国際関係の思想史

グローバル関係研究のために

「国際関係」とは何か.この問いを規定する世界観を剔出し,より良い世界を展望する独自の学際的研究.

国際関係の思想史
著者 芝崎 厚士
ジャンル 書籍 > 単行本 > 政治
刊行日 2015/02/25
ISBN 9784000229395
Cコード 0031
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 332頁
在庫 品切れ
「国際関係を考える」とはどういうことか.その根底にある人間観・世界観はどのようなものか.国際文化論から出発した独自の学際的視点から田中耕太郎,朝永三十郎,K.ウォルツ,J.ナイ,A.ネグリらを読み解き,既存の国際関係研究を刷新し新たな世界を構想する,グローバル関係研究の相貌を描き出す野心的試み.


■著者からのメッセージ
 私の初発の専門は国際文化交流の研究で,特に戦前の日本の国際文化交流を研究対象としていた.その後狭い意味での国際文化交流や国際交流の研究は一旦措き,文化交流を成り立たせている背景にある思想や世界観に注目するようになった.
 しかし,当時刊行されていたいわゆる国際関係思想に関する著作を読んでも,本書が照準しているような国際関係の思想や哲学を考えるような仕事には行き当たらなかった.私が考えたいのはカントやグロティウスといった「偉大な」思想家たちや,モーゲンソーやカーといった「偉大な」国際政治学者が,国家間関係としての国際関係の力学をどう考えていたかという意味での国際関係思想ではなかった.私がこだわろうとしていたし,今もこだわっている点は,あくまで,なぜ国家間関係としての国際関係という世界構成がこの世界に存在しているのか,その世界のできあがり方に依拠して世界を考える妥当性はどこにあるのかということなのである.こうした問いは「国際関係」を考えはじめる瞬間に必ず脳裏に浮かぶ問いであるが,ほとんどの場合そこで立ち止まらずに進んでしまうのである.しかし,そこであえて立ち止まることで見えてくるものにことの本質があるのではないかと考えていたのである.当時の,そして現在の国際関係思想の研究も,依然としてこの問いに直裁に向き合っている仕事は多くないように思われる.
 こうした問題意識を引き受けうる分野である国際文化論という学問そのものの射程にも関心を抱き,さらに上記の「なぜ」の問いを考察する前提として前世紀末にIRにおいて展開された学問史的な関心をも共有しはじめた.こうした経緯から発表していったのが,本書に収録されている一連の論文である.
――本書「あとがき」より


■編集部からのメッセージ
 著者は序章で,民俗学者宮本常一の父が語ったという次のような言葉を引用しています.
 「人の見のこしたものを見るようにせよ.そのなかにいつも大事なものがあるはずだ」
 まさに本書は,これまでの国際関係研究が「見のこしたものを見る」試みです.私たちが生きるこの世界が「国際関係」と称され,理解され,分析されてきたことの意味――「そんなことを考えて何か意味があるのか」と思ってしまいそうなことを,愚直かつ執拗に「見る」著者の眼差し.しかし読者は,そこから感じとるはずです.私たち一人ひとりの世界観までをも問うことのできる学問の力を.
序章 「国際関係」を思想する
第一部 国際関係思想の解体法
第1章 You ain't goin' nowhere――国際関係論は「動かない」か
第2章 国際文化論における二つの文化――方法論的考察
第二部 日本の国際関係思想
第3章 田中耕太郎の国際文化論――「文化的帝国主義」批判の思想と行動
第4章 朝永三十郎の国際関係認識――近代日本における〈自我・国家・国際関係〉の原的形成
第三部 国際政治学の国際関係思想
第5章 そふと・ぱわあ考――国際関係現象としての国際関係研究
第6章 ケネス・ウォルツ論序説――『人間,国家,戦争』の成立過程を中心に
第四部 国際関係思想の世界観・人間観
第7章 〈帝国〉とマルチチュード――新しい世界の構想への評定
第8章 「恐怖」の国際関係論――国際関係研究の人間観の刷新へむけて
あとがき
初出一覧
芝崎厚士(しばさき あつし)
1970年横浜に生まれる.1995年東京大学教養学部教養学科第三国際関係論分科卒業.2001年東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程単位取得退学.2001-07年東京大学大学院総合文化研究科助手.2007年博士号(学術)取得(東京大学).
現在,駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部准教授.専攻は国際関係論,国際文化論,国際関係思想,グローバル関係研究.
主要著作として,『近代日本と国際文化交流――国際文化振興会の創設と展開』(有信堂高文社,1999年),『近代日本の国際関係認識――朝永三十郎と『カントの平和論』』(創文社,2009年),「国際関係研究の将来――国際関係の研究からグローバル関係の研究へ」日本政治学会編『年報政治学2015-I 政治理論と実証研究の対話』(木鐸社,2015年,近刊).
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