唐代の人は漢詩をどう詠んだか

中国音韻学への誘い

反切・四声など中国音韻学の基礎や古代音研究の歩みを述べ,杜牧「江南春」の古代音の復元を試みる.

唐代の人は漢詩をどう詠んだか
著者 大島 正二
ジャンル 書籍 > 単行本 > 文学・文学論
刊行日 2009/06/24
ISBN 9784000241458
Cコード 0098
体裁 四六 ・ 上製 ・ 222頁
在庫 品切れ
日本には漢詩の愛好者が多いが,漢詩が盛んであった中国唐代の人々は漢詩をどのような発音で詠んでいたのだろうか? 反切や四声,韻書・韻図など中国音韻学の基礎や古代音研究の歩みを述べながら,復元の方法をていねいに説き明かす.そして唐代・長安生まれの杜牧「江南春」を同時代の人々がどう詠んだかの復元を試みる.

■著者からのメッセージ

私たちにとって漢字はもはや“異文化”とは言えないでしょう.日常の言語生活ときっても切り離せない存在であることは誰もが認めるでしょう.本書は,漢字がつねに身にまとっているにもかかわらず,ともすれば見逃されてしまう〈音韻〉というものの正体や歴史,それを支えてきた文化背景などいろいろな方面から光をあて,その全体像を,他の領域をも視野に入れながら浮き彫りにしようというものです.日本語化した漢字音,それを生み育てた故郷でのさまざまな姿をうかがい知り,音韻への関心をよぶ縁ともなれば幸いです.

■編集部からのメッセージ

以前に岩波新書で刊行した,大島先生の『漢字と中国人』 『漢字伝来』を担当させていただきましたが,その頃から中国音韻学の入門書をぜひ書いてみたいとご相談を受けていました.
 音韻学という一般の読書人には手にとってもらいにくいテーマのものを入門書として刊行するにはどうしたらよいのか,ご相談を重ねました.お話する中で,古代の中国人が杜甫や李白の漢詩を実際どのような発音で詠んでいたのか,古代音(推定)を復元するところを結論とすれば一般の人にも興味をもってもらえるのではないか,そしてそこに至る過程を,講義のスタイルで中国音韻学への入門的解説とするという方針が決まりました.それからは一瀉千里に執筆していただいて,出来上がったのが本書です.
 古代音(推定)の復元をしていく過程はそう簡単なものではありませんが,知的興奮を誘うスリリングなものです.杜甫や李白など唐代の漢詩が実際どのような発音で詠まれていたのか知りたい方には興味津々の本だと思います.是非本屋さんで手にとってご覧ください.
 なお、この本に収録した漢詩の古代音(推定)と現代中国語音をユーチューブを通して聞ける予定ですお楽しみに。
話のまえに
第1話 漢詩と韻――音韻学への第一歩
  I はじめに
 II 漢詩と韻のはなし
 III 古代中国語の音韻
第2話 古代中国の音韻学――韻書と韻図をめぐって
  I 中国の言語研究
 II <反切>のはなし――中国で生まれた表音法
 III <四声>のはなし――高低アクセント
 IV 韻書のはなし――韻引き字典
 V 韻図――現代的な音節表
第3話 古代音の実相に迫る――清朝の古代音研究
  I 古代音の復元にむかって
 II 古音研究の夜明け
 III 古音研究の開花
 IV 中古音の探究
第4話 古代音を復元する――杜牧「江南春」を唐代音で読む
  I 近代的な古代音研究への旅立ち
 II <中古音>の復元の方法

あとがき
付録
李白「秋浦歌」/李商隠「楽遊原」/張継「楓橋夜泊」/王翰「涼州詞」/参「碩中作」/白居易「対酒」/柳宗元「江雪」/杜甫「春望」/李白「子夜呉歌」/孟浩然「春暁」
索引
大島 正二(おおしま しょうじ)
1933年東京に生まれる
1963年東京大学大学院修士課程修了
専攻-言語学・中国語学
現在-北海道大学名誉教授・二松學舎大学客員教授
著者-『唐代字音の研究』〈研究篇〉〈資料篇〉(汲古書院)
     『〈辞書〉の発明』(三省堂)
     『中国言語学史(増訂版)』(汲古書院)
     『漢字と中国人』(岩波書店)
     『漢字伝来』(岩波書店)ほか

書評情報

朝日新聞(朝刊) 2009年8月23日
北海道新聞(朝刊) 2009年8月23日
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