ドキュメント ゼロ金利

日銀VS政府 なぜ対立するのか

98年の新日銀法以降,中央銀行はどう変わり,金融政策はどのように決定されたのか.息詰まる攻防の記録.

ドキュメント ゼロ金利
著者 軽部 謙介
ジャンル 書籍 > 単行本 > 経済
刊行日 2004/02/26
ISBN 9784000241250
Cコード 0034
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 268頁
在庫 品切れ
日本経済がデフレ・スパイラルの入り口に何度も立たされる異常な時期と重なった,新生日銀第一期.ゼロ金利導入,ゼロ金利解除,量的緩和導入―.日銀百有余年の歴史の中で,いずれもきわめて特異な政策はいかに決定されたのか.日銀内部と政府・国会との迫力ある攻防を再現し,政策決定の力学,日銀独立性の実際を検証する.

■著者からのメッセージ

 日本銀行は,不思議な組織です.
 現行憲法は,予算,税制,外交,安保,防衛など,国の基本政策を最終的に決めるのは「国権の最高機関」たる国会だと定めています.その国会議員は国民が選挙を通じて選ぶので,政策決定の責任は最終的に主権者である国民に回帰していきます.
 しかし,日銀はこのような民主主義の統治原則から外れたところに存在しています.総裁や副総裁の人事には国会の同意が必要ですが,彼らは選挙を通じて国民の負託を受けるわけではありません.金融政策がいちいち国会の議決を経るわけでもありません.一握りの金融のプロ達が,専門的な見地から,国民生活にも重大な影響が及ぶ政策を決めています.
 であればこそ,日銀の政策は具体的にどのようなプロセスを経て決定され,政府とはどのような関係が構築されているのかを,きちんとチェックしておく必要があるのだと思います.本書の狙いはそういった検証にあります.
 1998年4月,日銀は政府からの「独立」を果たしました.審議委員制度が導入され,意思決定システムも新しいものになりました.日本経済がデフレスパイラルの入り口に立たされるという異常な情勢にも立ち向かわねばなりませんでした.そのような中で決められたこれまでの金融政策をトレースした結果,時に政府と鋭く対立し,時に政府の意向を先取りして政策運営をしていく日銀の姿を発見することができました.
 民主主義の原則の中で金融政策はどのように位置づけられるのか.日銀という組織は一体誰のものなのか――.本書がこういった問題を考える作業の一助になれば幸いです.

-

・・・・・・そごう破たんの発表から一夜明けた13日は,朝から忙しかった.そのままゼロ金利解除で突っ走るか,それとも立ち止まるのか,迷いが満ちていた.そんなところに宮沢から速水に電話が入った.午後の早い時間だった.
「今回はやめてほしい」
「総理の顔を立ててほしい」
「サミットもひかえていることを考えてはいただけまいか」・・・・・・

(本文179ページから)
はじめに


I 独立記念日
 1 四月一日
 2 手探りの日々
 3 反対票
 4 日銀,溜飲を下げる


II ゼロ金利へ
 1 芽生える不信感
 2 国債引受け
 3 「プラスのメッセージを」
 4 ゼロ金利導入
 5 政府との距離


III 非不胎化論争
 1 宮沢蔵相登場
 2 必死の説得
 3 決定「現状維持」
 4 天動説と地動説


IV ゼロ金利解除
 1 氷川会の攻防
 2 テーラールール
 3 ダムに穴はあいているか
 4 蔵相の電話,総裁の突撃
 5 議決延期請求権


V 政策転換
 1 経済財政諮問会議
 2 量的緩和


 新体制の中で――エピローグに代えて
 日銀の組織概略図
 あとがき
軽部謙介(かるべ けんすけ)
1955年東京都生まれ.早稲田大学卒業後,時事通信社入社.社会部,福岡支社,那覇支局,経済部,ワシントン特派員などを経て,現在,経済部次長.著書に『Political Appointees――クリントン流対日戦略の黒衣たち』(フリープレス),『日米コメ交渉』(中公新書),『検証 経済失政――誰が,何を,なぜ間違えたか』(共著,岩波書店),『ドキュメント 機密公電――日米経済交渉の米側記録は何を語るか』.

書評情報

週刊東洋経済 2006年8月12-19日号
読売新聞(朝刊) 2004年12月26日
週刊ダイヤモンド 2004年12月18日号
週刊ダイヤモンド 2004年6月12日号
週刊東洋経済 2004年5月29日号
フォーサイト 2004年5月号
金融ビジネス 2004年5月号
信用組合 2004年5月号
BNPパリバ証券 GWの推薦図書 2004年4月30日号
週刊エコノミスト 2004年4月27日号
毎日新聞(朝刊) 2004年4月18日
日本経済新聞(朝刊) 2004年4月18日
週刊現代 2004年4月
ページトップへ戻る