「政治的なるもの」の行方

「ポストモダン」は政治学に何をもたらしたのか.「政治的なるもの」をめぐる理論的考察の成果を集成.

「政治的なるもの」の行方
著者 川崎 修
ジャンル 書籍 > 単行本 > 政治
刊行日 2010/07/27
ISBN 9784000236959
Cコード 3030
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 262頁
在庫 品切れ
「ポストモダン」は政治学に何をもたらしたのか.政治の輪郭が揺らぎ,権力,政治的主体,民主主義/全体主義/自由主義等の政治的イデオロギーが変容していくなかで,政治学の問いのあり方も変化を迫られている.「政治的なるもの」の変容の軌跡を追って,著者が積み重ねてきた理論的考察の成果を集成する.

■著者からのメッセージ

 『「政治的なるもの」の行方』は,私がこれまでに発表した論考のうち,ハンナ・アレント研究以外のものを集めて収録した論文集です.
 本書は三つのテーマを中心に構成されています.I 「「政治的なるもの」の行方」では,1980年代後半以降に顕在化してきた政治学・政治思想における「政治的なるもの」の観念の拡張と変容,およびそれと不可分の関係にある権力論の新しい動向が中心的なテーマです.つまり「ポストモダン」的な社会状況と思想状況を背景に現れてきた,政治と非政治の境界の動揺や曖昧化と,そのことが持つ意義と問題性の検討がなされています.
 II「イデオロギーの行方」では,20世紀の政治を規定してきたイデオロギーや政治的理念であるリベラル・デモクラシーとリベラリズムについて,およびその両者の否定として,いわば裏側から20世紀の政治の思想と現実を象徴してきた全体主義について,それらの歴史的文脈と理論的な多様性を考察した論考を収録しています.
 III「自我/主体性の行方」は,丸山眞男における,政治秩序を担う自我や主体の問題を集中的に論じた論考を中心に,関連する論考と合わせて構成しています.
 本書が,20世紀末から21世紀初頭にかけての「政治的なるもの」の理解の「行方」をふりかえる上で,そしてこれからの「政治」の「行方」を展望する上で,多少なりとも読者の皆さんのお役に立てば幸いです.

川崎 修

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精緻な思考のプリズムが映し出す 「政治的なるもの」の変容の歴史
まえがき

I 「政治的なるもの」の行方
1 <政治>と「政治」
2 「政治的なるもの」の変容
3 「現代思想」と政治学
4 権力イメージの変容と政治理論の課題
5 ポストモダンの権力と「政治的なるもの」の行方
   ――ウォーリン『政治とヴィジョン』増補版を読む
6 政治哲学

II イデオロギーの行方
  7 「自由民主主義」――理念と体制の間
8 全体主義
9 リベラリズムの多義性

III 自我/主体性の行方
  10 「忠誠と反逆」を読む
11 丸山眞男における自我の問題の一断面
12 「魅力」と「危うさ」と――政治理論から見た和辻倫理学
13 「主体性」のあとで――西谷修『不死のワンダーランド』を読む

  初出一覧
  人名索引
川崎 修(かわさき おさむ)
1958年生まれ.東京大学法学部卒業.現在,立教大学法学部教授.
専攻は政治学・政治学史.
著作に,『アレント――公共性の復権』(講談社,1998年),『現代政治理論』(共編,有斐閣,2006年),『岩波 社会思想事典』(共編,岩波書店,2008年),『ハンナ・アレントの政治理論 アレント論集 I 』(岩波書店,2010年),『ハンナ・アレントと現代思想 アレント論集II』(岩波書店,2010年)などがある.

書評情報

図書新聞 2011年11月5日号
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