平和のリアリズム

激動の世界に対して冷徹な分析を行い,リアルな平和構想を打ち出してきた著者による初の時論集.

平和のリアリズム
著者 藤原 帰一
ジャンル 書籍 > 単行本 > 政治
刊行日 2004/08/04
ISBN 9784000247061
Cコード 0031
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 302頁
在庫 品切れ
全面核戦争の脅威の終焉に安堵した世界は,いままた新しい戦争の時代に突入した.各地で火を噴く地域紛争,高揚するナショナリズム,民主化後の政治不安,そして,テロと帝国の暴力….著者は,この十数年,激動の世界に対して冷徹な分析を行い,リアルな平和構想を打ち出してきた.粘り強い思考の成果を初めて一冊に収めた待望の時論集.

■著者からのメッセージ

 この本は,1991年の湾岸戦争と2003年のイラク戦争という2つの戦争に挟まれた十数年間に,私が新聞や総合雑誌に書いた文章を収めている.・・・・・・ここに集めた文章は,目の前に何があるのかもろくに見えないまま,それぞれの状況のなかで行きつ戻りつしながら書いたものばかりだ.首尾一貫した議論などあるはずもない.だが,いつも気になっていたことはある.それをひとくちでいえば,原理原則の適用ではなく,具体的な状況のなかから平和の条件を探ることだった.戦争はいけない,戦争はやむを得ない,戦争は戦うべきだなど,それぞれに話し手の価値判断ばかりが先走った議論が多いなかで,現実の世界における平和がどのように可能となるのかを考えてみたかった.「平和のリアリズム」という題名をつけた理由もそこにある.
(本書「序」より)
序 なぜ,平和のリアリズムか
I 戦争が終わった
長い世紀末
  ――世界戦争・民主主義・国民国家――
  冷戦の残務整理
  ――湾岸戦争と国際政治――
  冷戦の後の平和
  ――国際政治と日本の選択――
  国連の二つの顔
  ――平和維持をめぐる選択――
  戦争は終わった
II 戦争が終わって,戦争が始まる
冷戦後の核問題
  ――インド・パキスタンの核実験をめぐって――
  コソボ・モデルとカンボジア・モデル
  ――平和維持活動の現在――
  東ティモール――平和維持の課題
 
III 民主化の後,幕が下りてから
可能性としての民主主義
  ――インドネシアとアジアの民主化――
  開発体制の転換――日本外交の新しい課題
  ポピュリズムと民主主義
  ――フィリピン・エストラダ大統領の追放――
  民主政治定着期の課題
  ――東南アジアで相次ぐ政変――
IV 戦争の記憶・国民の物語
ナショナリズム――三つの謎
  戦争の記憶・国民の物語
  「国民の物語」の誘惑
  抑止としての記憶
  ――国際政治の倫理化とその逆説――
V 9・11後の世界
「人道的な空爆」は幻想
  ――米・英のアフガン攻撃――
  アメリカの平和
  ――中心と周辺――
  同時多発テロ事件が変えたアメリカ核戦略
  論壇時評 I
  ――9・11から「対テロ戦争」へ――
VI 帝国と戦争
対イラク戦争の阻止を
  パレスチナ和平ロードマップ
  ――「アメリカの中東」への一方的強制――
  帝国の戦争は終わらない
  ――世界政府としてのアメリカとその限界――
  論壇時評 II
  ――イラク戦争と占領――
VII 東アジアの平和構想
日本国憲法――国際公約としての平和主義
  日本外交――対米優先の限界
  東アジアの平和構想
初出一覧
あとがき
藤原 帰一(ふじわら きいち)
1956年東京都生まれ
東京大学大学院博士課程単位取得中退
現在- 東京大学大学院法学政治学研究科教授
専攻- 国際政治・東南アジア政治
著書- 『戦争を記憶する』(講談社現代新書)
『デモクラシーの帝国』(岩波新書)
『「正しい戦争」は本当にあるのか』(ロッキング・オン)
編著- 『20世紀システム』(全6巻,共編著,東京大学出版会)
『テロ後 世界はどう変わったか』(岩波新書)
『「イラク戦争」 検証と展望』(共編著,岩波書店)など

書評情報

朝日新聞(朝刊) 2005年9月29日
読売新聞(朝刊) 2005年8月4日
トップポイント 2004年10月号

受賞情報

2005年度(第26回)石橋湛山賞
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