上方落語の戦後史

上方落語滅亡の危機からの復興,隆盛までを,六代目松鶴,米朝,五代目文枝,三代目春団治を軸に綴る.

上方落語の戦後史
著者 戸田 学
ジャンル 書籍 > 単行本 > 芸術
刊行日 2014/07/30
ISBN 9784000259873
Cコード 0076
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 564頁
在庫 品切れ
昭和二十年代半ば,上方落語滅亡の危機に瀕し,四人の若手が立ち上がる.のちの四天王―六代目松鶴,米朝,五代目文枝,三代目春団治である.復興への努力と苦難,その後の隆盛までの道のりを,四天王を軸に師や弟子も絡めながら,豊富な資料に基づき詳細に綴る.読み物としても面白い,著者渾身の上方落語の戦後通史.


■著者からのメッセージ
 本書の執筆には,読売新聞連載を含めて,8年以上の年月を費やした.私の上方落語に関する著作の集大成のつもりで,執筆に取り組んだつもりだ.書籍化に当たっては,大幅加筆訂正を施したので,連載記事とは別のものになっていると思う.
 私は,十代の頃から落語を愛好し始め,二十代前半からは,芸界の人間として落語と関わって来た.そのため,四天王をはじめとする上方落語復興第一世代の師匠たちから,苦闘時代の話をあれこれと聞く機会に恵まれた.それらの幸運な経験と長年の芸界の人間としての見方によって,本書を執筆することが出来たのである.
 60年の歴史を紡いでみて,初めて分かったことも多かった.戦後復興には,上方落語界の人びとだけでなく,東京人の尽力もたいへん大きかった.正岡容,桂小文治,桂文楽……そして世代は違うが古今亭志ん朝.彼らの貢献なかりせば,今日のような上方落語の隆盛はなかっただろう.
 五代,六代の笑福亭松鶴が,上方落語復興への使命感を持ってバトンを繋いだのと同様に,三代,四代と繋がる林家染丸の貢献度もまた多大なものがあった.そして,四天王に続く第二世代では,笑福亭仁鶴が果たした役割はとてつもなく大きい.
 本書は,読者をタイムトラベルに誘うような構成になっている.はじめから意図していたわけではなく,書き上げてから気付いたのだが,頁を繰れば上方落語60年の主要人物たちに出逢える不思議な書籍に仕上がっていた.これは著者としては大いなる(嬉しい)誤算であった.
戸田 学


■編集部からのメッセージ
 本書の著者は,『いとしこいし 漫才の世界』,『桂米朝集成』,『随筆 上方落語の四天王』など,上方落語・漫才に関する編著書で定評があります.
 昭和になって「上方落語は滅びた」とまでいわれる危機的状況を迎えましたが,そのとき立ち上がったのが,後に四天王と称される六代目笑鶴亭松鶴,桂米朝,五代目桂文枝,三代目桂春団治でした.
 彼らはいかにして上方落語を復興させたのか,その努力と苦難とは? 今日の繁栄までの道のりとは? 著者の筆は,登場人物を活き活きと描き上げ,物語としても面白い仕上がりになっています.
 上岡龍太郎さんが,次のような推薦の言葉をお寄せくださいました.
〈これは戸田学とゆう現代の「太安麻呂」の手による,上方落語界の「古事記」だ.〉約560頁にもおよぶ,著者渾身の落語通史.ぜひ,お読みください.
序 肥田晧三
序に代えて 大西信行

第一章 戦後上方落語前史
島之内寄席の口上/上方落語の衰退/初代桂春団治/漫才の台頭/落語から漫才へ/作家,寄席文化研究家・正岡容

第二章 黎明期(昭和18~25年)
中川清/落語研究家・渡辺均/桂米朝,六代目笑福亭松鶴との出会い/四天王寺本坊/矢倉悦夫/桂米団治/二代目桂春団治/河合一/噺家勧誘第一号/松竹・白井松次郎の英断/四ツ橋文楽座/長谷川多持/竹内日出男の初舞台/日出男に続く若手の初舞台/「戎橋松竹」開場/桂米朝/「落語新人会」/「さえずり会」/「浪花新生三友派」~関西演芸協会設立/若手落語家赤貧時代/中井吉太郎の「九条たらちね会」/「桂米団治後援会」/二代目桂福団治襲名

第三章 凋落期(昭和25年~31年)
煩悩を振り分けにして西の旅/上方落語の定本/米団治の死/「春団治十三夜」/「宝塚若手落語会」/後の人間国宝,初めての二人会/二代目の退場/林家染丸/光鶴改め四代目笑福亭枝鶴・染語楼改め三代目林家染丸襲名/古老たち/桂小文枝誕生/「戎松落語日曜会」/「三越落語会」/文の家かしく改め三代目笑福亭福松襲名/「上方落語をきく会」

第四章 復興期(昭和32年~41年)
上方落語協会/「京都市民寄席」/興行会社,放送局の専属制/正岡容の逝去/三代目桂春団治襲名/森乃福郎/月亭可朝/古今亭朝太/桂福団治/「珍しい上方落語を聴く会」/二代目小春団治,三代目福団治襲名/東西若手落語家交流/「NHK上方落語の会」/花月亭九里丸逝く/六代目笑福亭松鶴襲名/幻の桂三木助襲名/無形文化財・林家トミ/仁鶴と小米/桂春蝶/桂朝丸/自安寺「上方ばなし若手会」/林家小染/『上方風流』/『天壇ゴールデンリクエスト』/『題名のない番組』/『お笑いとんち袋』/「なにわ芸術祭 上方落語名人会」/「実験寄席」

第五章 躍進期(昭和41~50年)
「桂米朝スポットショー」/林家染二/三代目旭堂南陵襲名/前田勇/「金比羅勉強会」/桂三枝/笑福亭鶴光/「桂米朝 上方落語の会」/『ハイ! 土曜日です』/朝日生命ホール「桂米朝独演会」/「上方落語をきく会」と『上方芸能』創刊/『ご両人登場』/LPレコード,速記本,富士正春『桂春団治』/露の五郎・月亭可朝の襲名/染丸の死/『オーサカ・オールナイト 夜明けまでご一緒に』/三代目桂文我襲名/SR/笑福亭福笑,月亭八方,笑福亭鶴三/「落語の位置」/「小米・春蝶二人会」/桂きん枝,桂文珍/林家トミ引退披露/労音寄席「桂米朝独演会」/仁鶴躍進/京都府立文化芸術会館「桂米朝独演会」/桂べかこ/笑福亭松葉/小咄で売り出す/『上方はなし』復刻/サンケイホール「桂米朝独演会」/『YTVサロン・上方芸能シリーズ』/朝日放送「1080分落語会」/笑福亭鶴瓶/「島之内寄席」/「橘ノ円都 桂米朝二人会」/「岩田寄席」/『オンワード落語百選』/『上方落語大全集』/笑クリエイト社・楠本喬章/「上方お笑い大賞」/演芸評論家/『桂米朝上方落語大全集』/LP『仁鶴古典落語独演会』/『六代目笑福亭松鶴 上方はなし』/「米朝十八番」/三人襲名/桂千朝,桂吉朝/『和朗亭』/「東西落語名人選」/持ちかえた扇どちらも宝物/米朝事務所設立/仁鶴の「上方お笑い大賞」受賞/『季刊 藝能東西』

第六章 隆盛期(昭和51年~平成8年)
サンケイホール「桂枝雀独演会」/中田つるじ/笑福亭松鶴の異変/毎日ホール「桂春蝶独演会」/毎日ホール「古今亭志ん朝独演会」/『上方落語ノート』/「六世松鶴極つき十三夜」/桂米朝「上方大衆芸能史」講義/毎日ホール「林家小染独演会」/「枝雀寄席」/『米朝落語全集』/「創作落語の会」/サンケイホール「桂朝丸独演会」/『米朝ばなし 上方落語地図』/「枝雀十八番」/笑福亭松鶴,紫綬褒章受章/桂福団治・手話落語/翠会・桑原ふみ子/『とっておき米朝噺し』/『桂三枝爆笑落語大全集』/上方落語協会創立二十五周年祭/「8・8文珍DAY」/林染会/「松鶴・仁鶴極つき十三夜」/桂小文枝会長・笑福亭仁鶴副会長体制/林家小染 急逝/東京・歌舞伎座「桂枝雀独演会」/サンケイホール「桂べかこ独演会」/「桂枝雀 フリー落語の会」/「桂枝雀 英語落語独演会」/煩悩を我も振り分け西の旅/鶴三改め六代目笑福亭松喬襲名/「笑福亭枝鶴独演会」/大阪藝能懇話会/二代目桂ざこば襲名/落語作家/「特選!! 米朝落語全集」/『古今東西落語家事典』/初代米沢彦八の碑/TORII HALL/上方はなし・彦八まつり/四代目林家染丸襲名/「笑福亭松葉の会」/「六日間連続 米朝一門会」/五代目桂文枝襲名/サンケイホール「桂吉朝独演会」/三代目桂南光襲名/七代目笑福亭松鶴決定/三代目桂あやめ襲名/志ん朝の貢献/「春團治まつり」/人間国宝/エピローグ

参考文献 一覧
あとがき
戸田 学(とだ まなぶ)
1963年大阪・堺市生まれ.作家.2004年上方お笑い大賞秋田實賞受賞.大阪藝能懇話会会員.主な編著書に『随筆 上方落語の四天王』 『随筆 上方落語四天王の後継者たち』(以上,岩波書店),『上岡龍太郎 話芸一代』(青土社),『凡児無法録』(たる出版),『桂米朝集成』全4巻,『桂米朝座談』全2巻,『いとしこいし 漫才の世界』,『いとしこいし想い出がたり』(以上共編,岩波書店),『六世笑福亭松鶴はなし』(編,岩波書店),『桂春団治 はなしの世界』(共著,東方出版),『米朝・上岡が語る昭和上方漫才』(企画・構成,朝日新聞社)など.

書評情報

しんぶん赤旗 2014年10月5日
読売新聞(夕刊)〔大阪〕 2014年9月29日
読売新聞(夕刊) 2014年9月22日
信濃毎日新聞(朝刊) 2014年9月14日
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