日本の財政はどうなっているのか

複雑で理解が難しい日本の財政の現状と問題点をわかりやすく整理し,解決への道筋を示す.

日本の財政はどうなっているのか
著者 湯本 雅士
ジャンル 書籍 > 単行本 > 経済
刊行日 2015/11/18
ISBN 9784000610773
Cコード 0033
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 284頁
在庫 品切れ
複雑で全容を把握することが難しい日本の財政の現状と問題点を,租税・社会保障・地方財政・公債といった財政面の主要テーマごとに分かりやすく整理し,解決への道筋を示す.リーマンショックや東日本大震災を経て,大きく変化する日本の今後を考えるための必読書.

■著者からのメッセージ

しばしば感ずることであるが,財政の世界はこの青木ヶ原に似ている.いったんそこに踏み込むと,無数に枝分かれした木々の間をさまよい,ついには自分がどこに立っているのかわからなくなる.こうした経験は,財政を学ぼうとするほとんどの人が持っているのではなかろうか.
 本書には,この樹海に迷い込んで立ち往生している人々のために,何とか出口までたどり着くことができるような道標(みちしるべ)を立てておきたいという気持ちが込められている.このために,常に全体像を把握した上で自らの位置関係を確かめるというアプローチをとっている.その過程では,細かな枝葉は切り捨てざるを得なかったが,全体に響く重要性をもっているものについては極力保存する努力をしたつもりである.
 道標を立てていく過程で常に念頭にあった指導原理(guiding principle)は,「財政は所得移転の世界である」,という事実である.本書総論の冒頭に記したように,財政は,それを得るのに対価を必要としない公共財を国民に提供し,それを通じて資源の再配分・所得の再分配・景気の安定化を図ることをその任務としているが,その財源はどこにあるのか――「国庫」などという「ドラえもん」が存在しない世界においては,「所得移転」,すなわち,誰かからその所得を取り上げて,それを他の人に移すという作業がどうしても必要である.この原理を念頭におく限り,複雑怪奇に見える財政問題を理解するのはそれほど難しいことではない.そのことは,複雑な債権債務関係が折り重なってできている金融の世界に比べると明らかである.財政が複雑化するのは,国債という金融の世界が財政の世界に入り込んできた時である.そこでの所得移転は,現世代内だけではなく,次世代をも巻き込んだ問題となる.本書では,国債という財政と金融との接点にとりわけ力を入れたつもりであるが,それはそうした理由による.
湯本 雅士(ゆもと まさし)
衆議院調査局財務金融調査室客員調査員.公益法人資本市場研究会理事.1960年東京大学法学部を卒業.同年日本銀行に入行.1963年ペンシルバニア大学ウォートンスクール入学.1965年卒業(MBA)後日本銀行に復帰.国際金融・金融研究所・金融政策関連各部局を経て,1991年より東京証券取引所常務理事.1999年より杏林大学社会科学部・同大学院国際協力研究科教授.2013年より衆議院調査局にてスタッフの指導にあたる.主な著書に『基礎から学ぶ金融・財政』『基礎から学ぶ日本経済(第2版)』(以上,東洋経済新報社),『日本の財政 何が問題か』『サブプライム後の金融財政政策』『デフレ下の金融・財政・為替政策』『金融政策入門』(以上,岩波書店)がある.

書評情報

週刊エコノミスト 2016年1月26日号
日本経済新聞(朝刊) 2016年1月3日
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