図書館と表現の自由

図書館をめぐる問題をさまざまな場面に分けて,表現の自由の保障のあるべき姿から包括的に検討を加えた.

図書館と表現の自由
著者 松井 茂記
ジャンル 書籍 > 単行本 > 法律
刊行日 2013/09/26
ISBN 9784000259170
Cコード 0032
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 270頁
在庫 品切れ
図書館は国民が情報を受け取る機会を保障するため極めて重要な役割を担っている.図書館や利用者・出版社の法的地位,図書館における図書の収集・管理・利用,インターネットへのアクセスなど,図書館をめぐる問題をさまざまな場面に分けて,表現の自由の保障のあるべき姿から,包括的に検討を加えた.

■著者からのメッセージ

 図書館は,国民が情報を受け取る機会を保障するためきわめて重要な役割を担っている.図書館が多様な図書等を収集し,国民の利用に供することによって,国民は多様な情報に接することができる.他方で,図書館における図書等の提供が問題とされる場合は少なくない.図書館が図書等を利用者の利用に供することが刑罰法規に触れる図書の場合はその典型例であるが,それ以外にも図書館が利用に供することが民事上違法となりうる場合,さらに利用に供することが違法とはいえないが,妥当とはいえないような場合もありうる.このような場合に,図書館は利用制限措置等をとるべきか,あるいはとっても良いのかどうかは,きわめて難しい問題を提起する.
 本書では,図書館における図書等の収集,管理,利用と表現の自由の保障について,さまざまな場面に分けて検討を加えてみた.いずれも難しい問題であり,ここで示された考え方が妥当なのかどうかには異論もありうるものと思う.本書が示している見解は,あくまで一憲法研究者として,図書館における表現の自由の保護のあるべき姿から,図書館の利用や図書等の利用についてその制限についての見解を示したものに過ぎない.本書を契機にして,図書館における表現の自由の保障の問題に光が当てられ,さらに議論が深まることを期待したい.

はじめに

Ⅰ 図書館と利用者あるいは著者ないし出版社の権利
第一章 図書館の位置づけ
第二章 図書等の収集,管理ないし廃棄及び利用と表現の自由

Ⅱ 図書館における図書等の収集とインターネットへのアクセス
第三章 図書等の収集
第四章 インターネットへのアクセスの制限

Ⅲ 図書館における図書等の管理と利用の制限
第五章 図書等の管理
第六章 利用者の規律
第七章 図書等の利用

Ⅳ どのような図書等であれば利用を制限できるか
第八章 刑罰法規に反する内容の図書等
第九章 個人の名誉ないしプライバシーを侵害する図書等
第一〇章 差別的図書等
第一一章 少年法違反の図書等
第一二章 著作権等を侵害する図書等
第一三章 政府や地方公共団体が提供した図書等
第一四章 それ以外の内容による利用制限

Ⅴ 図書の利用制限の手続と求めうる救済
第一五章 図書等の利用を制限するのにどのような手続が必要か
第一六章 図書等の利用が制限されたときに,どのような救済が考えられるか

Ⅵ 図書館とプライバシー保護
第一七章 図書館におけるプライバシー保護

結びに代えて

参考文献
松井 茂記(まつい しげのり)
1955年生まれ.京都大学法学部卒業,大阪大学法学部教授を経て,現在は,カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学法学部教授,大阪大学名誉教授.専攻は憲法.著書に『情報公開法入門』(岩波新書),『インターネットの憲法学』(岩波書店),『LAW IN CONTEXT憲法』『日本国憲法 第3版』『司法審査と民主主義』『二重の基準論』『アメリカ憲法入門 第7版』(以上,有斐閣),『マス・メディア法入門 第4版』(日本評論社)など多数.
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