村に火をつけ,白痴になれ

伊藤野枝伝

筆一本を武器に「結婚」や「社会」と対決した野枝.気鋭の政治学者が迫る,その人間像と思想.

村に火をつけ,白痴になれ
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著者 栗原 康
ジャンル 書籍 > 単行本 > 評論・エッセイ
日本十進分類 > 文学
刊行日 2016/03/23
ISBN 9784000022316
Cコード 0095
体裁 四六 ・ 192頁
定価 本体1,800円+税
在庫 在庫あり
「不朽の恋を得ることならば,私は一生の大事業の一つに数えてもいいと思います.」筆一本を武器に,結婚制度や社会道徳と対決した伊藤野枝.野枝が生涯をかけて燃やそうとしたものは何なのか.気鋭の政治学者が,ほとばしる情熱,躍動する文体で迫る,人間・野枝.その思想を生きることは,私たちにもできること.やっちまいな.

■編集部からのメッセージ

筆一本で結婚制度や社会道徳と対決しつづけた伊藤野枝.その思想,人間像に,気鋭の政治学者・栗原康さんが迫ります.


本書に引かれた野枝の言葉が,とにかく強い!

「不朽の恋を得ることならば,私は一生の大事業の一つに数えてもいいと思います」

「あなたは一国の為政者でも私よりは弱い」

「ああ,習俗打破! 習俗打破!」

そして,野枝に恋する大杉栄が憑依したかのような,栗原さんの文章のグルーヴ!


進学.恋.結婚.仕事.子育て.そこに立ちはだかる,こうあらねばならぬというプレッシャー.世間.国家.それでも,学ぶことに,書くことに,食べることに,恋に,性に,生きることすべてに,野枝はわがままを貫きとおします.野枝には,優先順位がわかっていたのです.大切なのは,ただひとつ.おのれのわがままに徹すること.不倫上等.淫乱よし.自分のことは自分できめる.自分でやる.なんとでもなる.なんでもできる.


恋とは? 愛とは? 生きるとは?――読みながら自問させられます.じわじわと自分の人生を自分に取り戻す力が湧いてきます.野枝の思想を生きることは,わたしたちにもできること.今の時代にこそ,きっとだいじなこと.野枝に出会ってください.恋してください.

■著者からのメッセージ

読みたい,書きたい,食べたい,セックスがしたい,子どもがほしい.ふつう,ひとはなにかをやるためには,なにかをあきらめなくてはいけないとおもいこまされている.生きるためにとかいって,まずカネのことを考えさせられるからだ.たとえば,家庭をもつようになったら,カネにもならないのに夢をおいかけたら,わがままだといわれてしまう.でも,伊藤野枝はちがっていた.やりたいことがあったら,なにがなんでもやってしまう.ひとつじゃない,全部だ.カネはあとからついてくる.家も仕事もなげ捨てて,がむしゃらになって欲をみたす.失敗もする.死ぬほどバッシングもされる.でも,やってみると自分にはこんな力もあったんだと,妙な自信を手にしている.それを支えてくれる友人がいたら,その大切さにも気づかされる.百人力だ.あんなこともできる,こんなこともできる,もっとできる,わたしはすごい.野枝が身をもっておしえてくれているのは,そういうことだ.あらゆる逆風どんとこい.カネのことなど関係ないね.だれでもできる,なんでもできる.村に火をつけ,白痴になれ.いいよ!

栗原 康

■伊藤野枝について)

◎ 大正時代のアナキスト.ウーマンリブの元祖ともいわれる.


◎ 福岡県に生まれ,14歳で一念発起し,上京.上野高等女学校に進学.卒業後,決められた縁組により地元で結婚するが,婚家を出奔し,女学校の恩師であった辻潤と暮らしはじめる.雑誌『青鞜』編集部で働き,平塚らいてうについで20歳で編集長に.セックス,中絶,売買春といったテーマから,人間の尊厳や生き方を問いなおす記事を書く(「貞操論争」「堕胎論争」「廃娼論争」).辻とのあいだに2人の子どもをもうける.


◎ 大杉栄と出会い,21歳で大杉・妻・恋人との四角関係に身を投じる.大杉の気持ちが野枝に大きく傾くなか,恋人・神近市子が大杉を刺す(葉山日蔭茶屋事件).事件後,大杉との絆を深めた野枝は,5人の子を産み育てながら,『青鞜』休刊後も評論や翻訳など旺盛な執筆活動を繰り広げる.関東大震災の混乱に乗じた甘粕正彦ひきいる憲兵隊に,大杉・甥とともに虐殺される(甘粕事件).享年28歳.
はじめに

あの淫乱女! 淫乱女!/野枝のたたりじゃあ!/もはやジェンダーはない,あるのはセックスそれだけだ


第一章 貧乏に徹し,わがままに生きろ

お父さんは,はたらきません/わたしは読書が好きだ/わたしはけっしてあたまをさげない/きょうから,わたし東京のひとになる


第二章 夜逃げの哲学

西洋乞食,あらわれる/わたし,海賊になる/ど根性でセックスだ/だれかたすけてください,たすけてください/恋愛は不純じゃない,結婚のほうが不純なんだ/究極の夜逃げ


第三章 ひとのセックスを笑うな

青鞜社の庭にウンコをばら撒く/レッド・エマ/野枝の料理はまずくて汚い?/もっと本気で,もっと死ぬ気で,ハチャメチャなことをかいて,かいてかきまくれ/(一)貞操論争/(二)堕胎論争/(三)廃娼論争/大杉栄,野枝にホレる/急転直下,自分で自分の心がわからぬ!/約束なんてまもれない,結婚も自由恋愛もしったことか/カネがなければもらえばいい,あきらめるな!/オバケのはなし――葉山日蔭茶屋事件/吹けよあれよ,風よあらしよ


第四章 ひとつになっても,ひとつになれないよ

マツタケをください/すごい,すごい,オレすごい/亀戸の新生活――ようこそ,わが家へ/イヤなものはイヤなのだ/あなたは一国の為政者でも私よりは弱い/主婦たちがマジで生を拡充している/魔子は,ママのことなんてわすれてしまいました/結婚制度とは,奴隷制のことである/ひとつになっても,ひとつになれないよ/友情とは中心のない機械である――そろそろ,人間をやめてミシンになるときがきたようだ/家庭を,人間をストライキしてやるんだ――この腐った社会に,怒りの火の玉をなげつけろ!


第五章 無政府は事実だ

野枝,大暴れ/どうせ希望がないならば,なんでも好き勝手にやってやる/絞首台にのぼらされても,かまうものか!/失業労働者よ,団結せよ/無政府は事実だ――非国民,上等! 失業,よし!/村に火をつけ,白痴になれ/わたしも日本を去り,大杉を追っていきます/国家の犬どもに殺される/友だちは非国民――国家の害毒は,もうバラまかれている


あとがき

いざとなったら,太陽を喰らえ/はじめに行為ありき,やっちまいな




参考文献

写真出典
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