日本の針路

ヒントは交隣外交の歴史にあり

「ミスター外交」が,古代日本の東アジアにおける交隣外交にヒントを得て,日本の進むべき道を直言する.

日本の針路
著者 薮中 三十二
ジャンル 書籍 > 単行本 > 政治
刊行日 2015/02/19
ISBN 9784000610155
Cコード 0031
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 248頁
在庫 品切れ
「ミスター外交」こと著者が,2015年,日本にとって節目の年に現状を憂慮し,古代日本の東アジアにおける交隣外交にヒントを得て,これからの日本の進むべき道を直言する.自ら関わった日米経済摩擦,河野談話・村山談話,日韓漁業協定,日中資源交渉,日朝協議などを証言として織り込む.紛糾する歴史問題に一石を投じる警世の書.

■編集部からのメッセージ

「ミスター外交」の外交指南

 戦後70年,日韓正常化50年の2015年を迎えるに当り,日本は中国や韓国などの隣国・隣人から歴史問題で厳しい問いを突き付けられています.東アジアの平和と和解という重い課題をいまこそ果たすべき時です.なのに,国民は韓国に対する嫌悪感が嵩じて蔑視観すら抱いています.中国に対しては脅威感が高まっています.安倍政権は「戦後レジームからの脱却」を叫んでいます.大手メディアでは,河野談話と村山談話を見直せという動きがみられます.
 いま日本が採るべき道は,多国籍軍やPKOの下に自衛隊が紛争地域に出兵して武力で解決する「積極的平和主義」なのでしょうか? 大国中国の海洋進出に対抗して集団的自衛権を行使して抑止力を高めることが,平和と和解にとって有効な手段なのでしょうか? むしろ,海外派兵を慎むことで近隣諸国との平和を維持してきた,戦後の70年に渉る営為と資産を崩すことにつながる事態なのではないでしょうか.
 「ミスター外交」こと薮中三十二氏は,アジア大洋州局局長時代,外務次官時代の六者協議における日本代表の時代を通して,東アジア諸国との関係調整を掌る総責任者の立場にありました.会談の席でインタビューを受けるそのお顔をご記憶の読者も多いことでしょう.その薮中さんは,退官後,大学で教鞭をとる傍ら,京都で若い世代の有志達を招いて寺子屋塾を開き,豊富な外交の経験を踏まえて,これからの日本の針路について,議論を重ね,外交指南を授けてきました.
 本書は倭人が朝鮮半島で活動することが確認される「広開土王碑」の4世紀から現在まで,日本の近隣関係の来し方を振り返り,日本・朝鮮・中国の三国関係を中心に,日本はどのようにして国家のかたちと価値をクリアにし,信頼を醸成してきたのかを分かりやすく説き起こします.また,近代以降,どこで関係を誤り,信頼を損ねてきたのかのレッスンを,外交のプロの経験から引き出していきます.要所要所に著者の外交場裡での交渉過程や教訓が織り込まれています.
 そうか,ミスター外交も,同じことを考えているのか,今の日本政治の現状に同じような憂慮を抱いているのか,という心強い援軍を得るような気持ちにさせてくれる本です.
馬場公彦
薮中三十二(やぶなか みとじ)
1948年大阪府生まれ.大阪大学法学部中退.外務省入省.73年コーネル大学卒業,在韓国日本大使館二等書記官,在インドネシア日本大使館一等書記官,在米日本大使館一等書記官,経済局国際機関第二課長,北米局第二課長(日米構造協議担当),国際戦略問題研究所主任研究員(在英国),ジュネーブ国際機関日本政府代表部公使,大臣官房総務課長,大臣官房審議官,在シカゴ日本国総領事,アジア大洋州局長(六カ国協議日本代表),外務審議官(経済・政治担当),外務事務次官を経て,現在,外務省顧問,野村総研顧問,立命館大学総長特別招聘教授,大阪大学特任教授.著書に『対米経済交渉――摩擦の実像』(サイマル出版会,1991年),『国家の命運』(新潮新書,2010年)がある.

書評情報

公明新聞(朝刊) 2015年7月6日
毎日新聞(朝刊) 2015年5月10日
京都新聞(朝刊) 2015年3月15日
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