はじめて出会う 細胞の分子生物学

タンパク質の一生,生き生きとした細胞の活動を伝える入門書.先人たちの挑戦も追う.学び直しにも最適.

はじめて出会う 細胞の分子生物学
著者 伊藤 明夫
ジャンル 書籍 > 単行本 > 生物学
書籍 > 自然科学書
刊行日 2006/08/29
ISBN 9784000054072
Cコード 0345
体裁 A5 ・ 並製 ・ カバー ・ 206頁
在庫 品切れ
ヒトゲノムの塩基配列の解読終了後,細胞活動の担い手タンパク質に,注目が集中している.タンパク質は,細胞の中でどのように生まれ,働き,死を迎えるのか.先人たちは,どのようにしてこの問題に挑んできたのか.タンパク質の一生を追いながら,細胞の生き生きとした活動を知ることができる入門書.学び直しにも最適.

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 ワトソンとクリックによって,DNAの二重らせん構造が提唱されたてから50年後の2003年,ヒトの遺伝子の解読が終了しました.生命科学にとって記念すべき年です.しかし,すべての遺伝子が同定されたとしても,「いのち」のしくみがすべてわかるわけではありません.遺伝情報を背景に,細胞の空間的,時間的流れの中で,タンパク質がどのように生命活動に関わっているかを知ることが,ますます重要になってきています.
 こうしたことを背景に,細胞という社会の中で,タンパク質が生まれ,育ち,働き,そして死を迎える一生の流れを追うことを試みたのが本書です.主人公はタンパク質.タンパク質の一生を追うことにより,細胞内社会がどのような統一性をもって「いのち」の営みを行っているかを伝えようと考えました.細胞の理解においては,重要な事実がいつ,誰によって,どのような研究で解き明かされたのかを知ること,先達たちの巧みな実験と卓越した洞察に目を向けることも大切です.これも本書の大事な柱のひとつです.
 生命の科学になじみのない読者にも,抵抗がないような記述を心がけています.細胞という社会の中で繰り広げられているタンパク質の営みの見事さを感じてください.そして,細胞への興味を抱くきっかけにしていただけることでしょう.
I
細胞という社会

第1章 細胞は最小の共和国
第2章 細胞内を知る試み
第3章 細胞内コミュニティの構成員
II
細胞内社会におけるタンパク質の一生

第1章 タンパク質の誕生
第2章 タンパク質の立体構造形成と修飾
第3章 タンパク質の適材適所配置
第4章 すべての活動を担うタンパク質
第5章 タンパク質の死
III
細胞内の組織連携とタンパク質

第2章 細胞内の情報ネットワーク
第3章 タンパク質の細胞内移動と乗りもの
第4章 細胞内の交通網
第5章 細胞の死

コラム

原核細胞と真核細胞
細胞分画
ATP
ミトコンドリアの起源
人の個性
バイオインフォマティクス
BSEやアルツハイマー病とタンパク質の立体構造
免疫-自己と非自己の識別
ペルオキシソーム欠損遺伝病とタンパク質輸送
アミノ酸配列がタンパク質の一生を決める
伊藤 明夫(いとう あきお)
1963年大阪大学理学部化学科卒,68年大阪大学大学院理学研究科博士課程生物化学専攻修了.九州大学医学部助手,理学部助教授を経て89年より九州大学理学部教授.2003年より九州大学名誉教授,放送大学客員教授.福岡大学等で非常勤講師をつとめる.専門は生化学・細胞生化学(生体膜の構造,細胞小器官,とくにミトコンドリアおよび小胞体の形成機構.酵素,とくに酸化還元酵素・タンパク質分解酵素の反応機構).
著書に『自分を知る いのちの科学』(培風館)がある.

書評情報

ジャパンフードサイエンス 2006年10月号
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