原子・原子核・原子力

わたしが講義で伝えたかったこと

原子・原子核について基礎から学び,原子力への理解を深めるための物理学入門.学び直しにも最適の書.

原子・原子核・原子力
著者 山本 義隆
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 物理・化学
刊行日 2015/03/24
ISBN 9784000053297
Cコード 0042
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 250頁
在庫 品切れ
福島の原発事故後,「α線」「セシウム」といった言葉が日常に入り込んでいる.一人ひとりが避けて通れない問題をなおかかえる現在,自分でものごとを判断するために,科学者の発見や研究の歴史に関するさまざまな話題をまじえ,原子・原子核について基礎からやさしく解説する物理学の入門書.


■著者からのメッセージ
 別段,原子や原子核について知らなければ知らないでいいのかとも思われますが,やはり福島の原発事故があって,放射性物質が撒き散らかされ,「α線」だとか「セシウム」とか,そういう言葉が新聞に溢れて,はっきりいって,日常的な生活にそういう言葉が入ってしまっているわけです.それはもはや一人ひとりにとって避けて通れないことなのです.だから,自分でものごとを判断するために,最低限は知っていなければならないということなのです.
 世の中にはいろんな問題があります.人類のこれまでの歴史で,結局世の中の仕組みとして,一番良さそうな仕組みは,民主主義ということになりました.……だけど民主主義というのはけっこう大変で,「誰かにお任せ」では済まないことがあります.ときには自分の頭で考えて判断することが迫られるわけです.……事柄によっては,専門家と自称している人たちに任せておけばとんでもない結末になることもあるということは,今回の原発事故でよくわかりました.結局,勉強する目的は何かというと,いろんな問題について,自分で考えて,自分の言葉で意見を言うことができるようにするためなのです.
(「はじめに」・「あとがき」より)


■内容紹介
 原子・原子核について基礎から学び,原子力について理解を深めるために,科学者の発見や研究の発展を歴史的にたどりながら,ていねいに解説する,物理学の入門書.
 福島原発の事故以来,後の世代にとてつもなく大きな負債をつくってしまった我々に何ができるか,問い続けてきた著者が,2013年に駿台予備学校千葉校で行なった記念講演(開校20周年,ボーア原子模型100周年)に基づくもので,やさしい語り口で記されている.
はじめに

第1章 原子論のはじまり
1.1 化学原子論
1.2 歴史的な語りについて
1.3 力学のおさらい
1.4 気体分子運論

第2章 イオンと電子の発見
2.1 重力をめぐって
2.2 電磁気学の初歩
2.3 電気分解の法則
2.4 電子の発見

第3章 X線と放射線の発見
3.1 レントゲンとX線の発見
3.2 ベクレルとキュリー夫妻
3.3 放射線をめぐって
3.4 放射線の人体への影響

第4章 アインシュタインと光子仮説
4.1 光電効果をめぐって
4.2 放射線のエネルギー
4.3 光子の波動性と粒子性
4.4 アインシュタインについて

第5章 原子モデルをめぐって
5.1 有核原子
5.2 原子の古典モデルとその問題点
5.3 ボーアの原子モデル
5.4 一般の原子について
5.5 モーズリーの悲劇

第6章 原子核について
6.1 放射性元素の崩壊
6.2 核物理学のはじまり
6.3 核力と核エネルギー
6.4 核分裂と連鎖反応の発見

第7章 原爆と原発
7.1 原子爆弾について
7.2 原発の事故について
7.3 使用済み核燃料の問題
7.4 原発と環境汚染・被曝労働
7.5 放射線の危険について

あとがき
索引
山本義隆(やまもと よしたか)
1941年大阪生まれ.64年東京大学理学部物理学科卒業,同大学大学院博士課程中退.現在,学校法人駿台予備学校勤務.科学史家.『磁力と重力の発見』全3巻(みすず書房,2003)でパピルス賞・毎日出版文化賞・大佛次郎賞受賞.
著書:『ニュートンからラグランジュへ』(日本評論社,1997),『一六世紀文化革命』全2巻(みすず書房,2007),『福島の原発事故をめぐって――いくつか学び考えたこと』(同2011),『世界の見方の転換』全3巻(同2014),『新・物理入門 増補改訂版』(駿台文庫,2004)など
編訳書:『ニールス・ボーア論文集1 因果性と相補性』,『ニールス・ボーア論文集2 量子力学の誕生』(岩波文庫)

書評情報

週刊金曜日 2015年8月21日号
文藝春秋 2015年7月号
北海道新聞(朝刊) 2015年6月21日
週刊読書人 2015年6月12日号
週刊朝日 2015年6月5日号
朝日新聞(朝刊) 2015年5月24日
HONZ 2015年5月10日掲載
ページトップへ戻る