パッチギ!的

世界は映画で変えられる

人を隔てる心の壁,古いビジネスモデル.壁があるなら乗り越えよう.注目を集めるキーパーソンが熱く語る.

パッチギ!的
著者 李 鳳宇
ジャンル 書籍 > 単行本 > 芸術
刊行日 2007/06/05
ISBN 9784000244398
Cコード 0074
体裁 四六 ・ 並製 ・ 238頁
在庫 品切れ
『シュリ』を日本で大ヒットさせ韓流ブームの仕掛け人となり,各国のすぐれた映画を配給,『月はどっちに出ている』『パッチギ!』『フラガール』で日本映画をゆさぶり続ける風雲児のルーツは,京都でケンカと映画に明け暮れた青春時代にあった.たった一人で会社を興してからのさまざまな出会い,成功と失敗,信念を詰め込んだ書き下ろし.

■著者からのメッセージ

この18年の間に製作も含めて150本以上の映画に関係してきたけれど,果たして僕の中で何が変わり,何が変わらなかったのだろう.いまそれを自分自身が一番知りたいと願っている.やることなすことすべてが無謀なチャレンジだったことだけはわかっている.沢山の人を巻き込み,犠牲にしてきた.数々の失敗と試行錯誤を繰り返してきた.
 ハッキリ言えることは,幸運にも人に恵まれ,作品に恵まれ,誰にも媚びずにやってこられたということだ.でも果たしてこれから先も,僕たちのようなインディペンデントな会社が,映画業界で生き残っていられるのだろうか?
 ちなみにシネカノンという社名は,ラテン語のSINE QUA NON(絶対不可欠な)を「映画」のCINEに引っかけた洒落言葉で,せっかく立ち上げた会社を潰したくない一心で付けた造語だ.幸いまだ存続しているから,そんな願かけも功を奏したに違いない.
 僕は多分これからも映画を生業にしていくのだろう.果たして僕の選んだ道はどこまで続いているのだろう.手探りだがもう少し前へ進んでみよう,そして前に進むために少し振り返ろう.
(本書「まえがき」より) 
プロデューサーとは?
 プロデューサーとは何かを決める人です.監督を決め,脚本を決め,配役を決め,予算を決め,公開劇場や日程を決める作業がまず第一です.その上で,クリエイティブな部分での確固たる方向性をもっているべきでしょう.いずれにしても才能を見極める才能が,最も必要です.
 よく製作の一番大変な仕事はお金集めにあるように言われますが,誰でも頑張れば一度ぐらいはお金を集めて映画を作れます.でも本当に大事なことはお金を集めることよりも,集めたお金を返すことです.少しでも余計にお金を返すことができたら,その人はプロです.集めるだけはアマチュアです.
監督とは?
 監督とは,集中力のある現場の指揮官です.でもそれ以前に人間が好きであってこそ,出来るパートだと思います.人の感情を引き出し,肉体をコントロールし,ある人物を世に創りだすのだから.
 私にとっては,もっとも信頼のおける同志であって欲しいものです.
俳優とは?
 俳優とは,さまざまな人生を生きられる羨ましい職業だけど,99%待つ仕事なので,忍耐力と瞬発力が同時に必要だと思います.
 書くことよりも読むことが好きな人が向いているようです.他には,顔よりも,声が素晴らしい人が好きです.名優と呼ばれる俳優の声は,みな特徴的で魅力的です.
(本書より)
まえがき
1 『パッチギ!』風雲録
  始動/万寿寺での出来事/リアルな在日の青春像を求めて/兄の死/『パッチギ!』の登場人物たち――アンソン/同級生たちの面影/番長チェガル・チョン/特殊な街,京都での撮影/完成は宣伝の始まり/宣伝不可能な映画/壁があるなら乗り越えよう
2 韓流ことはじめ
  『風の丘を越えて―西便制』の衝撃(93年)/韓国領事館での議論と緊張/人生で一番短い契約書/銀座テアトル西友の新記録/『シュリ』を買い付ける/東京国際映画祭での上映から,拡大興行へ
3 映画を観てきた,観せてきた
  すべてはここから――『アマチュア』
  完璧な映画――『穴』
  初めてのプロデュース作――『月はどっちに出ている』
  キューバ映画に惚れ込む!――『苺とチョコレート』
  夢と誇りと音楽――『ブラス!』
  最大の賭け,最大の失敗――『チキンラン』
  『ビリケン』から『KT』へ――阪本順治との仕事
  巨匠のつくりだすドラマ――『北京ヴァイオリン』
  心に突き刺さる,韓国映画の一つの到達――『オアシス』
  映像詩人,是枝の視点――『誰も知らない』
  サッカー好きの僕が選んだ一本――『ジダン 神が愛した男』
  深く敬愛する監督ケン・ローチ――『麦の穂をゆらす風』
  『フラガール』,頂点に立つ
4 『パッチギ!LOVE&PEACE』ができるまで
  『パッチギ!』の反響から,『LOVE&PEACE』へ/登場人物たち,そして枝川という場所/2007年と戦争映画/「本名で生きられない」というタブー/勇気を与えてくれたパリ経験/『LOVE&PEACE』の編集,ダビング,公開
狼女
映画評1987~1989 2002~2003
あとがき
シネカノン製作・配給全作品
李鳳宇(リ ボンウ)
1960年生まれ.京都府出身.映画プロデューサー.映画製作・配給会社シネカノン代表.朝鮮大学校外国語学部卒業後,84年にパリに留学,シネマテークに通い詰め,映画を仕事とする決意を固める.帰国後の89年にシネカノンを設立,ポーランド映画『アマチュア』を皮切りに,世界各国の映画の配給を始める.93年の初プロデュース作『月はどっちに出ている』は,在日の主人公たちのリアルな姿を描いた刺激的な作品として話題をよび,内外の50以上の映画賞を受賞.以降,話題の日本映画を数多く製作.90年代半ば以降の『風の丘を越えて―西便制』,『シュリ』,『JSA』などの紹介・配給では,韓流ブームの火付け役ともなった.東京・銀座,渋谷,大阪,神戸,ソウルでの劇場経営も手がける.
主な著書に,『「月はどっちに出ている」をめぐる2,3の話』,『日本映画は再興できる』,『パッチギ!対談篇――喧嘩,映画,家族,そして韓国』(四方田犬彦氏との共著)など.
映画界への貢献を評価され,第29回日本アカデミー賞協会特別賞,第16回淀川長治賞などを受賞している.
http://www.cqn.co.jp/

書評情報

朝日新聞(be) 2014年2月8日
読売新聞(夕刊) 2007年8月22日
しんぶん赤旗 2007年8月5日
西日本新聞(朝刊) 2007年7月29日
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