顔をなくした数学者

数学つれづれ

微分幾何の研究で,世界的な業績を挙げた著者の初のエッセイ集.数学への深い思いを書き記す.

顔をなくした数学者
著者 小林 昭七
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 数学
刊行日 2013/07/30
ISBN 9784000052177
Cコード 0041
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 162頁
在庫 品切れ
微分幾何および複素多様体の研究で,世界的な業績を挙げた著者の初のエッセイ集.「数学徒然」と題して書き留められた小片は,けっきょく完成を待たず遺稿となった.数学者の実像や数学記号がどんなふうに生まれたか,また「数学の美」とは何かといったエッセイから,数学および数学者に対する著者の深い思いが伝わってくる.


■編集部からのメッセージ
 微分幾何および複素多様体の研究で,世界的な業績を挙げられた小林昭七先生が,2012年夏に急逝された.本書の原稿は,もともと科学ライブラリーの1冊として用意されていたものである.数学に関連するさまざまなトピックを小林先生なりの見方で料理して,広く一般の読者に,数学の面白さ,数学的思考の楽しさを味わってもらおうという企画であった.
 2012年の春,先生から一束の書類が届いた.同封された手紙には,「まだ未完成であり,もう少し推敲したいので,まだ最終稿にはなっていない.この年末には仕上げるつもりだが,現状報告を兼ねて,原稿のコピーをお送りしておく」という内容が記されていた.見覚えのある字面で原稿用紙に書き込まれた原稿は一読して,いかにも小林先生の人柄を感じさせた.1日も早い完成を心待ちにしていたさなか,突然の訃報が飛び込んできた.一束のコピーが,けっきょく遺稿となってしまった.
 ご家族や関係の方々と相談し,先生から未完成といわれた原稿ではあるが,こうして単行本として出版することができた.多くの方々に感謝したい.
Ⅰ 数学つれづれ
純粋と応用/数学の美を感じさせる証明/なぜ10進法なのか/山を愛した数学者/便利な世の中/奇人・変人が多いのか,数学者には?

Ⅱ 数学史余聞
数学一家/数学者の名と顔/顔を失った二人の数学者/微分記号の誕生/テンソル解析の記号/名は二人

Ⅲ ギリシャ数学の魅力
古代ギリシャの数学をたずねて/リンカーン大統領とユークリッド/ユークリッドの原論とは何か/2次方程式を解く/ピラミッドとプリズム/地球の大きさを測った男/アルキメデスとキケロ/アルキメデスの墓碑に書かれた図形/無限小を考える/アルキメデスと球の体積

Ⅳ 数学と教育
数学サークル/国際数学者会議(ICM)/ICMと私/数学者と政治家/数学教育

[解説]
昭七兄の思い出(小林久志)
編者後記にかえて(落合卓四郎)
《資料》前期課程数学の外部評価報告書(報告者:小林昭七)(一部抜粋)

略年譜
小林昭七(こばやし しょうしち,1932-2012)
1932年甲府生まれ.1948年第一高等学校入学.制度変更にともない翌49年より東京大学教養学部1年に入学.53年に同大学理学部数学科卒.同時に,フランスに政府給費留学生として1年間留学.すぐに帰国せず,ワシントン大学に助手として2年間採用.任期後の56~58年プリンストン高等研究所,58~59年MIT,60年からカリフォルニア大学バークレー校に移る.94年に退職.その後も同大学院教授,および慶應義塾大学等の客員教授として,微分幾何学の研究および教育に従事.2012年8月29日に心不全のため死去.詳細はウェブサイト( http://www.jp.ShoshichiKobayashi.com )を参照.
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