戦
対照的な二つのパラダイム――ラオスとヴェトナム / 代理戦争の資金調達 /代理戦争と「クラーク修正条項」 / コンゴでの傭兵起用を快諾 / アンゴラ瓦解 / 「クラーク修正条項」 / 代理戦争と「サファリ・クラブ」 / 南部アフリカ / レナモ――アフリカ最初の真正テロリスト運動 / 「建設的関与」 /合衆国と「低強度戦争」 / 中米――公然とテロを採用 / コカイン,コントラ,CIA / イラン=コントラ・スキャンダル
第三章 アフガニスタン――冷戦のハイライト
麻薬取引でジハード資金調達 / ジハードの軍資金提供者たち / パキスタン側のコスト / その結果,ターリバーン / ムスリム世界へのコスト / アルジェリア / エジプト / 冷戦とイスラーム急進派 / ヒズボラ / イラン
第四章 代理戦争から公然たる侵攻へ
イラク――戦時と平和時を通してのお仕置き / 法の支配はまっぴらご免 / イスラエルの国力と地域的免罪 / 入植者と自爆テロ
結論 お咎めなしと味噌も十把一絡げの処罰
冷戦後期におけるテロの民営化 / 合衆国へのコスト / 脱出口 / アメリカとイスラエル――事の核心 / 歴史的責任


解説  小杉泰
訳者あとがき

書評情報

SAPIO 2005年8月24日,9月7日号
徳島新聞(朝刊) 2005年7月14日

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