平和を勝ち取る

アメリカはどのように戦後秩序を築いたか

第2次大戦後の経験から,新政権に「協調的安全保障」と「経済・金融安定化」の方向性を示す.

平和を勝ち取る
著者 ジョン・ジェラルド・ラギー , 小野塚 佳光 , 前田 幸男
ジャンル 書籍 > 単行本 > 政治
刊行日 2009/01/08
ISBN 9784000247092
Cコード 0031
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 406頁
定価 4,180円
在庫 在庫僅少
国際的な経済・金融危機と,イラク戦争に見られるアメリカ単独行動主義の破綻にオバマ新政権はどう対処するのか.第2次大戦後,アメリカが他国とともに構築してきた国連,NATO,IMF.世界銀行に代表される世界秩序の誕生過程を検証し,冷戦後の世界とアメリカの関係についてマルチラテラリズム(多角主義)の立場を示す.

■訳者からのメッセージ

アメリカはジョージ・ブッシュからバラク・オバマの時代に変わります.世界は小さくなっただけでなく,切り離せないくらいに深く統合してしまった,と日本だけでなく,今やアメリカも中国も感じているでしょう.地球上のどこでテロや軍事衝突,銀行の破綻や株価暴落が起きても,その影響は遠く隔たった地域に及びます.
 本書では,ユニラテラリズムからマルチラテラリズムへの変化と,世界に対する「アメリカの関与」を理解する要点が示されています.ラギーは冒頭に,フランクリン・D.ルーズベルトの演説を引いています.その演説は,真珠湾攻撃の数日後に行われましたが,安全保障に関して,もはや距離を当てにできないと強調しています.アメリカがヨーロッパと違って,勢力均衡による外交になじまず,その地理的・歴史的な「例外主義」の姿勢から国際的な役割を拒みましたが,最後は,その「理想主義」を根拠として,ヨーロッパやアジアの戦争に介入したことをラギーは指摘します.
 本書は,世界各地の安全保障や自由貿易の維持に,アメリカが積極的に関与するような第二次世界大戦後の国際制度と,その後の変容を解明し,「権力協調」や「権力の共同体」という安全保障の考え方,「埋め込まれた自由主義」という貿易と通貨・金融に関する考え方を見事に示しています.
 本書を読むことで,読者はきっと,アジアの東端に生きる日本も,安全保障の世界的な再編成や経済の統合化に遅れることなく,新しい世界秩序を築く中で,自らの平和と繁栄を実現しなければならない,という政治的課題を発見するでしょう.平和は,戦争に劣らず,大きな変化を秩序に反映させる努力を大国に求めるのです.
日本語版への序文
 序 文
 まえがき
 凡 例
序 論 世界秩序への三度目の試み
第1章 アメリカのジレンマ
ジレンマ/孤立主義/マルチラテラリズム
第2章 第二次世界大戦後の妥協
  フランクリン・ルーズベルトと1945年/ハリー・トルーマンと二極体制/アメリカによる平和?
第3章 競争的安全保障
  協調から不協和音へ/協調から共同体へ/二つの小協奏曲
第4章 協力的安全保障
  協力的安全保障構築/安全保障共同体/権力協調/協力的均衡
第5章 経済安定化
  ブレトン・ウッズ体制/連続性と変化のパターン
第6章 経済転換
  境界論争/グローバリゼーション/削減
第7章 極,多元性,そして未来
  新孤立主義への二つの道程/極/多極/再編成時代の外交政策
補 章 教条的ユニラテラリズムとその限界
     ――新世紀おけるアメリカとグローバル・ガバナンス
  変化と連続の途上/アメリカの例外主義/アメリカの免除主義/ユニラテラリズム教義の現在/超国家型市民政治/結び
 訳者あとがき
 索引/注
ジョン・ジェラルド・ラギー(John Gerard Ruggie)
1944年オーストリア生まれ.74年アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校で博士号取得.同大学,コロンビア大学を経て2001年よりハーバード大学・ケネディ行政大学院教授.1997-2001年アナン国連事務総長の顧問を務める.専攻は国際政治学,国際関係論.
《訳者》
小野塚佳光(おのづか よしみつ)
1959年生まれ.同志社大学経済学部教授.専攻は国際政治経済学.
前田幸男(まえだ ゆきお)
1974年生まれ.国際基督教大学社会科学研究所助手.専攻は国際関係論.

書評情報

外交フォーラム 2009年6月号
産経新聞 2009年3月2日
日本経済新聞(朝刊) 2009年2月22日
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