債権総論

第三版

基礎から最先端まで幅広くカバーし,現代債権法の到達点を描いて好評を博した本格的体系書,待望の第三版!

債権総論
著者 中田 裕康
ジャンル 書籍 > 単行本 > 法律
刊行日 2013/08/27
ISBN 9784000230520
Cコード 3032
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 650頁
在庫 品切れ
基礎的知識から先端的な問題まで幅広くカバーし,現代債権法の到達点を描いて好評を博した本格的体系書,待望の第三版.新版刊行以後の法改正や判例の動き,研究成果,民法改正作業(中間試案)などを視野に入れながら,本文の叙述を全面的に見直し,コラムや解説を追加して,さらに内容を充実させた.


■著者からのメッセージ
 債権総論は,むずかしいといわれる.たしかに,「債権」という権利について,その内容や効力などを検討するという抽象的な議論は,日常生活とは距離があり,もともと,わかりにくい.学説のむずかしさもある.かつては,我妻栄『新訂 債権総論』に代表される通説があったが,その後の学説は,通説を批判し,その前提を問い直すことによって発展した.それは進展ではあったが,ともすれば,議論が多層的かつ精緻な,つまり複雑なものとなり,また,ときとして,その内容が独自の概念に凝縮されることもある.その結果,その成果が研究者の狭い社会の中でしか共有されていない状況に陥っているのかもしれない.さらに,多数の判例と特別法の出現,高度な実務の発達,国際的な動向の影響など,情報量が著しく増加し,その吸収がたいへんだということもある.このような事態のもとで,学生のなかには,さらには法曹界においてさえ,近年の学説の展開に関心を持たない人々が見られなくもない.
 しかし,他方,裁判の場はもとより,先端的な取引実務の場においても,新たな問題の解決や新しいシステムの構築にあたって,債権総論にかかわる理論的検討が求められることは,決して稀ではない.そして,なによりも,民法(債権法)の改正が予定されている現在,それに正面から取り組み,よりよい民法の構築に向けて力を出し合うためには,この領域における実定法(制定法・判例)と学説の現況を把握することが必要となる.そうだとすれば,むずかしいといわれる債権総論を少しでも平明に伝えることは,大学でこの分野を研究する機会を与えられている者の責務であろう.優れた体系書・教科書が多くあるなか,筆者がその驥尾に付したいと考えたのは,このような気持ちからである.
 本書は,現在の日本における債権総論の水準を描こうとするものである.初めて学ぶ人,ひととおりの勉強をした人,さらに,既に実務や研究に携わっている人のそれぞれにむけてのメッセージが込められている.初学者は,本文と◇のコラムを読むことにより,基本的な理解を得ることができるだろう.より進んだレベルにある人々は,本文と◆のコラム,あるいは,後者のみを読むことにより,現在の問題状況を把握することができるだろう.非力ではあるが,それが可能になるように務めた.
 筆者としては,本書が読者の役に立つものとなることを希望している.そして,本書を読了した後,債権総論は,むずかしいけれども,おもしろいものだ,という印象を抱くようになられた読者が,少数ではあっても,いてくださることを,実は期待してもいる.
――「初版はしがき」より
はしがき
序章 債権総論とは何か
第1編 債権の発生
第1章 債権の概念
第2章 債権の発生原因と要件
第3章 債権の種類
第2編 債権の効力
第4章 「債権の効力」とは何か
第5章 当事者間の効力
第6章 債務者の責任財産の保全
第7章 第三者による債権侵害
第3編 債権の消滅
第8章 債権の消滅
第4編 当事者の複数と変動
第9章 多数当事者の債権関係
第10章 債権債務の移転
結章 債権総論の展望
中田裕康(なかた ひろやす)
1951年生まれ.1975年東京大学法学部卒業.1977年弁護士登録(1990年まで).1989年東京大学大学院博士課程修了(法学博士).1990年千葉大学助教授,1993年同教授,1995年一橋大学教授を経て,2008年東京大学大学院法学政治学研究科・法学部教授.専攻は民法.主著に『継続的売買の解消』(有斐閣,1994年),『継続的取引の研究』(同,2000年).
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