リスク社会を生きる

失業,病気,離婚,原発災害,環境破壊,食品災害,…不安と危険に満ちた現代社会のリスク要因を探り,

リスク社会を生きる
著者 橘木 俊詔
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2004/12/22
ISBN 9784000255615
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 322頁
在庫 品切れ
失業,病気,離婚,原発災害,環境破壊,食品災害….不安と危険に満ちた現代社会のリスク要因を探り,安全と豊かさを取り戻す方策を,多面的な角度から探る.日本型高度福祉モデルではない新たな男女共同参画型のセーフティ・ネット構想とは.8名の気鋭の論者がデータやヒアリングの成果を盛り込み論じる.

■著者からのメッセージ

本書では,自然に発生するか,人為的に発生するかの違いはあるが,このような広範囲でかつ大規模なリスクに対して,どのように対処しかつ備えたらよいか,ということを多角的に議論する.発生するリスクが複雑多岐にわたるので,本書では幅広く専門家を集めて,様々な角度から分析を試みた.
 文科系では,経済学,社会学,心理学,哲学,倫理学の立場からリスクをどうとらえたらよいか,様々な見方と解釈がなされ,理科系では,理学,工学,農学,医学といった分野からリスクへの対処が論じられる.このように異なる分野の専門家が,リスクという共通の概念に焦点をあてて,いわば学際的に分析を行なっている.『リスク社会を生きる』ためには,学際的なアプローチが不可欠であるし,対処の仕方も多方面にわたるのである.
(「はしがき」より)

■編集部からのメッセージ

勤め先が倒産して失業者になったら…,突然,病気になって働けなくなったら….私たちは誰もがこうしたリスクを抱えながら生活をしています.そして,近年,リスクが高まっているという実感が多くの人にあるのではないでしょうか.例えば,少子高齢化によって年金財政は悪化していますし,長引く不況によって失業率は高まり,若年の失業者はかつてないほど多くなっています.
 こうした高まるリスクの原因は何なのでしょうか?どう対応していけばいいのでしょうか?本書は,文科系から理科系まで様々な分野の専門家が,二年弱にわたって組織した研究会をもとにリスクを多方面から論じています.先行き不透明な現代社会を,詳細なデータで分析しながら,安全と安心を取り戻すための構想を明らかにします.
はしがき   橘木俊詔
 
第一章
高リスク社会としての現代  橘木俊詔
一   はじめに
二   リスクはどうとらえられ,分析されてきたか
三   各章の簡単な紹介
四   まとめ
     
第二章 〈サービス化〉〈グローバル化〉はリスク構造をどのように変えたか?
――47都道府県データによる検証 下平好博
一   はじめに
二   分析の枠組み
三   〈サービス化〉の多様なルートと社会対立の構図
四   〈グローバル化〉は〈アングロサクソン型〉への収斂を促したか?
五   〈サービス化〉〈グローバル化〉とリスク構造の変化
六   おわりに
     
第三章
逆機能に陥った日本型セーフティネット 大沢真理
一   はじめに
二   社会的セーフティネットの「型」と「軌跡」
三   ポスト工業化のネガティブ・スパイラル
四   社会保険の空洞化
     
第四章
低所得世帯のリスクと最低所得保障 駒村康平
一   社会保障政策における3つの技術革新
二   低所得者世帯の概観
三   母子世帯向け政策
四   人的資本開発モデルを軸にした最低保障政策の構築
     
第五章
貧困になるリスク・貧困であることのリスク
――福祉国家と社会的リスク管理の困難 岩田正美
一   福祉国家と社会的リスクと「リスク社会」
二   貧困になるリスク
三   貧困であることのリスク
四   リスク管理の限界
     
第六章
男女共同参加社会,自立する若者からみた最低賃金制度 橘木俊詔
一   はじめに
二   男女共同参画社会
三   自立する若者
四   最低賃金制度の充実
五   おわりに
     
第七章
戦後日本社会における犯罪 長谷川眞理子
一   はじめに
二   利用した資料
三   殺人
四   強盗と窃盗
五   まとめ
     
第八章
原発リスクを超えて 小川正浩
一   企業は「社会的制度」である
二   脱原発に向けての選択
三   破綻きたす核燃料サイクル
     
第九章
環境問題の発生 長谷川眞理子
一   公害問題と地球環境問題
二   地球環境問題の構造
三   地球温暖化の問題
四   生物多様性の喪失
     
第十章
リスクに抗する福祉とは 後藤玲子
一   はじめに:問題関心
二   経済学と個人別衡平性の観念
三   アリストテレスの正義と経済学的な衡平性
四   不当性を伴う経済的給付
五   カテゴリー別給付の意味
六   基礎的機会の保障
七   基礎的機会の給付水準
八   結びに代えて
橘木俊詔(たちばなきとしあき)
京都大学大学院経済学研究科教授.『労働経済学入門』〔共著〕(有斐閣),『封印される不平等』〔編著〕(東洋経済新報社),『家計からみる日本経済』(岩波書店),『失業克服の経済学』(岩波新書)
下平好博(しもだいらよしひろ)
明星大学人文学部教授.『ネオ・コーポラティズムの国際比較』〔共著〕(日本労働研究機構),『福祉国家と平等』〔翻訳〕(木鐸社)
大沢真理(おおさわまり)
東京大学社会科学研究所教授. 『男女共同参画社会をつくる』(NHK出版) ,『岩波 女性学事典』〔共編〕(岩波書店)
駒村康平(こまむらこうへい)
東洋大学経済学部助教授.『年金はどうなる』(岩波書店),『年金と家計の経済分析』〔共著〕(東洋経済新報社)
岩田正美(いわたまさみ)
日本女子大学人間社会学部教授.『ホームレス/現代社会/福祉国家』(明石書店),『社会福祉の原理と思想』〔共編〕(有斐閣)
長谷川眞理子(はせがわまりこ)
早稲田大学政治経済学部教授.『進化とはなんだろうか』(岩波ジュニア新書),『シリーズ 進化学』〔共編〕(岩波書店)
小川正浩(おがわまさひろ)
生活経済政策研究所専務理事.『生活者主権の構造改革』〔共著〕(日本評論社),『ヨーロッパの労働組合』〔翻訳〕(生活経済政策研究所)
後藤玲子(ごとうれいこ)
立命館大学大学院先端総合学術研究科教授.『正義の経済哲学――ロールズとセン』(東洋経済新報社),『アマルティア・セン――経済学と倫理学』〔共著〕(実教出版)

書評情報

季刊家計経済研究 第68号(2005年10月)
ページトップへ戻る