学校を変える力

イースト・ハーレムの小さな挑戦

アメリカの公教育を変えた教育者の代表作,初の紹介.解説=佐藤学(東京大学大学院教授).

学校を変える力
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著者 デボラ・マイヤー , 北田 佳子
ジャンル 書籍 > 単行本 > 教育
刊行日 2011/03/29
ISBN 9784000258043
Cコード 0037
体裁 四六 ・ 並製 ・ 322頁
定価 本体2,700円+税
在庫 在庫あり
学校は子どもたちに何ができるのか.幼稚園教師からキャリアを開始したユニークな経歴をもつ著者は80年代に,ニューヨークの公立中等学校の改革に乗り出した.低学歴と貧困に悩んでいた地域と子どもたちに起こった劇的な変化とは.何がそれを可能にしたのか.アメリカの公教育を変えた教育者の代表作,初の紹介.解説=佐藤学(東京大学大学院教授).

■訳者からのメッセージ

恩師である佐藤学先生から,本書の翻訳の話をいただいたのは約一年まえのことである.尊敬するマイヤー氏の著書をみずからの手で翻訳できるまたとないチャンスに大きな魅力を感じ,私は即答で引き受けた.(略)思慮深く洗練された彼女の文章は,それゆえときに胸がすく思いがするほど明瞭であり,その主張はきわめて説得力のあるものだった.それにもかかわらず私が苦闘した原因は,本書に紹介されているさまざまな改革の試みが,いったいどのようなもので,なぜそうしなければならないのか,何度テキストを読み直しても実感をともなってとらえきれないところにあった.なかでも私を一番悩ませたのは,「選択制は公教育を救う」という一見理解しがたい彼女の主張だった.(略)
[訳者が翻訳のために,本書の舞台となったニューヨークのセントラル・パーク・イースト中等学校を訪問したことが,このかん綴られている]
 私はふと,マイヤー氏がときどき「corridor(廊下)」という言葉を象徴的に使っていることを思い出した.おそらくこの学校にとって「廊下」は,多様な子どもたちが集う「広場」のような機能をもっているのだろう.とにかくそれは,私がその朝地下鉄から学校に向かうまでに目にしたこの地域の様子とは,あまりにも異なる風景だった.そして,そのとき私ははじめて,マイヤー氏がなぜあれほど強く「選択制は公教育を救う」と主張しているのかを理解したのである.
 「選択制」自体が弊害をもたらすのではない.問題は,それによって同質性を指向するのか,あるいは多様性を追求するのか,つまり何のために「選択制」を導入するのかということが問われなければならないのである.マイヤー氏が主張している「選択制」は,明らかに地域が失ってしまった(あるいは最初から欠如していた)「多様な子どもたちが集う広場」を公立学校のなかに創造することを目的とするものであり,その意味においてまぎれもなく「公教育を救う」有効な手段として機能しているのである.
 ここで強調しておきたいのは,本書の提起する問題はけっして多民族国家アメリカだけに限ったものではないということだ.現在日本でも,学力や家庭環境において「わが子 / わが家と同等かそれ以上の学校」を望む保護者は多いし,そのニーズに応えることを使命と取り違えている学校も少なくない.しかし,真正な学びはいつも異質なものとの出会いから生じるという本書の重要なメッセージを,我々は重く受け止めなくてはならないだろう.
(「訳者あとがき」より)
日本語版への序文
二〇〇二年版への序文
一九九五年版(初版)への序文

第1章  公教育の擁護
第2章  セントラル・パーク・イースト――もう一つの物語
第3章  学校の活動
第4章  神話と嘘と危険
第5章  選択制は公教育を救う
第6章  小さな学校
第7章  尊敬すること
第8章  授業の再創造
第9章  学問的であること――なぜ,子どもは「教養ある人」になりたくないのか
第10章 失敗と忍耐を超えて公教育へ

訳者あとがき

解説 佐藤学

文献紹介
デボラ・マイヤー(Deborah Meier)
シカゴで幼稚園の教師としてキャリアをスタートさせ,以降40年にわたり,フィラデルフィア,ニューヨークの公立小学校で教える仕事に従事した.70年代からニューヨークのハーレムで公立小学校,80年年代には公立中等学校を創設した.それが本書の舞台となった「セントラル・パーク・イースト中等学校」である.同校は最も成功した学校改革の事例として全米に知られている.1997年から2005年までは自らが創設したボストンのミッション・ヒル・スクールで校長として勤務,それ以後はニューヨーク大学の教授として学校改革に貢献している.米国教育アカデミー会員.最初の著書である本書のほか,Will Standards Save Public Education(2000),In Schools We Trust(2002),Many Children Left Behind(2004)などの著作がある.

書評情報

朝日新聞(朝刊) 2011年6月26日
読売新聞(夕刊) 2011年5月16日
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