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労働組合運動とはなにか

絆のある働き方をもとめて

現代において労働組合は本当に必要なのか.労働組合運動の真髄とは何なのか.第一人者が語る.

労働組合運動とはなにか
著者 熊沢 誠
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2013/01/30
ISBN 9784000025966
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 236頁
在庫 品切れ
社会には競争が溢れている.勝者たり得る者はごく一握りにすぎず,多くの人は敗者になることをまぬかれえない.敗者が「敗者」の立場のままでも生きていける社会は可能なのか――.ノンエリートがノンエリートの立場のままで生きていける社会を可能にする試みこそが労働組合運動だとする著者が,その真髄を語る.


■内容紹介
 現代社会には競争が溢れている.その中で勝者たり得るものはごく一握りに過ぎず,多くの人は敗者になることをまぬかれえない.敗者には「負け」を決定づけられた競争に「再チャレンジ」する以外の道はないのか.敗者が敗者の立場のままで,ノンエリートがノンエリートの立場のままで生きていくことは,この日本において不可能なのか――.
 それを可能にする試みこそが労働組合なのである! 本書では労働組合の思想・機能・多様な形態を論じ,その歩んできた軌跡を辿りつつ,現代日本の労使関係を批判的に考察する.労働組合がなぜここまで嫌われ,支持されないのか.その現実をどのように乗り越えていくべきなのか.ユニオニズムの新しい展開を探る.
一章 労働組合原論――その思想,その機能,その多様なかたち

序にかえて

1 なぜ今,あらためて労働組合運動なのか
社会保障論から――「ワークフェア」にさきがけて/顕在化する格差社会への対抗/新自由主義の台頭と人びとのアトム化

2 労働組合の思想
競争の制御――〈平等を通じての保障〉/石田光男氏の労働組合論/個人主義と集団主義の位相

3 労働組合の基本的な機能
経済(学)的にみれば/政治(学)的にみれば/社会(学)的にみれば/労働組合に頼らない生活防衛について

4 さまざまの〈労働社会〉・それぞれの労働組合
〈労働社会〉の形成要因/定着のかたちと組合組織


二章 欧米労働組合運動の軌跡と達成

1 クラフトユニオンの世界
合同機械工組合の組織と政策体系/なぜそれが可能なのか/クラフトユニオンの変化/クラフトユニオニズムの遺産

2 一般組合(ジェネラルユニオン)の登場
「イーストエンドの覚醒」――ロンドン港のドックストライキ/港湾労働者の登録制――雇用の臨時性の克服

3 職場全員組織と産業別組合――ものがたり・アメリカ自動車産業の組織化
寡占企業のビヘイビアとマスプロダクション/専制的労務管理の支配/オープンショップ運動――アンチ・ユニオニズムの諸相/アメリカンドリームのゆくえ――大恐慌とニューディール政策/自動車産業組織化の成功要因/GMのシットダウン・ストライキ(一九三六~三七年)/シットダウン・ストライキの成果――諸要求の帰趨

4 労働組合運動と現代の労使関係
パターン・バーゲニング/セニョリティにもとづくレイオフと再雇用/労働組合運動の達成したもの/一九八〇年代以降の後退と再生


三章 企業別組合への道ゆき――近代化・現代化の日本的特徴と労働者

1 企業別組合への大まかなプロセス

2 日本近代化の特徴的な様相
近代国家統合のフレームワーク/労働力需要の質的ダイナミズム/農村分解のかたちと労働者像/産業民主主義の否認と「横断組合」の放逐

3 年功制度
その構成要素/その背景と労働者の受容/唯一の〈労働社会〉としての企業社会/ひとつの総括

4 戦後民主主義と労働者思想
建前を実態に!/国民としての平等/従業員としての平等

5 戦後労働組合運動の展開
労使関係の争点/時期区分の概観/第1期:年齢別賃金・自動昇給VS.ベース賃金・職階制賃金/第1期:電産争議(一九五二年)/第1期:職場の主導権のありか――日産争議/第1期:解雇反対闘争と企業別組合/第2期:春闘の展開/第2期:職能給への収斂/第2期:日本的能力主義の働き方/第2期:三池闘争という分水嶺/第3期:賃金決定の「里帰り」/第3期:公労協バッシング/第3期:非正規労働者の増加とコミュニティユニオン/第4期:春闘の形骸化/第4期:労働条件決定の〈個人処遇化〉/第4期:「希望退職」の虚実/第4期:非正規若者のワーキングプア化


四章 労働組合運動の存在は今どこに?

1 戦後労働組合運動が達成できなかったこと
企業の枠を超えた賃金の標準化は?/個人別賃金標準化の挫折/仕事と処遇におけるジェンダー差別は?/非正規労働者・非組合員の処遇規制は?/働き方への組合規制は?

2 非正規労働者にとっての企業別組合
企業別組合の立場――雇用形態をめぐって/非正規労働者の仕事内容をめぐって/非正規労働者の賃上げとナショナルセンター――社会的労働運動論の真偽

3 正社員(=組合員)にとっての企業別組合
「個人の受難」に寄り添わない労働組合/なぜそうなっているのか/組織労働者と労働組合の疎遠な関係

4 いくつかの重要な関連事項
「個別労働紛争機構」への訴え/労使協議による団体交渉の駆逐/徹底したスト離れ/政府と労働組合――いわゆる政策課題について


五章 労働組合=ユニオン運動の明日

1 労働組合のニーズをめぐる意識状況
閣議決定・二〇一〇年六月/労働組合の必要論と不必要論/若者と労働組合/女性労働者の立ち位置

2 企業の組合・職場の組合――その性格の二重性と労働者の選択
〈労働社会〉を労働組合(ユニオン)に媒介する要因/企業別組合にもできること/ノンエリート社員たちのニーズと職場組合主義/非正規労働者,パートタイマーの組織化/均等待遇の実践――いくつかの事例

3 中小企業労働者の連帯――支払能力の軛を絶って
企業横断の労働組合/「関西生コン」の独自性/港湾労働者と共同雇用/下からの公契約条例運動――行政関連ユニオンの試み

4 非正規労働者たちのユニオン
クラフトユニオンの可能性――ある女性の軌跡/いくつかのクラフトユニオン/コミュニティユニオンの役割/コミュニティユニオンの困難/むすびにかえて――政策課題を担う社会運動


あとがき

主要参考文献
本書の内容に関連する映画作品
熊沢 誠(くまざわ まこと)
1938年三重県に生れる.甲南大学名誉教授.1961年京都大学経済学部卒業(1969年経済学博士).研究会「職場の人権」を1999年に設立,2012年まで代表を,現在は顧問を務める.専攻は労使関係論,社会政策論.
著書に『国家のなかの国家――労働党政権下の労働組合・1964―70』(日本評論社,1976年),『働き者たち泣き笑顔――現代日本の労働・教育・経済社会システム』(有斐閣,1993年),『新編 日本の労働者像』(ちくま学芸文庫,1993年),『能力主義と企業社会』(1997年),『女性労働と企業社会』(2000年),『リストラとワークシェアリング』(2003年.以上,岩波新書),『格差社会ニッポンで働くということ――雇用と労働のゆくえをみつめて』(2007年),『働きすぎに斃れて――過労死・過労自殺の語る労働史』(2010年.以上,岩波書店)など多数.

書評情報

朝日新聞(朝刊) 2015年8月16日
西日本新聞(朝刊) 2013年5月12日
読売新聞(朝刊) 2013年3月31日
東京新聞(朝刊) 2013年3月24日
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