現代パキスタン分析

民族・国民・国家

南アジアで重要性を増したパキスタンについて,地道なフィールドワークとインターディシプリナリーな分析で,実像を明らかする.

現代パキスタン分析
著者 黒崎 卓 , 子島 進 , 山根 聡
ジャンル 書籍 > 単行本 > 経済
刊行日 2004/01/23
ISBN 9784000227377
Cコード 3033
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 308頁
在庫 品切れ
1998年の核実験,カシミールをめぐるインドとの確執,99年のクーデターと軍事政権樹立,2001年の同時テロ事件とその後のアフガニスタン政権交代――南アジアにおいてにわかに重要性を増したパキスタンについて,長年にわたる地道なフィールドワークとインターディシプリナリーな分析により,実像を明らかにする.

■編者からのメッセージ

 1998年の核実験,2001年9月のアメリカ合衆国における同時テロ事件とその後のアフガニスタンへの空爆などにより,パキスタンはますます国際的に重要な地域となっています.しかし,日本語で書かれたパキスタンに関する研究書は非常に限られています.そこで,パキスタンの地域研究に携わってきたさまざまな分野の若手研究者が結集して生まれたのが本書です.
 パキスタンは,実に不思議な魅力をもった国です.外からマスメディアの報道に接していると,いつ崩壊してもおかしくない危険な「国家」のように思えてくるかもしれません.ところがパキスタンを実際に訪れてみると,さまざまな彩りを帯びた生活が各地で実に豊かに展開されており,いつしかそれに魅了されてしまったという日本人もたくさんいます.本書は,このようなギャップを生み出しているものとして「民族・地域の自律性」に着目します.パキスタン「国民」を構成するさまざまな民族・宗教集団の視点を導入し,時には相矛盾する複数のパキスタン像を提出することによって,これまで十分に論じられてこなかったこの国の豊かさや潜在的可能性を検討することが,本書の中心テーマです.パキスタンはまた,植民地体制では存在しなかった新たな国境を,イスラーム教徒が多数を占めることを理由に設けて分離独立した世界史上希有な例でもあります.
 つまり本書は,イスラームと国家や民族の関係という現代的かつ地球的課題について考える重要な視点を提供してもいるのです.
まえがき
 序 章 パキスタンの民族と国家  子島 進・山根 聡

第I部 国民の成立
第1章 パキスタン統合の原理としてのイスラーム  井上あえか 子島 進
第2章 バローチ民族の自由をかけた闘いとパキスタン支配  村山和之
第3章 地域語のエネルギーに見る国民統合と地域・民族運動  萬宮健策
第4章 国語ウルドゥーとその文学の評価を巡る地域差  山根 聡

第II部 地域・民族の深層へ
第5章 パンジャービー民族の自文化表象とイスラーム――聖遺物の展示をめぐって  小牧幸代
第6章 宗教マイノリティーから見たパキスタン――パンジャーブにおけるクリスチャンの事例  森川真樹
第7章 北西辺境州農村経済の特色と国家・階層  黒崎 卓

第III部 地域・民族を超えて
第8章 ムスリム資本家とパキスタン――ネットワークの歴史的編成過程と地域・領域への対処  大石高志
第9章 社会開発から探る民族の可能性  子島 進

終 章 国民の将来,民族の可能性  黒崎 卓

索 引  
黒崎 卓(くろさき・たかし) 一橋大学経済研究所助教授
子島 進(ねじま・すすむ) 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究 研究科助手
山根 聡(やまね・そう) 大阪外国語大学外国語学部地域文化学科助教授
井上あえか(いのうえ・あえか) 東京大学東洋文化研究所非常勤講師
大石高志(おおいし・たかし) 神戸市外国語大学外国語学部国際関係学科助教授
小牧幸代(こまき・さちよ) 京都大学人文科学研究所助手
萬宮健策(まみや・けんさく) 財団法人世界政経調査会研究員
村山和之(むらやま・かずゆき) 和光大学表現学部非常勤講師
森川真樹(もりかわ・まき) 東京大学大学院工学系研究科博士課程

書評情報

経済セミナー 2004年5月号
毎日新聞(朝刊) 2004年3月14日
MK新聞 2004年3月1日号
ページトップへ戻る