旅に溺れる

日本各地の祭りを訪ね,地域文化を堪能.アジアで出会った愛すべき人々.親族への思い.珠玉のエッセイ集.

旅に溺れる
著者 佐々木 幹郎
ジャンル 書籍 > 単行本 > 評論・エッセイ
刊行日 2010/05/21
ISBN 9784000237888
Cコード 0095
体裁 四六 ・ 上製 ・ 206頁
在庫 品切れ
禅僧・栄西も見た平戸の入り江の風景への感慨を述べた表題作のほか,各地の祭りを探訪し,地域文化の襞の深さを味わう国内の旅.中国,チベット,ネパールなど,アジアの人々と交歓し,ひとの生と死に思いをはせる海外の旅.病や老い,親族への思い.読売文学賞受賞の名手による,国内外の旅の記録を中心としたエッセイ集.

■著者からのメッセージ


生きるための旅

佐々木幹郎


 『旅に溺れる』は,序文「祝う詞について」と「あとがきにかえて」を読んでいただければ,たんなる旅の記録ではないということをわかってもらえると思う.目次にはあえて示していないが,エッセイに挟み込むようにして,二篇の詩を収めた.これまでエッセイ集のエピグラフとして詩を掲載したことはあるが,本文と同列の位置に詩を収めたのはわたしには初めての試みで,散文を読むのと同じ気分で詩の世界に入ってもらえたら,という願いからである.


鹿児島県坊津・秋目屋浦

 旅は物語である.旅は一人の人間が透明になる時間である.思索は旅の中で始まる.人間という面白い生きものに出会うことで,それまで個人のアタマの中で考えていたことや,イメージしていたことが,みごとに崩れていく.おやっ,と思う瞬間が勝負だ.笑いたくなることが,この世にはいっぱいある.そのほとんどが,人間の生と死にかかわることだ.歩くこと.興味を持つこと.考えること.この世の謎に向って,旅すること.
 そこに,手で触ることができるような,人々の声があり言葉がある.それを掴むこと.旅に溺れないと,一本の藁さえも掴めないのだ.一人の人間が生きる,という旅においても.




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死が降りてくるとき――風の国、砂の国、川の国への旅

I

祝う詞について

雪の夜に,うち囃して 山形県鶴岡市「黒川能・王祇祭」

ある日,一日,狐になって 新潟県阿賀町「狐の嫁入り行列」

飛沫論

女性がしきる赤岡,絵金の町 高知県赤岡町「絵金祭りと絵金歌舞伎」

伝統と創作と情熱と活力と 沖縄県「琉球國祭り太鼓」

旅に溺れる

町の人みんなが芸術家 富山県福岡町「つくりもん祭」

雪球を当てる楽しみ,当てられる悔しさ 北海道壮瞥町「昭和新山国際雪合戦」

ツリーハウスという迷路

葛城の神々の幻――「葛城みち」を歩く

黄から緑までの変化――わたしと薩摩焼


 II
 
東シナ海カステラ異聞

やぶれかぶれと憂愁と――竹久夢二「青山河」

観音菩薩偏愛

大嵐の日,カトマンズで――山本真弓『牡牛と信号――〈物語〉としてのネパール』について

生者と死者をめぐる対話――墓を作る文化と無墓文化と

地の果ての都ローマンタンの手触り

死が下りてくるとき――チベットの『死者の書』をめぐって

風の国,砂の国,川の国

わたしの好きな世界の美術館

上海と孫悟空

震災という文化――いかにやわらかく,壊れるか

不滅あるいは囲むということ――モンゴルの草原で

詩の国への旅


 III
 
うどんの作り方から学ぶ文章の「引き算」

17ccの血

この世の夢

お寺にもっとも近い人々

オトンとオヤジと

夕まけて耳にどよめく


 
一本の桜の木――あとがきにかえて
佐々木幹郎(ささき みきろう)

詩人.1947年奈良県生まれ.詩集に『死者の鞭』(1970)『音みな光り』(1984)『悲歌が生まれるまで』(2004)『蜂蜜採り』(1992,高見順賞)『砂から』(2002)など.エッセイ・評論集に『中原中也』(1988,サントリー学芸賞)『カトマンズ・デイ・ドリーム』(1993)『都市の誘惑』(1993)『アジア海道紀行』 (2002,読売文学賞)『雨過ぎて雲破れるところ』(2007)など.編著に『新編中原中也全集』全5巻・別巻1(角川書店,2000~04).

書評情報

サンデー毎日 2010年12月19日号
短歌往来 2010年10月号
週刊金曜日 2010年9月17日号
熊本日日新聞(朝刊) 2010年7月25日
信濃毎日新聞(朝刊) 2010年7月25日
神戸新聞(朝刊) 2010年7月18日
福井新聞 2010年7月18日
読売新聞(朝刊) 2010年7月11日
東京新聞(朝刊) 2010年7月11日
中国新聞(朝刊) 2010年7月11日
山陰中央新報 2010年7月11日
山陽新聞(朝刊) 2010年7月10日
四国新聞 2010年7月10日
山形新聞(朝刊)
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