完本 正岡容 寄席随筆

名著『寄席風俗』『寄席囃子』『寄席行燈』『艶色落語講談鑑賞』を復刻,珠玉の編者解説と共に収めた愛蔵版.

完本 正岡容 寄席随筆
著者 正岡 容 , 桂 米朝 , 小沢 昭一 , 大西 信行 , 永井 啓夫
ジャンル 書籍 > 単行本 > 芸術
刊行日 2006/11/17
ISBN 9784000248020
Cコード 0076
体裁 菊判 ・ 上製 ・ 函入 ・ 478頁
在庫 品切れ
寄席をこよなく愛し,幾多の寄席随筆を著した作家・正岡容.その真骨頂が存分に発揮された名随筆集『寄席風俗』,『寄席囃子』,『寄席行燈』,『艶色落語講談鑑賞(抄)』を復刻,美麗装幀の1巻に収める.今もなお師を慕う門人,米朝・小沢・大西各氏による珠玉の書下ろし解説,永井氏による年譜も併せて収録.異才の素顔を解き明かす.


■編者からのメッセージ
 門人揃って,謹んで編者をつとめました
落語はもとより,講談,浪曲,寄席演芸の味わい方をいろんな文章で示し,これらを読んだ読者の足を実際に寄席へ運ばせた.これは凄いことである.私は自分が正岡容の弟子であるということを今も誇りに思っている.
桂 米朝

私,新宿末廣亭に十日間出演しました.正岡流の「文芸落語」ではありませんで,「随談」と称しての高座は,蔭で“セコ昭”と言われたかもしれませんが,思えば,ここは正岡似だなあと,芸恩を感じております.
小沢昭一

手をかえ品をかえてこれでもかこれでもかと,正岡は春團治を描き出そうと苦労している,その苦労が読む者に,音として形としてすこぶる具体的な春團治像を,次第にくっきりイメージさせてしまう.そのことが正(まさ)しく他の人にはない正岡容なればこその寄席研究落語研究,あるいは落語家講釈師浪曲家研究なのだ.
大西信行

大正末から昭和30年代までという動乱の環境で,〈夢〉や〈詩〉や〈江戸〉や〈芸〉を性急に謳い上げようとした正岡容の生涯は,あまりにもあわただしく稔りに乏しかった.(中略)正岡容が本当に江湖に理解され評価を享けるのは,おそらく今後のことに属するのではないだろうか.
永井啓夫
(いずれも本書より抜粋)



■編集部からのメッセージ
 正岡容(1904~1958)は,19歳で発表した小説が芥川龍之介に絶賛されたのを機に文筆活動に入り,その後,小説・随筆・評論・俳句・短歌・川柳・浪曲・舞踏など多岐にわたる作品を遺しています.なかでも,寄席随筆は多くの読者に愛され,高い評価を受けました.桂米朝・小沢昭一・大西信行はじめ門人各氏も,その寄席随筆に惚れこみ入門したといいます.
 しかし,戦中戦後という時代に妨げられ,その多くが古書でも入手しにくいままでした.本書は,その真骨頂が存分に発揮された寄席随筆集を,美麗装幀の一巻に収めた愛蔵版です.すなわち,『随筆 寄席風俗』(昭和18年刊),『随筆 寄席囃子』(昭和19年刊),『随筆 寄席行燈』(昭和21年刊)の口絵・本文を全て収録,さらに『艶色落語講談鑑賞』(昭和27年刊)から「艶色落語講談鑑賞」の章を収めました.
 編者には,今もなお師を慕う門人四氏を迎え,本書のための書下ろし解説・年譜改訂版も併せて収録.異才・正岡容の素顔を解き明かします.なお,本文は新字・新仮名に改め,人名等には編者注を加えるなど,読みやすさにも配慮しました.
 古き世の名人上手を蘇らせる筆の冴え,寄席芸への真摯なまなざしは正岡容ならではのもの.時代を超え,変わらぬ輝きを放つ寄席随筆集の粋を収めた本書は,ご愛蔵いただくにふさわしいものです.
【編集部 中嶋裕子】
凡 例
第一章 随筆 寄席風俗
  はしがき [正岡 容]
  東西落語研究
    明治開化期の落語本
夏柳落語往来
    落語の製作されるまで/和漢洋の同一落語/寄席の行燈/噺を質へおく!
    上方落語・芝居噺研究
先代桂春團治研究
三遊亭圓馬研究
  寄席文化時評
    日の下何の新しきものあらんや
禁演落語時世相
はなしか論語
  我が寄席随筆
    大正末年の寄席
      百面相/桝おどり/橘之助/都家歌六/昼席/むらく/君見ずや「かっきょの釜掘り」/才賀の死/百面相異聞
    寄席の都々逸
名人文楽
大東亜戦大勝利の夜の寄席
この二,三日のこと
馬楽供養
歳晩日記抄
  講談と浪花節と
    釈 場
神田愛山は戦死した
明治中期の京阪講談界
高野長英・加賀鳶・犬猫鍋
木村重正
偐むらさき
木なし幕
東家楽浦一行
英霊蒲団
新舞踊「寄席」
俳諧寄席姿
第二章 随筆 寄席囃子
  「寄席囃子」序歌 [吉井 勇]
緒 言 [正岡 容]
蔵前柳枝研究
上方落語談叢
当代志ん生の味
寄席囃子
      橘之助懐古/圓太郎の代々/大谷内越山さん
  続寄席囃子
      鼻の圓遊・木更津/先代市馬/柳桜のまくら/馬楽地蔵/小文枝の「三十石」/「らくだ」/「道灌」と「佐平次」と「火事息子」と/「武助馬」
  拾遺寄席囃子
      先代鶴枝/狸の小勝/日本太郎
    栃木行
初代浪花亭愛造と岡鬼太郎氏の芸評
寿々木越造を聴く
新舞踏「浪曲名所図絵」
跋――高篤三夫人へ[花園歌子]
年譜――結婚前後
第三章 随筆 寄席行燈
    自 序 [発運居主人]
お茶の水事件の小噺 十題
江戸小噺鑑賞
増訂 明治・大正・昭和 新作落語略史
圓朝記
断 章
      素人鰻/かんしゃく/干物箱/鰻の幇間/心眼/明烏(息子気質)/富久/寝床/厩火事/景清/しめこみ
    秋色寄席懐古
寄席のちらし
モリヨリヨン
寄席朧夜
草いきれ,かッたぁ
第四章 艶色落語講談鑑賞(抄)
   
「艶色落語講談鑑賞」序歌 [吉井 勇]
序 [正岡 容]
人情噺 在原双紙
上方落語 島めぐり
講談 小町娘想呉竹
落語 長持
講談 鬼神の於松
講談 吉原百人斬
落語 数取り
人情噺 乳房榎
人情噺 牡丹燈籠(幸手堤)
落語 蛙茶番
落語 菊重ね
落語 尻餅
跋――師 正岡容のことども [永井啓夫]
第五章 解説 桂米朝・小沢昭一・大西信行
資料 大塚鈴本「寄席文化向上会」記録
正岡容 年譜 永井啓夫
   
  *編集協力=戸田学 
桂 米朝(かつら べいちょう)
大正14年大連生まれ.落語家,重要無形文化財保持者(人間国宝),文化功労者.四代目桂米團治に入門,三代目桂米朝を名のる.著書に『米朝落語全集』全7巻(創元社),『上方落語ノート』4集(青蛙房),『桂米朝集成』全4巻,『桂米朝座談』2冊(以上岩波書店)など.

小沢昭一(おざわ しょういち)
昭和4年東京生まれ.俳優,芸能研究家.しゃぼん玉座主宰.新劇,映画,テレビ,ラジオで活躍する一方,民衆芸能の調査研究に道を拓く.著書に『ものがたり芸能と社会』『放浪芸雑録』(以上白水社),『小沢昭一百景―随筆随談選集』全6巻(晶文社)など.

大西信行(おおにし のぶゆき)
昭和4年東京生まれ.劇作家,演出家,脚本家.NHK勤務を経て独立.『御宿かわせみ』(NHK),『水戸黄門』(TBS),戯曲『怪談牡丹燈籠』など作品多数.著書に『落語無頼語録』(芸術生活社),『正岡容―このふしぎな人』(文藝春秋),『浪花節繁昌記』(小学館)など.

永井啓夫(ながい ひろお)
昭和2年東京生まれ.元・日本大学大学院教授,元・北京市中国戯曲学院客員教授.近世文学.主な著書に『三遊亭円朝』『四代市川小團次』(以上青蛙房),『寺門静軒』(理想社),『日本芸能行方不明―近世芸能の落日』(新しい芸能研究室)など.

書評情報

毎日新聞(朝刊) 2009年3月1日
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