未来を変えた島の学校

隠岐島前発 ふるさと再興への挑戦

過疎で廃校寸前の高校が,全国・海外からも志願者が集まる学校へ生まれ変わった.教育と地域活性化の必読書.

未来を変えた島の学校
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著者 山内 道雄 , 岩本 悠 , 田中 輝美
ジャンル 書籍 > 単行本 > 教育
刊行日 2015/03/24
ISBN 9784000248761
Cコード 0037
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 198頁
定価 本体1,500円+税
在庫 在庫あり
過疎で廃校寸前の高校が,なぜ全国・海外からも志願者が集まる学校へ生まれ変わることができたのか.「ヒトツナギ」「地域学」「公立塾」「夢ゼミ」「島留学」といった独自の取り組みの原動力は何か.海士町,西ノ島町,知夫村,三つの島の協働が日本の未来を牽引する.教員,行政,地域住民,ヨソモノ等による人づくりの物語.

■著者からのメッセージ

山内道雄

 (前略)時代は巡り,平成大合併の最中,西ノ島町,海士町,知夫村の島前三町村は,国や県からのプレッシャーに抗い,合併せずに自主独立の路を歩むことを決めました.その頃から,町長であった私は,産業づくりによるまちづくりに取り組みましたが,事業を起こすのも,それを潰すのも「人」だという現実を目の当たりにしていくうちに,「やはり大事なのは人.まちづくりの原点は人づくりだ」と確信するようになりました.そこでふと,足下の島前高校を見ますと,全学年で生徒が九〇人もいない事態になっている.このままでは,一〇年もたずに統廃合されてしまうという状況でした.(中略)島から高校が消え,全員が島外の高校へ進学するようになれば,一五歳以上の子どもは島からいなくなってしまう.そして,子どもがいる家族での流出にもつながっていく.ゾッとしました.高校の存続は,地域の存続に直結する.地域の活性化に,学校が果たす役割の大きさに気づいた瞬間と言えたかもしれません.(中略)
 この取り組みをよく知らない人からは,「島前の奇跡」などと言われますが,それはまったくの見当違いです.これは,そんな再現性がない偶然の軌跡ではありませんでした.また,「あれは,離島だからできた」「あれだけ規模が小さいからできた」「あそこには,あの人がいたからできた」など,自分たちができない言い訳をあたかも正論のように口にする人もいますが,それも表層的な見方です.この取り組みをよく知る人はこう言います.「これだけの人たちが,これだけの想いと考えを持って,これだけ本気で努力して,できない方がおかしい.これだけやって成果がでなかったら,よっぽど能力が無いか,運が悪いかのどちらかだ」と.
――本書「僻遠からの狼煙」より

岩本 悠

 なぜ私はこの島へ来て,この高校に関わることになったのだろう.他にも少子化が進む地域や,存続の危機にある学校は多くあるにもかかわらず.その答えはおそらく,「縁」と「人」なんだと思う.期せずして,この地域もこの学校も私自身も,今までと違う何かを求めている時機に巡りあった.そして,人の想いに共鳴し,「この人たちとなら」と思えたからである.
 地域のために,本気で何かを成し遂げようとする「志」,人や縁,関係性を大切にする「情」,新たなものから学び,異なるものを受け容れ活用しようとする,しなやかな「学びの姿勢」など,人の魅力に惹かれて島へ来たのである.だからこそ,こうした人の魅力を次の世代につないでいく「魅力ある人づくり」こそが,魅力ある地域づくりの真髄だと確信できた.
 この取り組みの軌跡を,そしてここに関わる人たちの想いを遺そうと思ったのは,八年ほど前であった.当時は取り組みを始めたばかりで,四面楚歌,五里霧中,七転八倒の苦悶の時期.まずはこの学校の歴史を学ぼうと,過去の記事や記録を紐繙いていたときだった.この学校をつくり,国の法律をも改正させ,独立させていった住民や教員たちの強い想い,そして,多くの負担や犠牲,苦闘の上に今があることを知った.当時の人たちに比べれば,今の苦しみなどは如何に些細なものかと思えた.そして,こうして受け継がれてきたものを,ここで終わらせずに,次へつないでいきたいという想いが自然と湧いてきた.先人たちの祈りのような願いに触れ,魂が震えた瞬間だったのかもしれない.五十年前の手記を読んで私自身が逃げずに前へ進む勇気をもらったように,今度は自分たちが五十年後の子どもや若者たちに何かを遺したいと思ったのである.
――本書「託された願い」より

僻遠からの狼煙 山内道雄
序章 出航前夜
三つ子島/先憂後楽/地域経営の急所/消滅のシナリオ
成り行きの未来
第1章 乗船
負の連鎖/為せば成る/宙に浮く高校/邂逅/一燈照隅/よそ者の壁/脱「海士高校」/脱「存続」
第2章 三方よし
斜めからの切り込み/浜板の受難/岩本の苦悶/吉元の悩み/弱みを強みへ/ブーメランのように/先ず隗より始めよ/「変える」から「変わる」/チームシップ/船出
第3章 ヒトツナギ
試されごと/ひとあつめ/島の秘宝/お客の想像/大人の本気/花房の意地/子どもの本気/観光しない観光/一丸泣き/一石/旅せよ学徒/味方は身近に/指令/突然の嵐/ご縁はじめ/島のヒーロー/裏のヒロイン/だんだん/はじまりの終わり/生れ出づる未来
第4章 時化
転進/リクルート/タグボート/ナンシー/フックを探す/愛される人間になれ/逆風半帆/協働の学び場/生徒にとって/序列意識/赤い絨毯/畳まれる風呂敷/流布された物語/三角波/不都合な現実/回路を開く/進境/「ある」から「ない」/意図された奇蹟
第5章 宜候
積を求めよ/当事者意識/相乗効果/背水/最後に残った想い/未来のつくり手/相反/止揚/島親/島子/地元の人間として
第6章 燈火
転流/国曳き/グローカル/ヤングジェネレーション/ふるさとに未来を/たすきつなぎ/一流を目指して/合言葉/山高くして
終章 志を果たしに
真の北極星/輝きの連鎖/志定まれば
約束の未来
託された願い 岩本 悠
山内道雄(やまうち みちお)
隠岐島前高等学校の魅力化と永遠の発展の会会長・島根県海士町長 1938年生まれ.島生まれ島育ち.NTT通信機器営業支店長などを経て,2002年に町長に当選し,現在四期目.著書に『離島発 生き残るための10の戦略』(NHK出版).
岩本 悠(いわもと ゆう)
高校魅力化コーディネーター 1979年東京都生まれ.学生時代にアジア・アフリカ20カ国の地域開発の現場を巡り,『流学日記』を出版.その印税等でアフガニスタンに学校を建設.ソニーを経て,2006年より島前の教育に携わる.
田中輝美(たなか てるみ)
ローカル・ジャーナリスト 1976年島根県生まれ.大阪大学卒業後,山陰中央新報社入社.記者として島前の取材を重ねる.同社と琉球新報社の合同企画「環りの海」(2013年度新聞協会賞)に携わる.島前高校の現校長・常松徹の教え子.

書評情報

中国新聞(朝刊) 2015年7月12日
季刊地域 No.22(2015年夏)
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