生命の研究はどこまで自由か

科学者との対話から

生命研究の自由と制約の原理は何か? 池内了,長谷川眞理子,勝木元也,田川陽一との対話を通して考える.

生命の研究はどこまで自由か
著者 橳島 次郎
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2010/02/24
ISBN 9784000236904
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 並製 ・ 250頁
在庫 品切れ
臓器移植,代理出産,クローンやES細胞──生命現象の本質に迫る生命科学の衝撃力は科学者の行動を縛る必要を社会に再認識させた.生命の研究の自由と制約の原理は何か? 科学に内在した倫理は存在しうるのか? 池内了,長谷川眞理子,勝木元也,田川陽一という四人の科学者との対話を通して考える.


■著者からのメッセージ
 生命を扱う科学研究はどこまでやってよいのか? 研究の自由の根拠は何か? 役に立つ研究ならどんどん進めてよいのか? 役に立たない研究の自由は認められないのか? 科学研究の価値とは何だろうか?
 こうした素朴な,しかし答える側にとってはおそらく非常に面倒な問いをあえて科学者に直接ぶつけ,意見を交わすことで,科学研究という営みの本質に迫ってみたい.そのうえで,科学と社会の望ましい関係のあり方について,腰を据えて考えてみたい.それが本書の趣旨である.
(「はじめに――生命科学の「仁義」を求めて」より


■編集部からのメッセージ
 この本は,著者・島次郎さんと科学者との間で交わされた4つの対話を再構成したものです.では4人の対話相手はどのような方たちでしょうか――.

 池内了さんは天文学者・宇宙物理学者ですが,岩波新書『疑似科学入門』や『寅彦と冬彦』などの編著作群からご存知の通り,アカデミックな枠にとらわれず,科学を社会へと開いてこられた方です.
 長谷川眞理子さんも,『科学の目 科学のこころ』など多数のエッセイで科学と社会の関係については多数論じてこられました.進化生物学・行動生態学が専門の長谷川さんは,シリーズ『進化学』の編集委員もつとめられています.
 3人目の勝木元也さんは,分子生物学・発生工学が専門.生命科学の最先端現場を現在まで長く経験されており,遺伝子組換え動物の作成の日本における草分け的存在といえる方です.
 同じく発生工学が専門の田川陽一さんが4人目.工学から生命研究に向かわれた,1965年生まれの若い研究者であり,現在,ヒトES細胞を用いた研究を進めています.

 科学研究,科学政策の未来を考えるにあたって,これ以上ないメンバーと言えるでしょう.
 生命現象の本質に迫る生命科学の衝撃が,新しい未来の可能性を拓く一方で,様々な倫理的摩擦を生じているいま,科学と社会の関係という,古くて新しい問いかけに,この本とともにチャレンジしてみてはいかがでしょうか.
はじめに――生命科学の「仁義」を求めて
第1章 科学者の自律と責任とは
   《池内了氏との対話から》
第2章 進化生物学からみた科学と人間
   《長谷川眞理子氏との対話から》
第3章 分子生物学の射程と大学の復権
   《勝木元也氏との対話から》
第4章 発生工学と「議論好き」の両立
   《田川陽一氏との対話から》
おわりに――科学と社会の関係のあるべき姿
橳島次郎(ぬでしま じろう)
1960年生まれ.生命倫理政策研究会共同代表.東京大学大学院社会学研究科博士課程修了(社会学博士).三菱化学生命科学研究所社会生命科学研究室長,科学技術文明研究所主任研究員などを経て現在に至る.専門は生命科学・医学の研究と臨床応用を中心にした科学政策論.著書に『脳死・臓器移植と日本社会――死と死後を決める作法』(弘文堂,1991年),『戦端医療のルール――人体利用はどこまで許されるのか』(講談社現代新書,2001年,NIRA大来政策研究賞受賞).共著に『優生学と人間社会――生命科学の世紀はどこへ向かうのか』(講談社現代新書,2000年).

書評情報

環境と健康 Vol.23 No.3(2010年秋)
日経サイエンス 2010年7月号
日本経済新聞(朝刊) 2010年5月2日
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