ロックフェラー家と日本

日米交流をつむいだ人々

大富豪ロックフェラー家の群像を紹介しながら,彼らの担った日米文化交流に潜むドラマを描く.

ロックフェラー家と日本
著者 加藤 幹雄
ジャンル 書籍 > 単行本 > 評論・エッセイ
刊行日 2015/12/22
ISBN 9784000026017
Cコード 0095
体裁 四六 ・ 上製 ・ 302頁
在庫 品切れ
米国史上最大の富豪ロックフェラー家と日本とのつながりは,意外なほど深く,そして長い.なかでも,初代の孫にあたるジョン・デヴィソン・ロックフェラーが,松本重治らと協力して,戦後の日米文化交流の再構築に果たした役割は突出している.なぜ彼らは日本に注目したのか.ロックフェラー家の群像を紹介しながら,日米交流のドラマを描く.


■編集部からのメッセージ
 アメリカ史上,いや人類史上最大の富豪とされるロックフェラー家は,意外にも,日本と深いつながりを築いてきました.なかでも突出しているのが,初代の孫にあたるジョン・ディヴィソン・ロックフェラー(ジョン三世,1906‐1978)が,松本重治らの協力を得て,戦後の日米関係,とりわけ文化関係の再構築に果たした役割です.彼に限らず,ジョン三世の両親の日本美術に対する造詣の深さ,またジョン三世の末弟ディヴィッド(元チェース・マンハッタン銀行頭取)の日本財界人との交流,ジョン三世の長男ジェーの若い頃の日本体験など,ロックフェラー家と日本は切り離せない関係にあります.
 本書は,ロックフェラー家の初代から第4世代までの群像を追いかけながら,一家が確立したと言われる近代フィランソロピーの展開の一つ,戦後日米文化関係の再構築の歩みをたどるものです.著者は,戦後日本の文化交流の重要な場であった「国際文化会館」に長く務め,ジョン三世と松本重治の関係を間近に見てきた加藤幹雄さんです.本書が,日米関係のこれまでとこれからを考えるきっかけになればと思っています.
はじめに

第1章 王朝の形成
王朝の都ニューヨーク
父不在の家族
プロテスタンティズム倫理の体現者
スタンダード石油の誕生
泥棒男爵(ロバー・バロン)
細部にこだわる帝王

第2章 第二世代と近代フィランソロピーの確立
結婚と長男の誕生
ニューヨーク進出
オルドリッチ家と東洋美術
増え続ける富とジュニアの修業
シカゴ大学創設
父と違う道を選んだジュニア
野口英世とロックフェラー医学研究所
黒人教育の支援
ロックフェラー財団設立
ラドロウの悲劇
中国支援――チャイナ・メディカル・ボード
ジュニアの新しい世界――自然保護
自然保護から歴史遺産保全へ

第3章 多彩な第三世代
長女バブスの反抗
大統領になりそこねたネルソン
ベンチャー投資で成功した環境保護活動家,三男ローレンス
異端児四男ウィンスロップ
金融界の覇者・末弟ディヴィッド

第4章 日本とのかかわり
父子の亀裂
ジョン――第三世代のミスター・ジャパン
ジョンとシゲの戦後再会
ダレスへの報告書
知的交流計画の実現
文化センター準備委員会発足とジャパン・ソサエティ復活
「ハウス」の必要性
募金と用地の確保
脱ロックフェラー依存を求めて
ロックフェラー財団の戦後日本支援
日本美術とジョン
英語教育改善の試み
深まる皇室とのつながり
日本を越えたアジアの世界へ
アーティスト支援活動
兄弟の確執

第5章 第四世代――反逆と和解
反逆するカズンたち
癒しの絆
和解と伝統回帰
ロックフェラー家と「キープ協会」
羽ばたく四代目当主ジェー
終章 ジョンとシゲ
長寿のDNA
最後の対話

主要参考・引用文献
あとがき
人名索引
加藤幹雄(かとう・みきお)
1936年生まれ.早稲田大学政治経済学部卒業.1959-2012年,(財)国際文化会館勤務.同企画部長,常務理事,常任参与を歴任した.共編著に,Japan and Its Worlds: Marius B. Jansen and the Internationalization of Japanese Studies (I-House Press)ほか.訳書に,マリウス・ジャンセン『日本 二百年の変貌』,ワン・ガンウー『中華文明と中国のゆくえ』(以上,岩波書店),マーティン・シャーウイン『破滅への道程――原爆と第二次世界大戦』(TBSブリタニカ),ロナルド・ドーア『21世紀は個人主義に時代か――西欧の系譜と日本』(サイマル出版会)ほか.

書評情報

日本経済新聞(朝刊) 2016年1月31日
ページトップへ戻る