成功する政府 失敗する政府

経済学と政治学の学際的な研究蓄積と豊富な具体例によって,政策の成功と失敗を分ける要因を明示する.

成功する政府 失敗する政府
著者 A.グレーザー , L.S.ローゼンバーグ , 井堀 利宏 , 土居 丈朗 , 寺井 公子
ジャンル 書籍 > 単行本 > 政治
刊行日 2004/06/23
ISBN 9784000236454
Cコード 0031
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 318頁
在庫 品切れ
人間を月に送ることは出来ても,貧困を根絶することがなぜ出来ないのか―たとえ政府が国民全体の厚生を最大化するように行動する良識の府であっても,その政策が常に成功するわけではない.政策の成功と失敗を分ける要因は何か.豊富な具体例を示しながら,経済学と政治学の学際的な研究蓄積によって明らかにする.

■訳者からのメッセージ

経済学と政治学とは関心領域が重なっているにもかかわらず,アカデミックなレベルではそれほど活発な相互交流が行われているわけではない.どの学術分野でもそうであるが,アカデミックな貢献を求める場合には,理論的なモデルや統計的な手法の厳密性,独創性を優先することになるので,それぞれ固有の分野における分析手法が優先される傾向にある.したがって,学際的な研究をするほど,アカデミックな意味では評価されにくい.まして,一般読者を対象とする啓蒙的な書物を書く場合には,そうした傾向が強い.本書は,啓蒙書でありながら,アカデミックな世界でも高く評価されている稀有な書物である.政治学の分野にも経済学の分野にも相互に専門的な造詣の深い2人の著者によってはじめて,本書のような新しい視点からの斬新な公共政策の著作が可能になったと言えるだろう.

(「訳者あとがき」より
日本語版への序文/謝辞


序論 公共政策――限界と可能性
どのように経済学は政治学と関係しているか
分析の構造
概念的な道具――経済的制約
問題を解決するもの


第1章 マクロ経済学――政府は経済を制御できるか
経済運営――党派的インセンティブと政治的循環
金融政策と合理的期待
財政政策――クラウディング・アウトするだけなのか
勧告――説得力と均衡選択の技法
政府支出,課税,そして期待――政策手段としての財政赤字
政府は経済を制御できるか


第2章 再分配――成功物語か?
経済的制約と再分配
不確実性と再分配――データ
将来の再分配に対する政府のコミットメント
再分配に関する含意
再分配政策の有効性
なぜ課税では不十分なのか
結論――再分配の可能性


第3章 政府はいつ規制できるか
規制の範囲
企業規制――可能性と落とし穴
消費者行動の規制
規制の成功のための条件


第4章 財・サービスの生産――正しい構成とは
生産とは何か
民間供給のクラウディング・アウト
生産誘導に対する障害としての信頼性
生産制限に対する障害としての信頼性
生産の難しさ


第5章 経済的制約と政治制度
分割政府と渋滞政治
連邦制度と権限委譲
政治改革と政策改革
政治家は何を知っているのか
制度設計と政策の有効性


第6章 最終的な考察
政府は何ができるのか――5つの教訓
結論――政府の負担


訳者あとがき
参考文献/索引
アミハイ・グレーザー(Amihai Glazer)
1950年生まれ.74年コーネル大学卒業,78年にエール大学で経済学博士号を取得,現在カリフォルニア大学アーバイン校教授として,政治経済学,公共政策の分野を担当している.1989年にAmerican Economic Review に発表された論文“Politics and the choice of durability.”では,将来に政権を失うかもしれない可能性を考慮すると,政府が非効率な政策を行う誘因を持つことを明らかにした.

ローレンス・S. ローゼンバーグ(Lawrence S. Rothenberg)
1958年生まれ.80年ジョンズ・ホプキンス大学を卒業,86年にスタンフォード大学で政治学博士号を取得,現在はノースウェスタン大学教授として環境問題を専門に政治学,公共政策の分野を担当している.1992年に刊行された処女作 Linking Citizens to Government:Interest Group Politics at Common Cause (Cambridge University Press)では,アメリカの政治ロビー団体を取り上げて,国防政策から選挙資金集めまでの幅広いケーススタディを行って,利益団体が実際の政策決定にどのように関与するのかを理論的,実証的に分析した.
井堀利宏(いほり としひろ)
東京大学経済学部卒業,ジョン・ホプキンズ大学大学院でPh.D.取得.東京都立大学,大阪大学を経て,現在東京大学大学院経済学研究科教授.
主要著書
『財政 第2版』(岩波書店,2001年)
『財政再建は先送りできない』(同,2001年)
『課税の経済理論』(同,2003年)
など多数.

土居丈朗(どい たけろう)
大阪大学経済学部卒業,東京大学経済学博士.現在慶應義塾大学経済学部助教授.
主要著書
『地方財政の政治経済学』(東洋経済新報社,2000年)
『入門公共経済学』(日本評論社,2002年)
『財政学から見た日本経済』(光文社新書,2002年)

寺井公子(てらい きみこ)
徳島大学教育学部卒業,東京大学経済学博士.現在法政大学経営学部助教授.
主要論文
「社会保障制度と消費の世代間分配」(『日本経済研究』No.39,1999年)
「選挙制度改革と地域間所得再分配」(『日本経済研究』No.46,2002年)
“Electoral alliance and implemented redistribution: an interpretation on non-competitive politics of Japan”, Applied Economics Letters 10, 2003.

書評情報

読売新聞(朝刊) 2004年9月19日
日本経済新聞(朝刊) 2004年8月8日
朝日新聞(朝刊) 2004年8月8日
ページトップへ戻る