韓国メディアの現在

市民参加型のオンライン新聞などが登場し,激変する韓国メディアの実態を豊富なデータと取材調査で浮き彫りにする.

韓国メディアの現在
著者 鈴木 雄雅 編著 , 蔡 星慧 編著
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2012/01/27
ISBN 9784000258203
Cコード 0065
体裁 A5 ・ 並製 ・ カバー ・ 222頁
在庫 品切れ
いま韓国のメディアは,政府主導のグローバル化戦略,韓流ブームの再興を目指すコンテンツ振興政策が進行する中で,オンライン新聞などネットを活用した市民参加型の新たなメディアが登場し,その姿を激変させている.その韓国のメディアの実態を,気鋭の韓国人研究者たちが豊富なデータと取材調査によって,浮き彫りにしてゆく.

■著者からのメッセージ

 メディアは政治,社会,経済,文化に密接に関わり,メディアそのものがパワーポリティックスを持つこともある.本書ではそのような実態について,とりわけ,2000年以降の韓国メディアをめぐる変動と課題,ビジョンを通して考えてみたい.この10年間は韓国のメディア産業がもっとも激しい変動を見せた時期だったからである.日本では韓国メディアの現状を紹介する文献は多く見られるが,メディア関連の共同研究の一部に限られた内容にとどまっていると思われる.本書では全体像としての韓国メディアの現在を伝えることができたら幸いである.
(本文より)

■編集部からのメッセージ

 韓国は60年代から80年代に渡る長期軍事政権の言論弾圧に対抗し,民主化を遂げ,新たな転換期を迎えた.メディア産業においてはIMF以降政策的に進めてきたIT革命の波とともにデジタル化の進展が著しく,オンライン新聞,放送と通信の融合が進む.出版界では2003年以降日本小説ブームによる日流が広がり,日本の出版コンテンツに対する関心が高まっている.開放の壁が厚かった日本の大衆文化に対する閉鎖性は段階的な開放政策により,今や映画,ドラマ,音楽,アニメを踏まえた日本のポップカルチャーを楽しむ若者たちが増えつつある.韓国のメディア産業を巡る制作や流通の環境は国内でもグローバル的にも大きく変化しつつあり,トランスナショナルな時代を迎えている.
 本書は,韓国のメディアの新聞,放送,出版,広告,大衆文化に渡って,その歴史,産業構造,制度的議論,現状,今後の課題を,現場での取材や豊富な調査データを駆使しながら,多面的に浮き彫りにする.
はじめに―アジアの中の韓国メディア 鈴木 雄雅

序章 韓国メディアのパワーポリティックス 蔡 星 慧
1近代メディアの成立
2解放後の社会変動と歴代政権のメディア政策
3メディア産業政策を実行する関連行政,団体
4ポスト市民社会―メディアの新たなパラダイムを考える

第1章 新聞メディア産業 千 命 載
1新聞史の概観
2新聞産業の現況と構造
3新聞法制とジャーナリズム
4新聞界をめぐる課題と展望

第2章 放送メディア産業 白 承
1放送メディア史
2放送産業の現況
3放送産業のビジネス戦略の多様化
4放送コンテンツの不公正取引問題
5放送産業に対する政策的対応

第3章 出版メディア産業 蔡 星 慧
1出版メディア史
2出版産業の構造と政策
3日韓出版コンテンツの交流
4出版産業のビジョン―業界主導,トランスナショナルなコンテンツ交流を考える

第4章 広告メディア産業 蔡 星 慧
1広告産業の変遷
2構造的特性と現状
3広告政策と制度
4デジタルメディアと広告市場
5課題と展望

第5章 コンテンツ産業としての大衆文化 蔡 星 慧・白 承
1韓国における大衆文化史
2放送コンテンツ
3映画
4漫画・アニメ
5トランスナショナルな文化コンテンツへ

終章 韓国メディアの近未来 蔡 星 慧
1歴史的特殊性を越えて
2政策・制度的議論を可視化する時
3長期的にアジアのソフトパワーを
4韓国メディアの未来

資料 メディア史年表・メディア関連機関・メディア関連法
鈴木 雄雅(すずき ゆうが)
1953年生まれ.上智大学大学院修了.新聞学博士(2003年度,上智大学).上智大学文学部新聞学科講師,助教授を経て2001年から教授.新聞学科長,文学研究科新聞学専攻主任,文学研究科委員長などを歴任.専門はジャーナリズム史,国際コミュニケーション.主著に『ゼミナール 日本のマス・メディア【第2版】』(日本評論社)など.
蔡 星 慧(チェ・ソンヘ)
1970年韓国大邱市生まれ.新聞学博士(2006年度,上智大学).上智短期大学・上智大学・東京情報大学の講師を経て,2011年現在学習院女子大学・恵泉女学園大学・昭和女子大学・実践女子短期大学にて講師職.専門は出版,マス・コミュニケーション.主書に『出版産業の変遷と書籍出版流通』(出版メディアパル)ほか.
千 命 載(チョン・ミョンゼ)
1971年韓国生まれ.新聞学博士(2010年度,上智大学).上智短期大学非常勤講師(2006~2008年)と立教大学兼任講師(2009~2010年)を経て,2011年から韓国社団法人メディア戦略研究所メディア産業政策チーム長.専門は法とマス・コミュニケーション.主著に『韓国の放送法』(NHK放送文化研究所)ほか.
白 承 (ベック・スンヒョック)
1974年韓国生まれ.新聞学博士(2009年度,上智大学).法政大学現代法研究所研究員(2008~2010年),志大学と鮮文大学講師(2010年)などを経て2011年から韓国コンテンツ振興院専任研究員.専門はデジタル社会とコミュニケーション.主著に『通信・放送融合による情報市場のバリューチェーンの変化』(国会科学技術情報通信委員会)ほか

書評情報

週刊読書人 2012年3月23日号
出版ニュース 2012年3月中旬号
東京新聞(朝刊) 2012年2月25日
日本出版学会会報 132号(2012年2月)
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