雑誌『都市問題』にみる都市問題
1925-1945
東京市政調査会が発行する雑誌『都市問題』は都市問題・自治体問題をどのように捉え,論じてきたのか.
東京市長・後藤新平(1857-1929)がニューヨーク市政調査会をモデルとして創設した東京市政調査会.ここが1925年以来発行する雑誌『都市問題』は,都市問題・自治体問題をどのように捉え,論じてきたのか.同時代をいかに認識し,改革の将来像を描いたのか.通巻百巻を機に進められた共同研究の成果.
■編者からのメッセージ
『都市問題』は2009年1月に通巻100巻を迎えた.もっとも,戦前期においては半年をもって巻号をあらためているから,現代の雑誌に一般的な1年をもって1巻ではない.そしてまた,財団法人東京市政調査会は,来る2012年2月に創立90周年を迎える.
この機をとらえて東京市政調査会は,外部の専門家や研究員による「雑誌『都市問題』にみる都市問題」なる研究プロジェクトを設けた.第一次世界大戦後のまさに激動する政治・経済・社会状況のなかに誕生し歴史を積み上げてきた『都市問題』が,その時々の都市問題(市政問題)をいかに捉えてきたのか,そこに寄せられた論稿は,時代をいかに認識し改革の将来像を描いていたのかを明らかにすることが,研究プロジェクトの目的とされた.換言すれば,雑誌『都市問題』をレンズとして,自治体・地域社会から日本近現代の都市問題史を構成しようとするものである.(中略)
時代は遥かに下って21世紀も10年代となった.1990年代初頭より地方分権改革が日本政治のアジェンダとなり,機関委任事務制度の全廃をはじめとした制度改革が進展している.市民や自治体はこれに応え創造力を高めていかなくてはなるまい.日本近代が当面した「都市問題」への対応を振り返ってみることは,こうした現代の課題にとって有用性を持っていよう.この意味で,本書が地方分権改革への取り組みに参考とされるならば,幸いである.
――本書「はじめに」より
■編者からのメッセージ
『都市問題』は2009年1月に通巻100巻を迎えた.もっとも,戦前期においては半年をもって巻号をあらためているから,現代の雑誌に一般的な1年をもって1巻ではない.そしてまた,財団法人東京市政調査会は,来る2012年2月に創立90周年を迎える.
この機をとらえて東京市政調査会は,外部の専門家や研究員による「雑誌『都市問題』にみる都市問題」なる研究プロジェクトを設けた.第一次世界大戦後のまさに激動する政治・経済・社会状況のなかに誕生し歴史を積み上げてきた『都市問題』が,その時々の都市問題(市政問題)をいかに捉えてきたのか,そこに寄せられた論稿は,時代をいかに認識し改革の将来像を描いていたのかを明らかにすることが,研究プロジェクトの目的とされた.換言すれば,雑誌『都市問題』をレンズとして,自治体・地域社会から日本近現代の都市問題史を構成しようとするものである.(中略)
時代は遥かに下って21世紀も10年代となった.1990年代初頭より地方分権改革が日本政治のアジェンダとなり,機関委任事務制度の全廃をはじめとした制度改革が進展している.市民や自治体はこれに応え創造力を高めていかなくてはなるまい.日本近代が当面した「都市問題」への対応を振り返ってみることは,こうした現代の課題にとって有用性を持っていよう.この意味で,本書が地方分権改革への取り組みに参考とされるならば,幸いである.
――本書「はじめに」より
凡例
はじめに 新藤宗幸
I 『都市問題』にみる都市問題・概観 松本克夫
1 『都市問題』が目指したもの
2 『都市問題』を担った人物群像
3 編集の特徴
4 主題と論調の変遷
II 地方自治と地方制度改革 新藤宗幸
1 『都市問題』における論調の変遷
2 東京市政の「腐敗」と市政浄化
3 普通選挙と市政
4 翼賛政治体制の進行
5 おわりに
III 東京市の人事行政――その実態と改革論 川手 摂
1 市制,市制特例と人事行政
2 『都市問題』以前の東京市の人事行政
3 『都市問題』創刊後の東京市の人事行政
4 1930年代中盤以降の東京市の人事行政と『都市問題』『市政研究』
5 総括
IV 地方財政――両税委譲論の隆盛と挫折 高端正幸
1 日本地方財政にとっての1920年代・30年代
2 1920年代における地方財政問題
3 両税委譲問題の展開
4 『都市問題』にみる両税委譲論
5 1930年代初期――情勢の変化と財政調整制度案の登場
6 独立税主義への税収分与の加味(1931~33年の『都市問題』)
7 両税委譲論・財政調整制度論の戦時税制への解消
8 おわりに
V 公益事業をめぐる相克と公益企業法案 住弘久
1 はじめに
2 公益事業をめぐる諸問題とその相克
3 公益企業法案とそのインパクト
4 結びにかえて
VI 都市計画事業――財源,土地区画整理,「不燃焼都市」 田中暁子
1 『都市問題』で取り上げられた都市計画に係るテーマ
2 都市計画事業の財源問題
3 土地区画整理
4 「不燃焼都市」建設
5 おわりに
VII 公衆衛生――母子保健,塵芥屎尿処理,結核 五石敬路
1 公衆衛生をめぐる議論とその背景
2 『都市問題』の特徴
3 母子保健――乳幼児死亡率の低減に向けて
4 塵芥屎尿処理――都市化の転換点に生じた矛盾
5 結核――絶対的に不足する施設数
6 公衆衛生行政について――保健所の設置に向けて
VIII 戦時体制下の市民生活と町内会 住弘久
1 はじめに
2 町内会に対する3つの問題関心
3 町内会整備をめぐる問題点と「町内会に関する研究要綱」
4 「町内会に関する研究要綱」以後の動き
5 結びにかえて
IX 都市経営論――池田宏と関一を中心に 青山彰久
1 『都市問題』の都市経営論
2 池田宏と関一,とその時代
3 都市の機能を計画する――都市計画の誕生と「八億円計画」
4 都市の自立を求めて――都市制度の改革
5 賢人主義――都市の政治と住民
6 何を学ぶのか
おわりに 松本克夫
人名索引
はじめに 新藤宗幸
I 『都市問題』にみる都市問題・概観 松本克夫
1 『都市問題』が目指したもの
2 『都市問題』を担った人物群像
3 編集の特徴
4 主題と論調の変遷
II 地方自治と地方制度改革 新藤宗幸
1 『都市問題』における論調の変遷
2 東京市政の「腐敗」と市政浄化
3 普通選挙と市政
4 翼賛政治体制の進行
5 おわりに
III 東京市の人事行政――その実態と改革論 川手 摂
1 市制,市制特例と人事行政
2 『都市問題』以前の東京市の人事行政
3 『都市問題』創刊後の東京市の人事行政
4 1930年代中盤以降の東京市の人事行政と『都市問題』『市政研究』
5 総括
IV 地方財政――両税委譲論の隆盛と挫折 高端正幸
1 日本地方財政にとっての1920年代・30年代
2 1920年代における地方財政問題
3 両税委譲問題の展開
4 『都市問題』にみる両税委譲論
5 1930年代初期――情勢の変化と財政調整制度案の登場
6 独立税主義への税収分与の加味(1931~33年の『都市問題』)
7 両税委譲論・財政調整制度論の戦時税制への解消
8 おわりに
V 公益事業をめぐる相克と公益企業法案 住弘久
1 はじめに
2 公益事業をめぐる諸問題とその相克
3 公益企業法案とそのインパクト
4 結びにかえて
VI 都市計画事業――財源,土地区画整理,「不燃焼都市」 田中暁子
1 『都市問題』で取り上げられた都市計画に係るテーマ
2 都市計画事業の財源問題
3 土地区画整理
4 「不燃焼都市」建設
5 おわりに
VII 公衆衛生――母子保健,塵芥屎尿処理,結核 五石敬路
1 公衆衛生をめぐる議論とその背景
2 『都市問題』の特徴
3 母子保健――乳幼児死亡率の低減に向けて
4 塵芥屎尿処理――都市化の転換点に生じた矛盾
5 結核――絶対的に不足する施設数
6 公衆衛生行政について――保健所の設置に向けて
VIII 戦時体制下の市民生活と町内会 住弘久
1 はじめに
2 町内会に対する3つの問題関心
3 町内会整備をめぐる問題点と「町内会に関する研究要綱」
4 「町内会に関する研究要綱」以後の動き
5 結びにかえて
IX 都市経営論――池田宏と関一を中心に 青山彰久
1 『都市問題』の都市経営論
2 池田宏と関一,とその時代
3 都市の機能を計画する――都市計画の誕生と「八億円計画」
4 都市の自立を求めて――都市制度の改革
5 賢人主義――都市の政治と住民
6 何を学ぶのか
おわりに 松本克夫
人名索引
新藤宗幸(しんどう むねゆき)1946年生まれ.千葉大学法経学部教授.
松本克夫(まつもと よしお)1946年生まれ.ジャーナリスト.
川手 摂(かわて しょう)1979年生まれ.東京市政調査会研究員.
高端正幸(たかはし まさゆき)1974年生まれ.新潟県立大学国際地域学部准教授.
魚住弘久(うおずみ ひろひさ)1969年生まれ.千葉大学法経学部准教授.
田中暁子(たなか あきこ)1978年生まれ.東京市政調査会研究員.
五石敬路(ごいし のりみち)1968年生まれ.東京市政調査会主任研究員.
青山彰久(あおやま あきひさ)1956年生まれ.読売新聞東京本社編集委員.
松本克夫(まつもと よしお)1946年生まれ.ジャーナリスト.
川手 摂(かわて しょう)1979年生まれ.東京市政調査会研究員.
高端正幸(たかはし まさゆき)1974年生まれ.新潟県立大学国際地域学部准教授.
魚住弘久(うおずみ ひろひさ)1969年生まれ.千葉大学法経学部准教授.
田中暁子(たなか あきこ)1978年生まれ.東京市政調査会研究員.
五石敬路(ごいし のりみち)1968年生まれ.東京市政調査会主任研究員.
青山彰久(あおやま あきひさ)1956年生まれ.読売新聞東京本社編集委員.
書評情報
地方自治職員研修 2011年1月号