駆けぬける現代美術

1990-2010

朝日新聞の美術担当記者が百本余りの記事を精選し,「同時代の美術」20年間を振り返るガイドブック.

駆けぬける現代美術
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著者 田中 三蔵
ジャンル 書籍 > 単行本 > 芸術
刊行日 2010/12/15
ISBN 9784000257961
Cコード 0070
体裁 四六 ・ 並製 ・ 254頁
定価 本体2,700円+税
在庫 在庫あり
「美術は進歩しないが,拡大する」「美術の歴史は作家だけではなく,享受者がともに作る」と確信する朝日新聞の美術担当記者が,書き続けてきた1500本の記事から,百本余りを精選.「近代の見直し」「制度」「女性」「国際/アジア」「拡大」などに分け,「同時代の美術」20年間をざっくりと振り返るガイドブック.

■著者からのメッセージ

新聞記者のあり方について,ことあるごとに考えてきました.ことに,私が勤めているような一般紙で,「美術」という専門領域を持つ場合に,どんなスタンスで取材・執筆したらよいのか.
 入社して17年,念願のその美術担当になった1991年,とりあえずの結論をだしました.まず,高校生くらいから高齢者までの不特定多数の読者と美術を結ぶことが使命である,と.そして,はっきり像を結ばない読者を,心の中で「幻の大衆」と呼び,その人たちが美術界の現況を知るための「ガイド」役を果たそうと.
 展覧会を紹介し評する「展評」欄を書くため,「クリティック=批評家」的になる記者が多いことに対して批判的だった上司の忠告も参考にしました.
 具体的には,高齢の母や,中学・高校時代の同級生でサラリーマンや自営業者,専業主婦になっている人たちの顔を思い浮かべて書きました.聞き慣れない専門用語には簡単な説明を加えるか,思い切って省く.美辞麗句の羅列や難解なレトリックに流れることは控える.批評性はひそかに潜り込ませ,平明な表現,文体を心掛ける.それを原則としたのです.
 それから約20年.自戒が揺れ動いたこともありましたが,その都度,原点にもどろうと努めてきました.そんな思いで書いた,約1500本の記事から選んだ107本.定点観測者の目に映った大きな流れの一端をのぞいていただければ幸いです.
(田中三蔵)

■編集部からのメッセージ

目星をつけた著者と面会し,話し合いを重ねて企画提案にいたるまでは,スリリングな日々である.特に,いつも席に座っているわけではない新聞記者となると,とてもつかまりにくく,企画の話もなかなか進まない.時々,不安で胃が痛む……などと記すような苦労談は,残念ながらこの本にはない.著者の田中三蔵さんと私は,大学の同級生同士.小さな大学だったので,家族的とも言えるような濃い関係の日々で,卒業後も,細く長くつきあいは続いて,その期間は,すでに今までの人生の3分の2に及ぶ.
 学生時代は,ともに「実験映画製作部」に所属していた.友人の企画で,三蔵さんを主人公とするあやしい16ミリ映画をつくりに新島に行ったこともある.あのフィルムは,今は誰が持っているのかなどと,つい回顧的な気分になってしまう年齢だが,この『駆けぬける現代美術1990‐2010』も,結果として回顧的な内容に仕上がった.本書の再録記事につけられた〈三蔵記者ひとこと〉を読んでいただければわかるように,70年代に「概念芸術」を追っていた三蔵さんの中に埋め込まれた「現代美術」への関心が,本書のタイトルにも色濃く反映されているのである.
 元同級生の本を出すのは,ちょっと反則のような気がして,企画提案をするのも気が引けたものだが,刊行後だから白状してしまおう.
(編集部:桑原涼)
前書きにかえて

序章 前衛バカ伝説
第一章 近代の見直しと再評価
第二章 揺らぐ土台/美術館・博物館
第三章 女性作家群の開花と主導
第四章 進展する国際化/アジアでの立ち位置探る
第五章 加速度を増した拡大
終章 回顧の回顧

    後書きにかえて

田中 三蔵(たなか・さんぞう)
1948年生まれ.東京芸術大学美術学部芸術学科卒業後,朝日新聞社入社.高松支局,大阪本社,東京本社学芸部,アエラ発行室を経て,学芸部編集委員.現在,朝日新聞東京本社文化グループ専門シニアスタッフ,日本大学芸術学部大学院非常勤講師,女子美術大学大学院講師.

書評情報

月刊水墨画 2011年10月号
図書新聞 2011年4月2日号
朝日新聞(朝刊) 2011年2月13日
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