未来の記憶は蘭のなかで作られる

「過ちは過去を忘れることから始まる.」小説界のファンタジスタ,“始まりへの旅”としての初のエッセイ集

未来の記憶は蘭のなかで作られる
著者 星野 智幸
ジャンル 書籍 > 単行本 > 評論・エッセイ
刊行日 2014/11/07
ISBN 9784000248754
Cコード 0095
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 238頁
在庫 品切れ
「過ちは過去を忘れることから始まる.私は過去を,未来の中に埋め込んでおきたい.この本は,未来に対する仕込みとしての過去なのだ.」読むべき小説がある.待たれる言葉がある.居るべきところがある.持つべき心がある.――忘れないために.真に自分を取り戻すために.生きるために! 小説界のファンタジスタ,待望の初エッセイ集.

■編集部からのメッセージ

長編『夜は終わらない』が“現代の「千夜一夜物語」”と称され,作品発表の度に新たな変態を遂げる進化系ファンタジスタの作家,星野智幸さん.そのデビューから現在にいたる軌跡をたどる初めてのエッセイ集がついに刊行です!
 マイノリティと排除の問題に迫った『在日ヲロシヤ人の悲劇』,ネット社会と自他の境界を扱い,大江健三郎賞受賞,映画化もされた『俺俺』など,星野さんの作品はつねに,現実社会への果敢な斬り込みをおこない,読者の意識に対して,自分たちが今どのような社会に,時代に生きているのか,鋭く問いかけてきました.
 生活保護受給者バッシングやヘイトスピーチなど,現代の社会が放つ言葉の希薄さとそれが示す政治性に否を唱える.その星野さんの決然とした表明と挑戦の根底には,「私は言葉が機能していない事態には抵抗したい.そのためには小説が必要である.文学作品以外に,言葉の信用システムそのものを問い直すメディアはないからだ」(本書収録の「絶対純文学宣言」)との,作家人生当初からの決意があります.
 今回のエッセイ集では,デビュー以来書き溜めてきた約200篇から約50篇を精選.目次は年次ごと,エッセイ発表年月をさかのぼる順番としました.小説/言葉,社会時評,アジア文学などのほか,自身が留学していたメキシコやラテン文化,サッカー(星野さんと言えばもちろん!)や身辺雑記など,広いテーマを扱い,作家としてのみならず,人間・星野智幸に肉薄する,ファン垂涎のエッセイ集となりました.マジック・リアリズムの旗手がエッセイでリアリズムを斬る――小説とはまた異なる悦楽をどうぞお楽しみください!

2014
耳のメガネ

2013
宗教国家日本
黙って座ったまま
死者たちの迷宮メキシコに呑まれて
「戦争」と文学

2012
ウリ感覚――韓国滞在記
死にたがる社会のバッシング
震災を語る言葉を待つ
change of role

2011
言葉を書く仕事なのに,何と言っていいのかわからない
3・11を心に刻んで
デモなき社会の憂鬱

2010
新時代の愉楽チーム

2009
『俺俺』執筆日記
転向・犬猫篇
ストリートピープル

2008
バリアフリーは人を善良にする
死を憶(おも)え

2007
死んでも死んでも,死ねない世界
ファンタジーの街

2006
シュートを撃たない日本代表は,私たちの姿である
「リベラル」であることの欺瞞
差別はなかったか――WBCがまとう暗いナショナリズム
蘭嶼島遊覧

2005
娘たちよ,父を殺せ!
ジャカランダの樹の下には

2004
ブラインドとしてのオリンピック
メヒコの時間

2003
空っぽの家族を繰り返すな
怪しい奥さん
デモに行きたい
ソウルの空洞

2002
「私」と政治
戦争を必要とする私たち
遊戯の始まり
自我を突破せよ

2001
コモン・ウェルス
南國再見,南國
自分を解体する旅
魅惑的な異界

2000
新人作家の賞味期限

1999
絶対純文学宣言

1998
コミュニケーションをめぐる大言壮語
年代順の呪い

あとがき
星野智幸(ほしの ともゆき)
作家.1965年,アメリカ・ロサンゼルス市生まれ.88年,早稲田大学第一文学部卒業.新聞社に2年半勤務した後,91年から95年のあいだに2度にわたってメキシコへ留学.97年,『最後の吐息』で第34回文藝賞を受賞しデビュー.2000年,『目覚めよと人魚は歌う』で第13回三島由紀夫賞,03年,『ファンタジスタ』で第25回野間文芸新人賞,11年,『俺俺』で第5回大江健三郎賞を受賞.最新刊は『夜は終わらない』.他の著作に『水族』『無間道』『われら猫の子』『虹とクロエの物語』『在日ヲロシヤ人の悲劇』『アルカロイド・ラヴァーズ』『ロンリー・ハーツ・キラー』など.

書評情報

GINGER 2015年3月号
産経新聞 2015年1月24日
読売新聞(朝刊) 2015年1月11日
信濃毎日新聞(朝刊) 2015年1月11日
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