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語りかける季語 ゆるやかな日本
日本各地には,その土地の貌を映し出す季節のことばがある.例句を挙げながら,その豊かな世界を描く.
日本各地には,おしら遊び,つるし雛,うりずん,蝦夷梅雨,青味返り,いぶりがっこ,小夏日和など,その土地の貌を映し出す季節のことばがある.これらのことばを「地貌季語」と称して,その発掘に努めてきた著者が,例句を挙げながら,ゆるやかな「いくつもの日本」を描きだす.従来の季語体系の見直しを迫る一冊.
■著者からのメッセージ
芭蕉が「季節の一つも探り出したらんは,後世によき賜(たまもの)」(『去来抄』)といったという.これほど勇気付けられることばはない.季語を見出すことは新たな季語の発見である.
沖縄では真夏にそそりたつ入道雲を「立ち雲」という.なんと端的な風土のことばではないか.夜に入っても月光に照らされながら白く光り,でんと据わっているという.それは,沖縄の生きとし生けるものの象徴のようだ.
雪国の春先,山の山毛欅(ぶな)の木の根元がドーナツ型に明き,いち早く雪解けが始まる.これを「木の根明く」と呼んでいる.木のいのちの逞しさや自然の摂理の確かさを感じさせる季節の発見である.
私はこのようなことばを「地貌季語」と称して,全国各地を探索して,その発見に努めてきた.地貌季語は一木一草にいのちを感じ,大地の声に耳を傾けようとする大らかな愛に支えられている.そこに描き出されているのは「美しい日本」というよりも「ゆるやかな日本」のあり方である.
本書を繙いて,懐かしく,われわれに語りかけてくる季節のことばを通して,日本文化の多様性をもう一度考える手がかりにしていただければ嬉しい.
■著者からのメッセージ
芭蕉が「季節の一つも探り出したらんは,後世によき賜(たまもの)」(『去来抄』)といったという.これほど勇気付けられることばはない.季語を見出すことは新たな季語の発見である.
沖縄では真夏にそそりたつ入道雲を「立ち雲」という.なんと端的な風土のことばではないか.夜に入っても月光に照らされながら白く光り,でんと据わっているという.それは,沖縄の生きとし生けるものの象徴のようだ.
雪国の春先,山の山毛欅(ぶな)の木の根元がドーナツ型に明き,いち早く雪解けが始まる.これを「木の根明く」と呼んでいる.木のいのちの逞しさや自然の摂理の確かさを感じさせる季節の発見である.
私はこのようなことばを「地貌季語」と称して,全国各地を探索して,その発見に努めてきた.地貌季語は一木一草にいのちを感じ,大地の声に耳を傾けようとする大らかな愛に支えられている.そこに描き出されているのは「美しい日本」というよりも「ゆるやかな日本」のあり方である.
本書を繙いて,懐かしく,われわれに語りかけてくる季節のことばを通して,日本文化の多様性をもう一度考える手がかりにしていただければ嬉しい.
はじめに
新年
花の内/雪海苔/紅鯛/箱根大学駅伝/吉兆さん/ひよんどり/蟹の年取/あまめはぎ/御印文頂戴/お松引き/飴市/婿投げ/おしら遊び/蒟蒻閻魔/春節
春
うりずん/赤雪/雪解星/二月風廻り/桜隠し/リラ冷え/すんずら/木の根明く/笹起きる/雪ねぶり/庭乾く/幻氷/湖明け/常念坊/鵜殿の蘆焼/浜下り/出熊猟/枇杷の袋掛/桑台据う/八皿酒/やしょうま/潮ばかり/つるし雛/雛荒し/かなんばれ/御頭祭/半僧坊祭/どろめ祭/暗闇祭/国府祭/闘犬/鷹戻る/ながらみ/クリオネ/糸魚/田打桜/あぶらちゃん/ちゃんめろ/谷地坊主
夏
若夏/蝦夷梅雨/南十字星/立ち雲/三束雨/青味返り/焙炉上げ/朴葉餅/林檎摘花/海鵜獲る/ぼた/氷室饅頭/日の辻/丑湯治/肝だめし/樺剥ぎ/ハーリー/花の撓/藤切会式/車田植/傘焼き祭/六月朔日/蜘蛛合戦/つぶろさし/千貫神輿/お日市/岳の幟/山あげ祭/御輿まくり/蛇撚り/お馬流し/白とぶ///オショロコマ/椰子蟹/土瓶割り/八色鳥/行者蒜/ひとつばたご/ゆりの木の花/鳳凰木の花/梅雨穂草/姥百合/みず/あんどん/蔓荊
秋
卯夏/鷹の雨/青田刈/えご寄せ/灯籠木/よずく稲架/軽羹/面輪板/数方庭祭/墓獅子/盆綱引き/鬼来迎/御射山祭/鹿踊/風祭/海神祭/八月踊/面掛行列/へちま加持/麦屋祭/泥神祭/みあれ祭/鵜供養/木場の角乗り/鮭供養/古書市/竹節虫/沖の女郎/継子の尻拭/ごまざい/だだちゃ豆/ハスカップ/白穂/デントコーン/黄金萱/十月桜
冬
小夏日和/御満座荒れ/気嵐/甘蔗時雨/霜折/木花/雨返し/ビル颪/稲搗波/一里一尺/雪まくり/柿稲架/ぼてぼて茶/荒粉干す/風除/間垣/藪養生/千切大根/黒糖煮る/泥炭/かんずり/いぶりがっこ/凍み蒟蒻/ササラ電車/ざざ虫取/墨造/草鞋酒/山の口開く/新霊/種子取祭/参候祭/一つ火/耳あけ/霜月祭/ガサ市/巳正月/落鷹/雪迎/幻魚/白子鰻/寒緋桜
季語体系の見直し
地貌季語分類表
俳句索引
新年
花の内/雪海苔/紅鯛/箱根大学駅伝/吉兆さん/ひよんどり/蟹の年取/あまめはぎ/御印文頂戴/お松引き/飴市/婿投げ/おしら遊び/蒟蒻閻魔/春節
春
うりずん/赤雪/雪解星/二月風廻り/桜隠し/リラ冷え/すんずら/木の根明く/笹起きる/雪ねぶり/庭乾く/幻氷/湖明け/常念坊/鵜殿の蘆焼/浜下り/出熊猟/枇杷の袋掛/桑台据う/八皿酒/やしょうま/潮ばかり/つるし雛/雛荒し/かなんばれ/御頭祭/半僧坊祭/どろめ祭/暗闇祭/国府祭/闘犬/鷹戻る/ながらみ/クリオネ/糸魚/田打桜/あぶらちゃん/ちゃんめろ/谷地坊主
夏
若夏/蝦夷梅雨/南十字星/立ち雲/三束雨/青味返り/焙炉上げ/朴葉餅/林檎摘花/海鵜獲る/ぼた/氷室饅頭/日の辻/丑湯治/肝だめし/樺剥ぎ/ハーリー/花の撓/藤切会式/車田植/傘焼き祭/六月朔日/蜘蛛合戦/つぶろさし/千貫神輿/お日市/岳の幟/山あげ祭/御輿まくり/蛇撚り/お馬流し/白とぶ///オショロコマ/椰子蟹/土瓶割り/八色鳥/行者蒜/ひとつばたご/ゆりの木の花/鳳凰木の花/梅雨穂草/姥百合/みず/あんどん/蔓荊
秋
卯夏/鷹の雨/青田刈/えご寄せ/灯籠木/よずく稲架/軽羹/面輪板/数方庭祭/墓獅子/盆綱引き/鬼来迎/御射山祭/鹿踊/風祭/海神祭/八月踊/面掛行列/へちま加持/麦屋祭/泥神祭/みあれ祭/鵜供養/木場の角乗り/鮭供養/古書市/竹節虫/沖の女郎/継子の尻拭/ごまざい/だだちゃ豆/ハスカップ/白穂/デントコーン/黄金萱/十月桜
冬
小夏日和/御満座荒れ/気嵐/甘蔗時雨/霜折/木花/雨返し/ビル颪/稲搗波/一里一尺/雪まくり/柿稲架/ぼてぼて茶/荒粉干す/風除/間垣/藪養生/千切大根/黒糖煮る/泥炭/かんずり/いぶりがっこ/凍み蒟蒻/ササラ電車/ざざ虫取/墨造/草鞋酒/山の口開く/新霊/種子取祭/参候祭/一つ火/耳あけ/霜月祭/ガサ市/巳正月/落鷹/雪迎/幻魚/白子鰻/寒緋桜
季語体系の見直し
地貌季語分類表
俳句索引
宮坂静雄(みやさか・しずお)
1937年長野県生まれ.俳人,信州大学名誉教授.月刊俳句誌『岳』主宰.季題・季語体系の見直しを提唱し,季語深耕,地貌季語発掘につとめている.第45回現代俳句協会賞受賞.著書に『子規秀句考』『正岡子規――死生観を見据えて』(以上,明治書院),『俳句原始感覚』『俳句からだ感覚』(第1回山本健吉文学賞受賞)『俳句地貌論』(以上,本阿弥書店),『虚子以後』『虚子の小諸』『雪そして虚空へ』(以上,花神社)など.
句集に『花神俳句館・宮坂静生』『鳥』(花神社),『山の牧』(本阿弥書店),『宙』(角川書店)など.
1937年長野県生まれ.俳人,信州大学名誉教授.月刊俳句誌『岳』主宰.季題・季語体系の見直しを提唱し,季語深耕,地貌季語発掘につとめている.第45回現代俳句協会賞受賞.著書に『子規秀句考』『正岡子規――死生観を見据えて』(以上,明治書院),『俳句原始感覚』『俳句からだ感覚』(第1回山本健吉文学賞受賞)『俳句地貌論』(以上,本阿弥書店),『虚子以後』『虚子の小諸』『雪そして虚空へ』(以上,花神社)など.
句集に『花神俳句館・宮坂静生』『鳥』(花神社),『山の牧』(本阿弥書店),『宙』(角川書店)など.
書評情報
読売新聞(夕刊) 2010年1月7日
読売新聞(朝刊) 2009年2月8日
日本経済新聞(夕刊) 2008年11月27日
毎日新聞(朝刊) 2007年12月9日
毎日新聞(朝刊) 2007年3月4日
読売新聞(朝刊) 2007年2月5日
東京新聞(朝刊) 2007年1月23日
信濃毎日新聞(朝刊) 2006年12月10日
読売新聞(朝刊) 2009年2月8日
日本経済新聞(夕刊) 2008年11月27日
毎日新聞(朝刊) 2007年12月9日
毎日新聞(朝刊) 2007年3月4日
読売新聞(朝刊) 2007年2月5日
東京新聞(朝刊) 2007年1月23日
信濃毎日新聞(朝刊) 2006年12月10日
受賞情報
第58回読売文学賞〔随筆・紀行賞〕(2006年)