考古学・人類学・言語学との対話

日本語はどこから来たのか

人類学の馬場悠男,縄文学の小林達雄,アイヌ語学の中川裕,朝鮮考古学の西谷正との刺激に満ちた対話.

考古学・人類学・言語学との対話
著者 大野 晋 , 金関 恕
ジャンル 書籍 > 単行本 > 言語
刊行日 2006/12/21
ISBN 9784000228725
Cコード 0080
体裁 四六 ・ 上製 ・ 250頁
定価 2,200円
在庫 在庫あり
日本語はどこから来たのか.弥生人,縄文人とは何者なのか.人類学の馬場悠男,縄文学の小林達雄,アイヌ語学の中川裕,そして朝鮮考古学の西谷正という各分野の第一人者との刺激に満ちた対話を通じて見えてくる列島古代の相貌.広範で緻密な研究の蓄積と最新の知見が撚り合わされるとき,発見の驚きとともに新たな謎が浮かび上がり,興味は尽きない.

■編者からのメッセージ

大野 晋

 日本語は,日本の島の中で自然に湧いて出たものではないだろう.それなら北から来たか,大陸から来たか,南から来たか.日本は島国だから,いずれ舟で渡って来た人たちが使っていた言葉が広まったにちがいない.こうした素朴な問いが提起されて百年.この問いを自分の問題とした研究者は明治時代から数えきれないほどあった.しかも皆を納得させる答を出した人は誰もいない.
 また言葉だけでなく,生物としての日本人もどこから来たか.生活の道具,生活の仕方もどこの人たちと仲間なのかも,これとからむ問題である.そこに考古学,人類学,言語学の総合的見地が要求される.
 私はたまたま南インドのタミル語という5000万人の使う言語に出会った.その二千年前の単語,文法と当時の日本語とが深い関係をもつと私は判断した.カミ(神)の語源も,五七五七七という詩の形式もそこにある.そんなことがあるはずはないと,どなたもお考えになるだろう.そこで弥生考古学,形質人類学,縄文考古学,アイヌ語学,朝鮮考古学という,関係深い学問領域の専門家のご意見を伺ってみようとする.私の手のとどかないところからの批判に対して,もしできたら意見を交換してみたい.これは日本語・日本人の成立を考える上で,必要な各々の角度からの検討になるだろう.我々はたやすく一つの結論に達するよりは,この問題の幅の広さと,奥行きの深さが依然として大きいことに改めて気付く.日本語の成立ということに関心をお寄せの方々には,おそらく未知の興味ある数々の情報がこの対話から汲み取られると思う.
はしがき――大野 晋

はじめに 考古学と日本語

大野 晋×金関 恕
  『日本語の起源』のころ/土井ヶ浜の発掘で学ぶ/縄文日本人と米作/縄文・弥生の酒/稲・粟の種類と餅の形/弥生時代の墓と石,金属/ものを細かく見ない日本人/欧米流考古学と日本考古学/東の考古学,西の考古学/言語能力と文化/考古学者たちの思い出

形質人類学との対話

馬場悠男先生をお迎えして
  日本語の起源――タミル語と接触したのか/タミル人は日本へ来たのか/弥生人とは誰なのか/アイヌ人と縄文人/弥生人はどこから来たのか/昔の人類学は正確ではない?/渡来弥生人の拡がりかた/偶然とは考えられないタミル語との対応関係/稲作は中国から来たのか/タミル人は7000キロを旅したのか/タミルからは文化だけを受け入れたのか/沿岸地域に別の稲作文化があった?/骨から見た人類の変化

縄文学との対話

小林達雄先生をお迎えして
  人間はいつから言語を持ったのか/縄文人の言語と文化/縄文文化は進んでいた/日本語とタミル語の対応関係/縄文語はどんな言葉だったのか/数詞をどう考えるか/縄文の言葉と文化はどこまで受け継がれているのか/縄文の言葉はどこまで弥生文化の影響を受けたのか/文化の伝播と東西のちがい/記号文とグラフィティの類似は偶然か

アイヌ語学との対話

中川 裕先生をお迎えして
  「弥生以前」の謎/アイヌ語はどこでいつ話されていたのか/縄文人はアイヌ語をしゃべっていたか/アイヌ語と日本語は関係があるか/文明の受容と言語/アイヌにとってのカムイとは/アイヌ語にくわわった日本語/東の言葉と西の言葉/日本語はどこから来たのか

朝鮮考古学との対話

西谷 正先生をお迎えして
  日本語とタミル語の関連について/考古学から見た日本・朝鮮・南インド/稲作文化の来た道をたどる/人々の流れをさぐる

おわりに――金関 恕
編者
大野 晋(おおの すすむ)
1919年東京生まれ.東京大学文学部国文学科卒業.学習院大学名誉教授.専門は国語学. 編著書に『日本語の起源』『日本語をさかのぼる』『日本語の文法を考える』『日本語以前』『日本語の起源 新版』『日本語練習帳』『日本語の教室』『学力があぶない(共著)』(以上,岩波新書),『日本書紀(共編・校注)』(岩波文庫),『岩波古語辞典(共編)』『日本語の形成』『弥生文明と南インド』(以上,岩波書店),『日本人の神』『日本語の水脈』(以上,新潮文庫)ほか多数.
編者
金関 恕(かなせき ひろし)
1927年京都生まれ.京都大学文学部史学科考古学専攻卒業.京都大学文学部大学院,奈良国立文化財研究所を経て,天理大学名誉教授.大阪府立弥生文化博物館館長.専門は弥生考古学.
編著書に『弥生文化の研究全10巻』(雄山閣出版),『弥生文化の成立』(角川書店),『弥生時代の集落』(学生社)ほか多数.
馬場悠男(ばば ひさお)
1945年生まれ.国立科学博物館人類研究部部長,東京大学大学院理学系研究科教授.専門は形態人類学.
小林達雄(こばやし たつお)
1937年生まれ.國學院大學文学部教授,新潟県立歴史博物館館長.専門は縄文考古学.
中川 裕(なかがわ ひろし)
1955年生まれ.千葉大学文学部教授.専門はアイヌ語学・アイヌ文学・口承文芸学.
西谷 正(にしたに ただし)
1938年生まれ.九州大学名誉教授.伊都国歴史博物館館長.日本考古学協会会長.専門は朝鮮考古学.

書評情報

東京新聞(夕刊) 2008年7月25日
しんぶん赤旗 2007年4月1日
愛媛新聞 2007年3月4日
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