水越武写真集 日本の原生林

水越武写真集 日本の原生林
著者 濱谷 浩 序文 , 中尾 佐助 本文 , 濱谷 稔夫 解説
ジャンル 書籍 > 単行本 > 写真
刊行日 1990/11/30
ISBN 9784000080514
Cコード 0072
体裁 A4変 ・ 160頁
在庫 品切れ
日本列島に収斂する様々な気候帯,四季の変化,高低の起伏は,多様な森林相を生みだした.自然と人間の歴史にかかわって年々衰退と変貌をかさね,今や山岳,離島,社寺林等にわずかに存在するばかりの原生林の貴重な記録.

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私は山好きなこともあって,写真の世界に入って最初に手掛けたテーマが山だった.それがいつ頃からか厳しい自然環境にある生きものたちに強くひかれるようになった.彼らが死と隣り合わせた生活環境でひたむきに生きる姿に,私は生命の美しい輝きを見て,いつも強い感動を受ける.近年,地球規模の環境問題に社会的な関心がたかまり,森林保護の必要性が叫ばれている.しかし現実には悲しいことに森林の破壊はますます厳しくなり,原生林もどんどん姿を消している.今や原生林も,われわれ人間が作りだした厳しい社会環境のなかに立たされている生き物といえよう.
 厳密にはもはや原生林といえるような森林は現在の日本には存在しない.しかし,ほとんど人間の影響を受けていない自然林を原生林と見なすならば,わずかではあるが日本各地にはまだ点々と残されている.それを写真で記録することが私の狙いであり,それもたんに資料としての記録で終わらせたくなかった.
 山には慣れているとはいえ,終日道もない森林のなかを歩くのは辛いことでもあった.しかし,自然の奥深い懐に踏み込む喜びがあった.南北ほぼ3000kmにわたる日本列島の植生は複雑で森林は多様であり,季節による彩りは変化に富み,つねに新鮮な印象を受けた.森林は力強い生命力を持つと同時にきわめて繊細な面ももち,不思議な魅力を秘めた世界でもある.
(【「原生林を追いかけて」 水越 武】より)

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左:宮城県,船形山,ブナ/右:山形県,鳥海山,ブナ林




左:長野県,北八ヶ岳縞枯山/右:山形県,蔵王山,樹氷




左:北海道,十勝川源流部/右:北海道,阿寒,ペンケ・パンケ




左:北海道,大雪山緑岳/右:大雪山白雲岳




左:鹿児島県,屋久島/右:鹿児島県,屋久島,ヤクシマシャクナゲ
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