ルポ 下北核半島

原発と基地と人々

原子力にまみれ,軍事に侵食される本州最北の半島と,その地で国策に抵抗してきた人々の姿を報告する.

ルポ 下北核半島
著者 鎌田 慧 , 斉藤 光政
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2011/08/30
ISBN 9784000024686
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 並製 ・ 244頁
在庫 品切れ
原子力発電所・核燃料再処理工場・ウラン濃縮工場・MOX燃料加工工場・高レベル放射性廃棄物貯蔵施設・使用済核燃料の中間貯蔵施設,さらに核戦争の最前線基地として機能する米軍三沢基地…….名著『六ヶ所村の記録』から20年,原子力と軍事に侵食される本州最北の地を見つづけてきた二人のジャーナリストによる報告.

■編集部からのメッセージ

下北半島には,10代の頃から行っていた.北海道へバイクで渡るための最安の手段が,下北半島の北端,大間から函館へのフェリーだった.「まさかり」の形をした下北半島に毎年のように行き始めてからもう20年.そのあいだに六ヶ所に広大な核燃再処理施設が姿をあらわした.夏の一時期に通り過ぎるだけの観光客にすぎなかった自分にも,その変化が違和感とともに明確になってくる頃には,東通村に原発ができ,大間でも原発建設が始まった.むつには使用済み核燃料の「中間」貯蔵施設ができつつある.これはいったい,なんなのだ――.

 青森に生まれ,長年にわたって原発とそれを生み出す構造とに向き合ってきたジャーナリストの鎌田慧さん,東奥日報の敏腕記者の斉藤光政さんの緻密な取材が可視化した下北「核」半島の現実を知ってほしい.核に汚染される土地を,これ以上,増やさないために.

【編集部:熊谷伸一郎】
まえがき (鎌田慧)


第1章 悲劇の六ヶ所村

国道338号線/六ヶ所村開発前史/200倍の地価高騰/跳ね返された石/狙われていた核半島化/隠された核半島構想/三点セットは五点セットに/事故つづきの再処理工場/鳥を眺めていた少年/核燃と三代目たち/裏切られた土地/老抵抗者たちの現在/灯しつづける種火/こわばる人々/人工的な街/保安検査官/遠のく運転開始


第2章 核最終処分場候補の不安・東通村

無人灯台海猫声尽くし……/虚構の大原発基地構想/残されていた記念碑/移築されたもう一つの碑/原発計画/漁村にあらわれた原発/海あればこそ/カンフル注射としての交付金/最終処分場への策動


第3章 原子力に翻弄される町・むつ市

本州最北端の市/日本帝国海軍の亡霊/漂流した「むつ」/買い与えられた市庁舎/許可前に進められた「準備工事」/偉丈夫の漁師/土地先行取得,狂言強盗……/中間貯蔵施設


第4章 フルMOXに脅かされる本州最北端・大間町

国策会社の原発計画/幻の製鉄所/原発拒否を貫いた女性/買収と切り崩し/「海があれば生きていける」/大間にあらわれた「戦略村」/原発用地の中でつづく抵抗/注ぎ込まれるカネ/原発と向きあう人々/国策被害地帯に無関心の世論


第5章 3・11後の下北半島

凍結された工事/生き死にに無関心な学者たち/建設再開の要望書/抵抗の人生


第6章 軍事化される半島――謎秘める自衛隊基地群

地図にない基地・海上自衛隊下北海洋観測所/チョークポイント・海上自衛隊八戸航空基地/洋上にらむ対艦ミサイル・陸上自衛隊八戸駐屯地/ミグ25事件・海上自衛隊大湊基地/山頂にガメラ出現・航空自衛隊大湊分屯基地/Xバンドレーダー・米軍車力通信所


第7章 戦略出撃基地ミサワ

グローバル・ストライク/冷戦時は核出撃基地/核漬けの日本列島/核持ち込みの「抜け道」/空の核密約/秘密作戦「剣」/原爆破壊も目的に/行動範囲はアジア全域/間接的に戦争に協力する日本/ハイテク爆弾GBU38/一触即発のイラン,北朝鮮


第8章 基地に依存する街

基地めぐる南北格差/降ってわいたF16撤収構想/三沢要塞は揺るがず/遅れてきた最新鋭機/注目集める平成のゼロ戦/浮上する敵基地攻撃論/思いやり予算2000億円/「米国は日本を守らない」/中東からの帰還/翻弄される国民と自衛隊


あとがきに代えて (斉藤光政)
鎌田 慧(かまた さとし)

1938年,青森県弘前市生まれ.ルポライター.社会的弱者の立場からのルポルタージュを数多く発表.出身地の青森について,また全国各地の原子力発電所についての作品も多い.代表作に『自動車絶望工場』『反骨 鈴木東民の生涯』(講談社文庫),『六ヶ所村の記録』(同,毎日出版文化賞)など.近著に『原発暴走列島』(アストラ),『日本の原発危険地帯』(青志社)など.



斉藤光政(さいとう みつまさ)

1959年,岩手県生まれ,青森県育ち.東奥日報社論説委員兼編集委員.米軍の動向を深く取材した多くのルポルタージュを発表.第9回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞(2009年),第11回新聞労連ジャーナリスト大賞(2007年)など,地域に根ざしながらの調査報道が高く評価されている.著書に『米軍「秘密」基地ミサワ』(同時代社),『偽書「東日流外三郡誌」事件』『在日米軍最前線』(新人物文庫)など.

書評情報

朝日新聞(朝刊) 2011年10月16日
東京新聞(朝刊) 2011年10月2日
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