食をうたう

詩歌にみる人生の味わい

古今の詩歌に表現された”食”を食文化史研究者が味読.”食”に凝縮された人生と時代を解き明かす.

食をうたう
著者 原田 信男
ジャンル 書籍 > 単行本 > 評論・エッセイ
刊行日 2008/11/14
ISBN 9784000234566
Cコード 0095
体裁 四六 ・ 上製 ・ 204頁
在庫 品切れ
苺が大好きだった子規,納豆にこだわった茂吉,西洋料理店(レストラント)が似合う白秋──.詩人,歌人,俳人たちが,豊かに表現した”食”.食文化史研究の第一人者が,「万葉集」から現代まで,詩歌に詠みこまれた”食”を多読,味読し,そこに凝縮された作者の生きかた,映し出された時代の姿を解き明かす.

■著者からのメッセージ

歴史の勉強を本格的に始めてから,好きだった文学を意識的に遠ざけてきたが,ひょっとしたことから,かつて浸った詩歌の世界に,しばし舞い戻ることになった.歴史の論文と異なって,詩歌からは自由な想像力が駆り立てられる――はずであったが,長年の習性とは恐ろしいもので,やはり史料からは離れられない.エッセイであるから参考文献など不要と考えたが,どうしても付けたくなってしまった.また日頃お世話になっている索引も欲しくなった.巻末の「飲食関連語彙索引」は,我ながら見ていて楽しいもので,多少は役に立つのかもしれない.
歴史と詩歌と食べ物を,ミックスさせたらどうなるか,新しい試みではあるが,もし楽しんでいただけるとすれば,望外の喜びである.
はじめに  詩歌のなかの飲食

一章 生を彩る
      病床の苺 正岡子規
      秋刀魚と殉情 佐藤春夫
      鰻という至福 斎藤茂吉
      納豆の滋味 斎藤茂吉
      少年の桃,中年の桃 寺山修司,西東三鬼
      冬の花火と鮭鱒 中城ふみ子

二章 憧れと切なさと
      桐の花と洋食 北原白秋
      菓子と果物 立原道造
      セロリの食感 佐佐木幸綱
      珈琲の香りと苦み 茨木のり子
      クリスマスの哀愁 秋元不死男
      缶酎ハイの登場 福島泰樹,俵万智
      哀しき紫煙 中原中也,福島泰樹

三章 江戸の味
      新年とおせち 高浜虚子
      俳聖と料理 松尾芭蕉
      詩人の遊食 柏木如亭
      蕎麦の花 小林一茶
      甲州の葡萄 荻生徂徠
      聖なる新酒 上島鬼貫,与謝蕪村
      美酒礼賛 加舎白雄

四章 過去と現在
      いにしえの味覚と酒 『万葉集』巻一六
      赤米と山野河海 源俊頼
      農の悲しみと楽しみ 森荘已池,真壁仁
      米の重み 高村光太郎,埴谷雄高
      在日の食 姜東

五章 日々の営み
      生命【いのち】と料理 長谷川櫂
      鰹と昆布 長田弘
      時間という料理人 長田弘
      燃える火の力 石垣りん
      主婦の恋と台所 時実新子
      惣菜の思想 俵万智
      美食と恋愛,エロティズム 松平盟子

六章 それも人生
      花を食べる 吉原幸子
      雲水の素食 種田山頭火
      くちづけの味 石川木,与謝野晶子
      最後の晩餐 岸上大作
      隠喩としての飲食 塚本邦雄
      すなおなる食欲 齋藤史

終章 巡の果てに
      人生の味わい 金子光晴

 あとがき
 参考文献
 作者索引・飲食関連語彙索引
原田 信男(はらだ のぶお)
1949年生まれ.明治大学文学部卒業.明治大学大学院文学研究科博士課程退学.史学博士.札幌大学女子短期大学部文化学科専任講師を経て,現在,国士舘大学21世紀アジア学部教授.専攻は日本文化論,日本生活文化史.
『江戸の料理史』(中公新書)でサントリー学芸賞受賞.『歴史のなかの米と肉』(平凡社選書)で小泉八雲賞受賞.その他の著書に,『中世村落の景観と生活』(思文閣史学叢書),シリーズ『いくつもの日本』(全7巻,編著,岩波書店),『食と大地』(編著,ドメス出版),『和食と日本文化』(小学館),『江戸の食生活』(岩波書店),『食べるって何?』(ちくまプリマー新書)などがある.

書評情報

西日本新聞(朝刊) 2009年2月22日
東京新聞(朝刊) 2009年2月8日
読売新聞(夕刊) 2009年2月4日
食育フォーラム 2009年2月号
週刊新潮 2009年1月22日号
日本農業新聞 2008年12月22日
週刊読書人 2008年12月19日号
日本経済新聞(朝刊) 2008年11月27日
神戸新聞(朝刊) 2008年11月23日
しんぶん赤旗 2008年11月23日
ページトップへ戻る