外交証言録 日米安保・沖縄返還・天安門事件

外務省で重要な対米交渉に関与し,中国大使時代に天安門事件にも遭遇した中島敏次郎の貴重な歴史的証言.

外交証言録 日米安保・沖縄返還・天安門事件
著者 中島 敏次郎 , 井上 正也 , 中島 琢磨 , 服部 龍二
ジャンル 書籍 > 単行本 > 政治
刊行日 2012/01/27
ISBN 9784000242882
Cコード 0031
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 286頁
在庫 品切れ
日米安全保障条約改定交渉,沖縄返還交渉,日米ガイドライン策定といった戦後の主要な対米交渉に関与してきた外交官である中島敏次郎.外務省条約局を中心とする要職を歴任してきた重要人物であり,天安門事件時の中国大使でもある.これまでほとんど紹介されてこなかった彼の証言をまとめた,貴重な歴史的資料.


■編集部からのメッセージ
 2010年に刊行した『外交証言録 沖縄返還・日中国交正常化・日米「密約」』の著者・栗山尚一氏は,本の中で沖縄返還交渉について振り返りつつ「実際に条約局のなかでは中島条約課長が司令塔になりました」と述べています(同書54頁).この「中島条約課長」こそ,本書の著者・中島敏次郎氏です.本書は,気鋭の外交史家たちの手による,中島氏のオーラル・ヒストリーです.
 彼は戦後日本外交を形作った重要な交渉に一貫して関わってきた外交官です.外交官としてのキャリアを日米安保条約改定交渉から始めた彼は,条約局の立場から,沖縄返還交渉だけでなく,日米ガイドライン策定,イランやシンガポールなど様々な国との交渉にも携わります.尖閣諸島の位置づけについても重要な役割を果たした人物です.また,中国大使を務めているとき天安門事件に遭遇するという経験もしています.そのような経歴をもつ中島敏次郎氏の歩みを振り返ることは,日本外交の歩みを顧みることと言えるでしょう.国際社会の中での日本の立ち位置が揺らぎつつある今,その来歴をたどる本書の意義は疑いようもありません.
 なお,中島敏次郎氏は,本書の完成を楽しみにしておられましたが,刊行目前の2011年12月13日に急逝いたしました.多くの人が本書をお読みくださり,積極的に議論の糧とすることを著者も望んでおられることと思います.
(編集部:中山永基)
はしがき

解 題 「外交証言録」に見る戦後日本外交  井上正也

第一章 旧安保条約から新安保条約へ―条約課事務官時代を中心に―
一 外務省入省前後
二 サンフランシスコ講和と旧日米安全保障条約
三 日ソ国交回復
四 日米安保条約改定交渉
五 国連代表部二等書記官時代
六 在マラヤ連邦日本国大使館一等書記官

第二章 沖縄返還交渉―条約課長時代―
一 沖縄返還交渉のはじまり
二 交渉の進展と条約局

第三章 佐藤・ニクソン共同声明―条約課長・駐英公使時代―
一 「韓国条項」と「台湾条項」
二 佐藤・ニクソン会談――1969年11月
三 核持ち込みをめぐる「密約」問題
四 イギリスでの経験

第四章 日米安保の変容と国際政治―条約局長・アメリカ局長・駐シンガポール大使時代―
一 日米同盟の緊密化
二 米国外交と日本
三 駐シンガポール大使時代

第五章 中曽根政権と日本外交―外務審議官・駐オーストラリア大使時代―
一 中曽根外交の始動
二 ロン・ヤス関係と日米同盟
三 戦略的外交の諸相――ソ連・東南アジア・中国
四 日豪関係の新時代

第六章 天安門事件―駐中国大使時代―
一 着任前後の日中関係
二 天安門事件
三 天安門事件後の日中関係

終章 尖閣諸島と戦後外交
一 尖閣諸島をめぐる日米中関係
二 戦後外交とは何だったのか

あとがき  中島磨

インタビューアー一覧

中島敏次郎略歴
中島敏次郎(なかしま・としじろう)
1925年東京都生まれ.48年に戦後第1回の外交官領事館試験に合格し,東京大学法学部を卒業後,外務省に入省.条約局条約局長,北米局長,在シンガポール大使,在オーストラリア大使,在中国大使などを経て退官.その後も最高裁判所判事などを歴任する.2011年12月逝去.

井上正也(いのうえ・まさや)
香川大学法学部准教授.神戸大学大学院法学研究科博士後期課程修了.博士(政治学).著書に『日中国交正常化の政治史』(名古屋大学出版会,2010年,平成22年度吉田茂賞,第33回サントリー学芸賞受賞).

中島磨(なかしま・たくま)
龍谷大学法学部准教授.九州大学大学院法学府博士後期課程単位取得退学.博士(法学).主な編著書に『現代日本政治史3 高度成長と沖縄返還』(吉川弘文館,2012年2月刊行予定),『外交証言録 沖縄返還・日中国交正常化・日米「密約」』(栗山尚一著,服部龍二,江藤名保子との共編,岩波書店,2010年),『心の一燈 回想の大平正芳――その人と外交』(森田一著,服部龍二,昇亜美子との共編,第一法規,2010年)など.

服部龍二(はっとり・りゅうじ)
中央大学総合政策学部教授.神戸大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学.主な編著書に『日中国交正常化――田中角栄,大平正芳,官僚たちの挑戦』(中公新書,2011年,第11回大佛次郎論壇賞,第23回アジア・太平洋賞特別賞受賞),『アジア外交 動と静――元中国大使中江要介オーラルヒストリー』(中江要介著,中島磨ほかとの共編,蒼天社出版,2010年).
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