ディアスポラを生きる詩人 金時鐘

ディアスポラの境涯を自ら背負い,脱植民地化を追い求めた詩人.その詩作/思索の全体像を明らかにする.

ディアスポラを生きる詩人 金時鐘
著者 細見 和之
ジャンル 書籍 > 単行本 > 評論・エッセイ
刊行日 2011/12/06
ISBN 9784000240369
Cコード 0095
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 262頁
在庫 品切れ
その詩作/思索をつうじ多くの日本の表現者,知識人に深甚なる影響を与えてきた在日の詩人.彼の詩はどのように,切迫した状況との緊迫した対峙のなかで生まれてきたのか.詩人自身の生を刻みつけるようにしてつむがれてきた詩作/思索を,その個人史と在日史,戦中・戦後史に重ね合わせ,脱植民地化を追い求めた詩人の全体像を明らかにする.

■著者からのメッセージ


「在日」を生きてきた金時鐘さんの詩は,ほんとうにすばらしい.まずは多くのひとに金さんの作品に触れていただきたいと思います.たっぷり引用していますので,本書は金時鐘さんの作品アンソロジーの役割も果たしています.そのうえで,金さんの生涯と表現にそくして,日本の戦中・戦後,さらには東アジアの戦中・戦後について,あらためて考えていただければと思います.

 二〇世紀は輝かしい科学技術の発展の時代であるとともに,世界大戦の時代であり,大量殺戮の時代,そして社会主義という実験の時代でもありました.それをまさしく生身で生きとおしてきたのが金時鐘さんです.東アジアにおいて二〇世紀がどういう時代であったのかを,私たちは金さんの生涯と表現において,如実に知ることができます.

 本書では,金さんの生涯と表現を「脱植民地化の想像力」という視点で追いかけています.元来,朝鮮の元山で生まれ済州島で育った金さんがどのようにして日本に渡ってきたのか,金さんが日本語で作品を書くことにはどのような意味があるのか,本書をつうじて一緒に考えていただければと思います.

はじめに――「クレメンタインの歌」から

第一章 はじまりのなかの金時鐘――第一詩集『地平線』と詩誌『ヂンダレ』にそ
       くして

第二章 『日本風土記』と幻の『日本風土記Ⅱ』の作品世界

第三章 長篇詩集『新潟』に抱えられた記

第四章 金時鐘とハイネ,ツェラン――『猪飼野詩集』の射程

第五章 吉本隆明と金時鐘――来たるべき「戦後」の到来のために

終章   『失くした季節――金時鐘四時詩集』を読む




あとがき
細見和之(ほそみ かずゆき)

1962年生まれ.1991年,大阪大学大学院人間科学研究科後期課程単位取得退学.現在,大阪府立大学人間社会学部教授,博士(人間科学,大阪大学),ドイツ思想専攻,詩人.

著書に,『アドルノ――非同一性の哲学』(講談社,1996年),『アイデンティティ/他者性』(岩波書店,1999年),『アドルノの場所』(みすず書房,2004年),『言葉と記憶』(岩波書店,2005年),『ベンヤミン「言語一般および人間の言語について」を読む――言葉と語りえぬもの』(岩波書店,2009年),『「戦後」の思想――カントからハーバーマスへ』(白水社,2009年),『永山則夫――ある表現者の使命』(河出書房新社,2010年)など.

共訳に,ハンス・ヨーナス『生命の哲学――有機体と自由』(法政大学出版局,2008年),フランツ・ローゼンツヴァイク『救済の星』(みすず書房,2009年),ヴァルター・ベンヤミン『パサージュ論』全5冊(岩波現代文庫)など.
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