〈民が代〉斉唱

アイデンティティ・国民国家・ジェンダー

国境・民族・ジェンダー.差別と抑圧の境界線をずらし,新しい共同性をめざす解放の思考.

〈民が代〉斉唱
著者 鄭 暎惠
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2003/08/06
ISBN 9784000237574
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 312頁
在庫 品切れ
女性,高齢者,子ども,定住外国人….近代国民国家はいくつもの境界をつくりだし,私たちを分断している.なぜ定住外国人の市民権獲得が阻まれるのか? マイノリティ女性の発言は誰に届くのか? 境界に潜む差別と抑圧の構造を揺るがし,固定したアイデンティティを問いなおす.新しい共同性を模索する解放の思考.

■著者からのメッセージ

あなたは,日本国民に漂う「諦め」「抵抗の薄さ」「直視の回避」をどう感じていますか.刻一刻と「暗黒の時代」に向かおうとしていることより,その方が私には不気味に思えるのです.国民たちが,評論家よろしく,他人事のように日本の今後について語れるなんて,怒りや希望はどこにあるのでしょうか.国語という官製言語によって表現/理解しているうちに,私たちの感情がどこかで拘束され,自己疎外されてしまったのでしょうか.国家のマリオネットであることをやめて,<自己>を取り戻そう.<民が代>は絵に描いた餅ではないはず.寝た子さえ起きれば,どこからでも,すぐに始められる.そう,あなたからでも.

国家の傲慢は,外国人などマイノリティに向かうのみならず,国民に向かうのです! 国民の奴隷化は今に始まったことではありません.自らの権利に疎いからこそ,他者の権利も保障できずにいる国民たちよ.反対を唱えることだけでは不十分で,国民が自らの呪縛を解くことがまず必要です.発想を転換させる柔軟な創造力,多様性,自律性こそが窮地からの出口を開くはずです.

この不安と不満で満ちている日本社会で,私は<justice>という,一点の曇りなき青空を,仰ぎ見たいのです.誰もが自分の存在価値を見出し共生できる,<安心>の共同性を構築したいのです.あなたも,のびのびと心いっぱい美味しい状況を満喫したくはないですか.未来を創るためには,あなたの日常生活の「舞台裏」に潜む「不安と不満」の源をともに見極め,断っていくことから始めましょう! これからも,よろしく.
鄭 暎 惠(チョン・ヨンヘ)
1960年東京生まれ.慶應義塾大学大学院社会学研究科修了.広島修道大学を経て,現在,大妻女子大学人間関係学部教員.社会学専攻.主な著作に,『オレ指紋おしてへんねん』(編著,明石書店,1986),『私という旅』(リサ・ゴウとの共著,青土社,1999),「記憶への旅」(同人誌『鳳仙花』17号,2002),「「在日韓国朝鮮人」とは誰か」(『シリーズ いくつもの日本V』岩波書店,2003),「光州の記憶」(『21世紀 文学の創造5』岩波書店,2003)などがある.

書評情報

京都新聞(朝刊) 2003年10月19日
朝日新聞(朝刊) 2003年10月5日
東京新聞(朝刊) 2003年9月28日
ページトップへ戻る