原理の問題

法思想・政治哲学に大きな影響を及ぼしているドゥオーキン法理論のエッセンスを示した重要著作を訳出.

原理の問題
著者 ロナルド・ドゥオーキン , 森村 進 , 鳥澤 円
ジャンル 書籍 > 単行本 > 法律
刊行日 2012/01/27
ISBN 9784000227865
Cコード 3032
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 486頁
定価 7,260円
在庫 在庫あり
英米法思想・政治哲学界に絶大な影響を及ぼしているドゥオーキンの法理論のエッセンスを示す,「現代リベラリズムの古典」ともいうべき重要著作を訳出.法の解釈とはどのような営みであるか,法と政治とはどのような関係にあるか,リベラリズムの基礎にあるものは何か――.これらの問いをめぐって,独創的な議論が力強く展開される.

■著者からのメッセージ

私は今や本書が日本語訳で読めるようになったことを喜んでいます.この機会にいずれかの章を書き直すか拡張するかした方がよいかどうかを知るために,本書を読み返してみました.そして自分でも驚いたことに,私が論じた政治理論・法理論の重要問題が今日でも新鮮であることを発見しました.それらの問題は熱心な学問的検討を受け続けています.そして一層驚いたことに,私が検討した実践的な論争――法や,経済的正義や,言論の自由や,戦争や,真正な人種的統合の可能性に関するもの――は,我々の時代のもっとも激しい,人々を分断する政治上の争点であることをやめていません.これらの学問的問題と政治的争点は,難問であると同時に,頑強な生命力を持っているのです.
ロナルド・ドゥオーキン


■編集部からのメッセージ


 法哲学・政治思想界に大きな影響を及ぼし,いまや,その理論をめぐる当否が論争点の一つともなっているロナルド・ドゥオーキン.彼の重要な著作の一つであり,長らく邦訳が待たれていた『原理の問題』(原題:A Matter of Principle)を刊行します.
 本書の原書は,1980年代に刊行されました.70年代後半から80年代前半にかけて執筆された論考が中心で,当初,内容がやや古くなってはいないか,気になっていました.
 ところが,訳稿を読んでみて驚きました.あたかも,現在の問題を論じているように感じられるものばかりだったからです.たとえば第4章の「市民的不服従と反核抗議」は80年代にヨーロッパで広がった反核運動の是非について論じたものですが,現在の日本で盛り上がっている脱原発運動の本質について考えるうえでも,示唆に富むものでした.また,第8章の「リベラリズム」や第9章の「リベラル派はなぜ平等を気にかけるべきなのか」は,レーガン政権・サッチャー内閣が誕生し,ネオ・リベラリズムを標榜する政策が打ち出されようとしている時代を背景に,「真のリベラリズムとは何か」を論じたものですが,格差が深刻化し,ウォール街のデモが世界に衝撃を与えている現在の状況の中で読むと,このような事態を予見していたかのようで,現在を生きる多くの人に読まれるべき論考だと強く感じました.そうした折に,著者から日本の読者宛てのメッセージ(上掲)が届き,ドゥオーキン自身も,やはり,本書の内容が今もなお新鮮であることを強調していることを知りました.現代リベラリズムについて考える上で必読の書です.
編集部・伊藤耕太郎
日本の読者へのメッセージ
凡例
序論

第一部 法の政治的基礎
第一章 政治的な判事と法の支配
第二章 原理のフォーラム
第三章 原理,政策,手続
第四章 市民的不服従と反核抗議
第二部 解釈としての法
第五章 ハード・ケースには本当に正しい答がないのか?
第六章 法はどのようにして文学に似ているか
第七章 解釈と客観性について
第三部 リベラリズムと正義
第八章 リベラリズム
第九章 リベラル派はなぜ平等を気にかけるべきなのか
第一○章 リベラルな国家は芸術を支援できるか?
第四部 法についての経済学的検討
第一一章 富は価値か?
第一二章 なぜ効率か?
第五部 検閲と自由なプレス
第一三章 我々はポルノグラフィーへの権利を持つか?

訳者あとがき

判例索引
人名索引
事項索引
ロナルド・ドゥオーキン Ronald Dworkin
1931年生まれ.マサチューセッツ州ウースター出身のアメリカの法哲学者.ハーヴァード・ロー・スクールを卒業後,アメリカの伝説的名判事,ラーニッド・ハンドのもとでロー・クラークとして働く.ニューヨークの法律事務所で弁護士として活躍した後,1962年にイェール・ロー・スクール教授に,1969年にH.L.A.ハートの後任としてオックスフォード大学法理学講座を担当する.現在,ニューヨーク大学法学部教授.
主な著書に,『権利論(Taking Rights Seriously)』(1977),『法の帝国(Law's Empire)』(1986),『ライフズ・ドミニオン(Life's Dominion)』 (1986),『自由の法(Freedom's Law)』(1996年),『平等とは何か(Sovereign Virtue)』 (2000),『裁判の正義(Justice in Robes)』 (2006)など.
森村 進(もりむら すすむ)
1955年生まれ.
専攻――法哲学
現在,一橋大学法学研究科教授.
著書――『財産権の理論』(弘文堂),『自由はどこまで可能か――リバタリアニズム入門』(講談社現代新書)など.
訳書――H・L・A・ハート『権利・功利・自由』(木鐸社),ジョナサン・ウルフ『ノージック――所有・正義・最小国家』,デレク・パーフィット『理由と人格――非人格性の倫理へ』,マリー・ロスバード『自由の倫理学――リバタリアニズムの理論体系』(以上,勁草書房)など多数.
鳥澤 円(とりさわ まどか)
1972年生まれ.
専攻――法哲学
現在,関東学院大学法学部准教授.
著書・論文――『岩波講座 哲学10 社会/公共性の哲学』(共著,岩波書店),『リバタリアニズム読本』(共著,勁草書房),「社会規範に従う<自由>?:自生的秩序の再検討」『法哲学年報2004,2005年』など.
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