非核兵器地帯

核なき世界への道筋

すでに地球の南半分は核兵器なき世界となった.核兵器の呪縛から人類が脱出するための現実的選択肢.

非核兵器地帯
著者 梅林 宏道
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2011/09/28
ISBN 9784000245111
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 並製 ・ 214頁
在庫 品切れ
どうすれば私たちは核兵器の呪縛から自由になれるのか.その人類的な課題への現実的な解答の一つが,非核兵器地帯にほかならない.すでに地球の南半分で「核なき世界」が実現され,北半球への拡大が始まっている.日本は北東アジアで非核兵器地帯を築けるのか.ライフワークとして取り組んできた著者の初の概説書.

■編集部からのメッセージ

 核兵器の問題を勉強しはじめたのは2年前,きっかけはオバマ米大統領のプラハ演説でした.核兵器を使用したことのある唯一の国として「行動する道義的責任」があると,格調高く核廃絶を実現していく決意と展望を示した内容でした.ただ,オバマ大統領は「(核廃絶は)おそらく自分の生きていうちには実現できないだろう」とも述べ,核廃絶を実現する難しさをも表しました.
 そんななか,日本では梅林宏道さんが主唱されてきた「非核兵器地帯」という現実的な構想を知り,驚きました.もう南半球はほとんどが非核兵器地帯となり,核の使用や威嚇という20世紀の遺物的な恐怖から逃れており,国連やNPTなどでも新しい地域の非核兵器地帯化が具体的に検討されているというのですから,目からウロコとはこのことです.
 さっそく関連の本を探したのですが,ないのですね.専門書も概説書もなく,梅林さんが各地の講演で話されたことや雑誌の記事などがあるだけでした.
 そこで梅林さんと相談し,誕生したのが,非核兵器地帯に関する初の概説書である本書です.
 核兵器を使用された唯一の国,日本を含む東アジアでこそ非核兵器地帯を実現したい――長年にわたって実際に取り組んできた梅林さんの熱意と,東西の関連資料を網羅する周到な調査とが,いまだ冷戦構造が残るこの地域にこそ効く「非核兵器地帯」という具体的選択肢を生み出しました.どうぞご一読ください.
『世界』編集部・熊谷伸一郎
はじめに
第一章 非核兵器地帯の現在性
第1節 非核兵器地帯とは 
第2節 九〇年代の息吹=核兵器のない世界 
第3節 「核なき世界」へ第二の波
第4節 段階的アプローチの限界
第5節 包括的アプローチと非核兵器地帯
第二章 既存の非核兵器地帯
第1節 前史――大国の思惑
第2節 ラテンアメリカ・カリブ地域非核兵器地帯
第3節 南太平洋非核地帯
第4節 東南アジア非核兵器地帯
第5節 アフリカ非核兵器地帯
第6節 中央アジア非核兵器地帯
第三章 新しい非核兵器地帯への挑戦
第1節 モンゴルの非核兵器地位
第2節 中東非核兵器地帯
第3節 北極非核兵器地帯の構想
第4節 その他の非核兵器地帯への挑戦
第四章 北東アジア非核兵器地帯への道
第1節 日本の核政策と非核兵器地帯
第2節 北朝鮮の初期の核開発
第3節 朝鮮半島非核化共同宣言とその後
第4節 非核兵器地帯の政策的提案の登場
第5節 「スリー・プラス・スリー」構想とモデル条約
第6節 六か国協議と北朝鮮の核実験
第五章 平和主義を実践する
第1節 共感の広がり
第2節 疑問への回答
梅林宏道(うめばやし ひろみち)
1937年,兵庫県生まれ.1965年,東京大学数物系大学院博士課程修了,工学博士.1980年,大学教員を辞し,現在は反核平和運動家として,NPO法人ピースデポ特別顧問,核軍縮を目指す国際NGO「中堅国家構想(MPI)」運営委員などをつとめる.著書に『在日米軍』(岩波新書),『米軍再編――その狙いとは』 『アジア米軍と新ガイドライン』(岩波ブックレット),『情報公開法でとらえた在日米軍』(高文研)など.

書評情報

中国新聞(朝刊) 2012年8月4日
毎日新聞(朝刊) 2011年11月6日
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