科学ジャーナリズムの先駆者

評伝 石原純

なぜ科学の真髄や最先端の成果を伝えることが大切なのか.科学啓蒙に尽力した波瀾の人生を通して考える.

科学ジャーナリズムの先駆者
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著者 西尾 成子
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 物理学
刊行日 2011/09/28
ISBN 9784000052139
Cコード 0042
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 366頁
定価 本体3,400円+税
在庫 在庫あり
石原は,日本初の相対論と量子論の論文を書いた理論物理学者だった.日本にアインシュタインを紹介,その著作は湯川秀樹や朝永振一郎を物理学の世界に導いた.多くの科学啓蒙書や解説書を執筆し,戦中も身を呈して真の科学を訴え続けた.彼の波瀾の人生を通して,科学の真髄や最先端の成果を広く伝えることの大切さを考える.


■編集部からのメッセージ
 湯川秀樹や朝永振一郎といったノーベル科学者を,その著作で物理学の道に導いた「科学の巨人」をご存知ですか? その名は石原純いしわらじゅん.アインシュタインとインフェルトによる『物理学はいかに創られたか』(岩波新書)の翻訳者だといえば,おわかりになる方もおいででしょう.1922年にアインシュタインが来日した1カ月半,ほとんど同行して通訳などを務めました.岩波書店との縁は深く,『岩波 理化学辞典』刊行(1935年)および,雑誌『科学』の創刊(1931年)に編集主任として携わり,敗戦直後に亡くなるまで,批判的精神に満ちた多くの論文で『科学』を牽引してきました.本書はこの石原の生涯を,豊富な資料とていねいな取材で追ったはじめての評伝です.
 石原の人生は波乱に満ちています.
1881年,東京に生を受け,貧しい生活のなかで苦学して東京帝国大学を卒業.東北帝国大学助教授となりヨーロッパに留学,アインシュタインなど超一流科学者の指導を受け帰国,その後,教授となり,日本の物理学の指導者として期待されます.しかし,恋愛事件により大学を退職,科学ジャーナリストに転身します.1947年にその生涯を閉じるまでは,科学論,科学教育論,科学政策論,文明論,社会批評,恋愛論……と,実に広い範囲の著作活動を活発に行います.第二次世界大戦中はファシズムに抗し,戦時科学振興政策を批判,厳しい執筆制限を受けました.そして敗戦直後の45年9月,10月の『科学』の巻頭言に「新しい世界観の建設のために科学者の積極的な協力が要望される」と書き,国内の科学者を励まします.しかし同年12月,占領軍のジープにはねられ重傷を負って,47年,意識が正常に戻らないまま死去したのでした.
  石原は,日本初の相対論と量子論の論文を書いた,理論物理学研究の先駆者でもあります.多くの論文を発表し,学士院恩賜賞も受けています.科学ジャーナリストとしての批評は,いまこの時代にこそ,改めて読まれるべき主張を多く含みます.歌人としても,新短歌論の提唱者として知られています.しかし,ともに『科学』の創刊に携わるなど,同時期に同様の活躍をした寺田寅彦に比べ,あまりにも知られていません.
  2011年は石原の生誕130年,かつ『科学』創刊80周年です.この記念の年に,第一級の理論物理学者,科学ジャーナリストとして,石原純が再評価されることを期待します.
はじめに――なぜいま石原純か

第1部 物理学者への道
 1 小・中学校時代
 2 第一高等学校時代
 3 理論物理学科へ
 4 物理も歌も
 5 父の死
 6 理論物理学科卒業
 7 大学院時代

第2部 日本初の理論物理学者誕生
 8 理論物理学者として自立する
 9 最初の相対論に関する論文
 10 陸軍砲工学校時代
 11 金属電子論の研究
 12 東北帝国大学へ,そして最初の量子論研究
 13 ヨーロッパ留学前の相対論研究

第3部 ヨーロッパ留学から東北帝国大学教授辞任まで
 14 ヨーロッパ留学――ドイツへ
 15 ヨーロッパ留学――ミュンヘンとベルリン
 16 ヨーロッパ留学――チューリヒ,ロンドン,そして帰国
 17 留学中・留学後の相対論研究
 18 一般化量子条件とその周辺
 19 帝国大学教授を辞任する

第4部 科学ジャーナリストとして
 20 科学ジャーナリストへの転身
 21 『相対性原理』と『アインスタイン教授講演録』
 22 現代物理学の普及活動
 23 『岩波講座 物理学及び化学』刊行と雑誌『科学』の創刊
 24 『岩波 理化学辞典』の刊行
 25 科学論的考察へ

第5部 戦時科学新興政策批判から敗戦直後の急逝まで
 26 ファシズムに抗して
 27 戦時科学振興政策を批判する
 28 科学的精神と科学教育論
 29 志半ばに――敗戦直後のよびかけ

 おわりに
 文献と注
 参考文献
 略年譜
 索 引
西尾成子(にしお しげこ)
1935年東京生まれ.お茶の水女子大学理学部物理学科卒業.日本科学技術情報センター所員,日本大学理工学部教授などを経て,現在,日本大学名誉教授(理学博士).著書に『現代物理学の父ニールス・ボーア』『こうして始まった20世紀の物理学』,訳書に『ニールス・ボーアの時代』『歴史をつくった科学者たち』(共訳)など.

書評情報

日本物理学会誌 第68巻第3号(2013年3月)
全科協ニュース Vol.42 No.6(2012年11月)
山形新聞(朝刊) 2012年8月23日
毎日新聞(夕刊) 2012年4月25日
公明新聞 2011年12月26日
数学セミナー 2011年12月号
朝日新聞(朝刊) 2011年11月13日
読売新聞(朝刊) 2011年11月13日

受賞情報

第15回桑原武夫学芸賞(2012年)
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