墓と家族の変容

いま墓に何が起きているのか.各地での膨大な聞き取り調査に,綿密な学問的な裏づけを行った労作.

墓と家族の変容
著者 井上 治代
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2003/02/20
ISBN 9784000244169
Cコード 0036
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 302頁
在庫 品切れ
夫方妻方の双方を祀った「両家墓」,期限付きの墓,家名のない墓,継承性を脱却した墓,墓石のない墓….家族の形態が大きく変わりつつある現在,墓のありかたには何が起きているのか.日本各地での長年にわたる膨大な聞き取り調査をもとに,最新動向も含め,綿密な学問的な裏づけを行った労作.

■著者からのメッセージ

戦前から戦後へのドラスティックな価値転換の中で,さほど変化をみせないできたものの一つが墓であった.ところが90年代に入ってその墓が大きく動いた.そこに日本文化の基底部分の変容が見てとれる.遺骨を自然に還す散骨や樹木葬が登場した.また永代供養墓とか合葬式墓地などといわれる継承者を必要としない墓が,0から500カ所近くに急増した.これは旧来の家意識では考えられない脱継承や自然志向といった現象である.宗教的アプローチだけではとらえきれなくなっている現代社会における墓の変化を,核家族化,個人化,生涯未婚化など,家族社会学の知見を踏まえつつ,膨大な調査をもとに墓における「脱家」過程を社会学的にとらえた.


■編集部からのメッセージ

著者の井上治代さんは,ノンフィクション作家として,お墓のありかた,人生の最期をどのように各々が考えるか,などを,広範な読者に向けて執筆されてきました.
この本は,井上さんにとって初めての学術書になります.
長年の調査と研究にもとづき,家族が多様化していく今日,墓のありかたも各地で変わってきていることを,実証的に論じた労作です.
都市だけでなく,地方でも変化がでてきていることが,さらに,新しいかたちのお墓が出てきていることも述べられています.
長寿社会のいま,知っておきたい,考えておきたいテーマの1冊です.
井上治代(いのうえはるよ)
1950年11月東京生まれ.淑徳大学大学院博士後期課程修了,社会学博士.家族社会学,宗教社会学を専攻し,死生学や環境社会学にも興味を持っている.ノンフィクション作家として単行本・新聞・雑誌を媒体に執筆・評論活動を続けるとともに,大学で社会学やジェンダー論を教えている.
主な著書に『現代お墓事情-ゆれる家族の中で』創元社,『墓をめぐる家族論』平凡社新書,『新・遺言ノート』KKベストセラーズなどがあり,編書論文に「死後の家族」『シリーズ変貌する家族3』(岩波書店),「21世紀の結縁と葬送を考える」『大衆長寿社会の死に方』(ミネルヴァ書房),「死ぬ」『ジェンダーで学ぶ社会学』(世界思想社)ほかがある.

書評情報

家族社会学研究 第17巻第1号(2005年7月)
週刊仏教タイムス 2003年5月8-15日合併号
中外日報 2003年3月25日
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