原発と震災

この国に建てる場所はあるのか

原発の立地および耐震性の問題を中心に,原発やエネルギーの今後を考えるたしかな視座を提供する.

原発と震災
著者 「科学」編集部
ジャンル 書籍 > 単行本 > 宇宙・地球科学
書籍 > 自然科学書 > 人物・社会
刊行日 2011/07/07
ISBN 9784000053235
Cコード 0044
体裁 B5 ・ 並製 ・ 142頁
在庫 品切れ
原発の耐震性は,何が想定され,どのように審査されてきたのか.その立地は科学的見地からどのように評価されるのか.過去のトラブルと被災の上に,ついに苛酷事故に直面する今こそ,これまでの議論を精査し,原発につきまとうリスクを直視すべき時である.近年の雑誌『科学』から記事を精選し,判断のためのたしかな視座を提供する.


■編集部からのメッセージ
 2011年3月11日,マグニチュード9という巨大地震が東日本を襲い,引き続く福島第一原子力発電所の事故により,地震や津波に対する日本の原発の脆弱性が明るみに出ています.今こそ,あらためて原発の耐震性を,さらには原発の設置の可否そのものを,問い直すべき時ではないでしょうか.
 雑誌『科学』ではこれまで,原子力や地震に関する論文を継続的に掲載してまいりました.石橋克彦氏の「原発震災」(1997年)をはじめとするそれらの論文は,昨今の原発関連報道の中でたしかな存在感を示しています.「想定外」という言葉をよく耳にしますが,原発の耐震性については議論がなかったのではなく,政府の議論の中で真剣に取り扱われてこなかっただけなのだということを,これらの論文は如実に示しています.
 そこで『科学』編集部では,原発の耐震性および立地を考える記事を中心に,近年の原子力関連の記事から精選し,1冊にまとめることにいたしました.
 日本のエネルギーのありかたを根本的に見直すことが今,求められています.本書がその参考となれば幸いです.
――「はじめに」より
(カッコ内は雑誌『科学』の初出年・号)

第1章 原発と震災――この国に建てる場所はあるのか
原発震災――破滅を避けるために(1997.10) 石橋克彦
原発耐震安全審査における活断層評価の根本的問題――活断層を見逃さないために何が必要か?(2008.1) 鈴木康弘・中田高・渡辺満久
原子力関連施設周辺における活断層評価への疑問(2009.2) 渡辺満久
原子燃料サイクル施設を載せる六ヶ所断層(2009.2) 渡辺満久・中田 高・鈴木康弘
柏崎刈羽原発の再開ありきを疑う(2007.11) 山口幸夫
柏崎刈羽原発7号機は運転再開できるのか(2009.4) 井野博満
科学を踏みにじった政府の柏崎刈羽原発「耐震偽装」(2009.4) 石橋克彦
地元の疑問に答えているか:柏崎刈羽原発7号機の起動・再開問題(2009.4) 山口幸夫
浜岡原発はなぜ危険か(2007.11) 田中三彦
原発事故シミュレーション――〈信頼〉の担保(2008.10) 小出裕章
<コラム>原発の電気は誰が使っているのか(2007.11) 西尾 漠

第2章 原子力発電所の耐震設計審査指針改訂の諸問題
原子力発電所の耐震設計審査指針改訂の諸問題(第1回)指針改訂の審議を振り返る(2007.8) 石橋克彦
原子力発電所の耐震設計審査指針改訂の諸問題(第2回)基準地震動を考える(1)および2007年新潟県中越沖地震(2007.9) 石橋克彦
原子力発電所の耐震設計審査指針改訂の諸問題(第3回)基準地震動を考える(2)とまとめ(2007.11) 石橋克彦
<コラム>原発で地球温暖化は防げるのか(2007.11) 西尾 漠

第3章 信頼を揺るがす諸問題
“老朽化”原発の課題 (2007.11) 井野博満
高レベル放射性廃棄物の地層処分問題 (2007.11) 藤村 陽
データ改ざん・隠蔽事件から考える (2007.11) 伴 英幸
<コラム>原子力発電の後始末にいくらかかるのか (2007.11) 西尾 漠
<コラム>原子力施設は軍事攻撃の目標とならないか (2007.11) 西尾 漠

第4章 核燃料サイクル再考――賢明な選択のために
遠のく高速増殖炉と無意味なプルサーマル――核燃料サイクルに関連する安全問題1 (2007.11) 小林圭二
再処理がもたらすもの――核燃料サイクルに関連する安全問題2(2007.11) 小出裕章
プルサーマルの論点――軽水炉でのMOX利用計画を歴史的視点から検証する(2010.2) 吉岡 斉
日本のプルトニウム需給バランス――現状と将来の分析(2010.2) 勝田忠広
各国の増殖炉計画の経験と現状からの考察――IPFM レポートから(2010.2) フランク・フォンヒッペル(翻訳: 田窪雅文)
日本の再処理につきまとう亡霊――六ケ所方式の「核拡散抵抗性」という認識の怪(2011.4) 田窪雅文
<コラム>軍事利用と平和利用は切り離せるのか(2007.11) 西尾 漠

第5章 検証:原子力政策
だれが原子力政策を決めるのか(2007.11) 尾内隆之
原子力政策の現在を検証する(2007.11) 吉岡 斉
<コラム>原発がないと電気は足りないのか(2007.11) 西尾 漠
(50音順)
石橋克彦(神戸大学名誉教授)
井野博満(東京大学名誉教授)
尾内隆之(流通経済大学法学部)
勝田忠広(明治大学法学部)
小出裕章(京都大学原子炉実験所)
小林圭二(元京都大学原子炉実験所)
鈴木康弘(名古屋大学大学院環境学研究科)
田窪雅文(ウェブサイト「核情報」主宰)
田中三彦(サイエンスライター)
中田 高(広島大学名誉教授)
西尾 漠(原子力資料情報室共同代表)
伴 英幸(原子力資料情報室共同代表)
フランク・フォンヒッペル(プリンストン大学)
藤村 陽(神奈川工科大学)
山口幸夫(原子力資料情報室共同代表)
吉岡 斉(九州大学副学長)
渡辺満久(東洋大学社会学部)
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