科学者の本棚

『鉄腕アトム』から『ユークリッド原論』まで

64人の科学者たちが語る,宝物のような「私の一冊」.時代の息遣いが甦り,「人間」科学者の姿がにじみ出る.

科学者の本棚
著者 「科学」編集部
ジャンル 書籍 > 単行本 > 自然科学総記
書籍 > 自然科学書
刊行日 2011/09/27
ISBN 9784000052122
Cコード 0040
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 274頁
在庫 品切れ
胸躍らせたSF,擦り切れるまで使った教科書,恩師や研究分野との幸運な出会いをもたらした本…….64人の科学者,および科学とかかわりの深い著者らが思い思いに語る,宝物のような「私の一冊」.科学者たちが駆け抜けた時代の息遣いが生き生きと甦り,また「人間」科学者の姿がにじみ出る.故・戸塚洋二氏の特別対談も収録.

■編集部からのメッセージ

 自身の人生においてもっとも心に残っている本,研究への道を拓くきっかけとなった本,後世に残したい,あるいは後輩に伝えたい本のことを書いてください――63人の科学者,あるいは科学に深いかかわりのある方々にこのようなお願いをして,できたのがこの本です.雑誌『科学』の連載,その名も「心にのこる一冊」.故・戸塚洋二氏が大場秀章氏とともに植物を語るという,異色の特別対談も収録しています.
 標題の『鉄腕アトム』など少年・少女時代に読みふけった本から,青年期の学びを支えた『力学』や『理工系物理学』といった教科書,専門書,新書,SF,はたまた宮沢賢治や『鼻行類』,そして,人生を通して礎となる『ユークリッド原論』のような古典まで,愛着をもって語られる書物は本当にさまざまです.
 特筆すべきは,理系の研究者に対して一般に抱かれる(であろう)イメージとは裏腹に,じつに人間くさく,また胸に響くいい話が多いということ.一冊の本が,文字通り人生を変えるほどの威力をもって,科学者の生きかたに影響をあたえていることに,驚かれる方もきっと多いのではないでしょうか.たった一冊の本が,決定的に進路を変えもするし,霧が晴れるような発想の大転換をもたらしもする.あるいは,まったく歯がたたない本との悪戦苦闘は,科学者たちにこれ以上ない,学ぶことへの鍛錬の機会を与えもする…….
 さらに,随所で描かれる著者との邂逅や,本を契機とした他の科学者とのめぐりあいの経緯などは,それ自体,貴重な時代の証言でもあります.本への,あるいは本をめぐる人々への思慕が,思わず愛おしくなるような言葉で紡がれる.宝物のような一冊です.
1 夢――すべてのはじまりはここに
手塚治虫著『鉄腕アトム』郡司隆男/柴山雄三郎著『驚異の科学』阿部龍蔵/L.M.オルコット著『若草物語』戸髙恵美子/G.ガモフ著『1,2,3,…無限大』廣田勇/小松左京著『果しなき流れの果に』福江純

2 学ぶ――この一冊に育てられ
M.Born 著『ATOMIC PHYSICS』佐藤文隆/鐸木康孝著『理工系物理学』天羽優子/G.Nelson & N.Platnick 著『Systematics and Biogeography』三中信宏/伊福部昭著『管弦楽法』伊東乾/L.D.ランダウ,E.M.リフシッツ著『力学』小磯晴代/E.マッハ著『マッハ力学』横山順一/R.C.Tolman 著『The Principles of Statistical Mechanics』樺島祥介

3 転機――出会ってしまったばかりに
中尾佐助著『栽培植物と農耕の起源』山本紀夫/G.バシュラール著『科学的精神の形成』金森修/澤瀉久敬著『「自分で考える」ということ』植木雅俊/A.クラインマン著『病いの語り』柘植あづみ/廣重徹著『近代科学再考』瀬戸口明久/平山諦著『和算の歴史』鳴海風/バナール著『歴史における科学』竹内敬人/東京国立文化財研究所光学研究班著『光学的方法による古美術品の研究』三浦定俊/A.Koyré 著『Études Galiléennes』伊東俊太郎

4 縁――めぐりあわせの妙
宮沢賢治著『鹿踊りのはじまり』大貫昌子/K.Aki (安芸敬一),P.G.Richards 著『地震学』蓬田清/片山正夫著『分子熱力学総論』大野公一/鈴木尚著『化石サルから人間まで』奈良貴史/宇井純著『公害の政治学』原田正純/R.エイブラハム,Y.ウエダ編著『カオスはこうして発見された』西村和雄/高木貞治著『解析概論』川合眞紀/『岩波 生物学辞典(第一版)』古谷雅樹/大塚弥之助著『日本の地質構造』杉村新/N.マイアース著『沈みゆく箱舟』長谷川博

  特別対談 大場秀章著『植物学のたのしみ』 戸塚洋二×大場秀章

5 衝撃――目眩がするほどに
C.ターンブル著『ブリンジ・ヌガグ』篠田謙一/オカザキ ツネタロー著『コンチュー700シュ』藤田恒夫/R.ドーキンス著『神は妄想である』三浦俊彦/織田正吉著『絢爛たる暗号』団まりな/C.シェーファー,E.フィールダー著『シティ・サファリ』浜口哲一/S.ゼキ著『脳は美をいかに感じるか』大隅典子/G.ベイトソン著『精神の生態学』池上高志/T.Winograd & F.Flores 著『Understanding Computers and Cognition』玉井哲雄/松本元著『愛は脳を活性化する』霜田光一/Philip Morrisonほか著『Powers of Ten』徳田雄洋/H.シュテンプケ著『鼻行類』今泉みね子

6 敬慕――先達をあおぎみる
高木仁三郎著『市民科学者として生きる』小野有五/湯浅年子著『パリ随想』山崎美和恵/神田左京著『ホタル』矢島稔/H.ヴァイル著『シンメトリー』伊藤由佳理/P.レヴィ著『一確率論研究者の回想』舟木直久/米沢富美子著『猿橋勝子という生き方』高薮縁/森毅著『数の現象学』瀬山士郎/武谷三男著『戦争と科学』吉村功/E.キュリー著『キュリー夫人伝』石井志保子/Shun-Ichi Amari (甘利俊一)著『Differential-Geometrical Methods in Statistics』江口真透/上原六四郎著『俗樂旋律考』徳丸吉彦/C.ダーウィン著『ミミズと土』新妻昭夫/朝永振一郎著『日記・書簡(新装版)「滞独日記」』佐々木閑

7 礎――いくつになっても読み返す
C.ダーウィン著『種の起原』八杉貞雄/プラトン著『パイドン』納富信留/C.Linnaeus 著『Species Plantarum』大場秀章/D.O.ウッドベリー著『パロマーの巨人望遠鏡』黒田武彦/渡辺格著『人間の終焉』橳島次郎/寺田寅彦著『寺田寅彦全集』高橋裕/E.フッサール著『現象学の理念』竹田青嗣/ユークリッド著『ユークリッド原論』砂田利一

書評情報

RikaTan 2012年1月号
東京新聞(朝刊) 2011年11月20日
プレジデント 2011年11月14日号
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